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第27話 叫び声が響く領主の館……。

 直接的な命の危険に追い込まれていたその反動から――などというわけでもないだろうが。

 そろそろ辛抱たまらんことになってきているこの頃。

 いろいろな技術をジーナさんに教え込み、二人向かい合ってのプレイ――うん、文面のいかがわしさがえらいことになってるな。


 まぁつまり……あれだ。

 PCで黙々とやるゲームも好きだけど、将棋とかチェスみたいな『対人戦』も大好物な俺。

 木工技術をフル活用して駒を彫り彫り。

 ジーナさんに動かし方をレクチャー、何度か対戦を繰り返してるんだけど。


「パパ、意地悪をするのはダメ!

 ソレをそんなふうに動かすのは……ああっ、そこはジーナの弱いところ……」


 ジーナさん、地頭は良いんだけどね?

 性格が真っ直ぐというか、一本気というか、猪突猛進というか。

 読み合いとか騙し合いみたいなのが出来ない素直な子なので、まったく相手にならないという……。


 てなわけで。


権謀術数けんぼうじゅっすう詐謀偽計さぼうぎけい奸智術策かんちじゅっさく四捨五入!

 俺の中で胡散臭くて腹黒いと評判のルミーナ様にお相手をお願いしたく、雪の中をこうしてまかり越しました!

 あっ、ついでに! お肉を持ってきたので食材の交換もお願いしたいです!」


「久しぶりに顔を出しに来たと思ったら謂れのない罵倒を始めたのです!?

 相変わらずの傍若無人ぶりに逆に安心したのです!

 というか、ミーナのような素直な美少女を捕まえてその言い草はどういうことなのです!!」


「ハハッ、またまたご冗談を」


「今の話に冗談成分など皆無なのです!!

 というか、食べ物の話はわかりましたが、『お相手』とは一体……?

 はっ!? ……あ、あなたまさか!?

 いくら、いくらミーナがこのように愛らしいからといって」


「寝言は寝て言え?」


「アデレード、とりあえず二三発殴っておくのです!!」


 ……妙にテンションの高い幼女様はさておき。


 ここは山の中のジーナ家ではなくンシュ村にある領主様のお屋敷。


「そもそもなのです!!

 メイドにはあんな立派な外套を贈っておきながら、どうしてミーナのお土産はちっちゃい手袋だけなのです!?

 その娘が着ているような一式を、今すぐミーナにもよこすのです!!」


「フッ、ちびっこにこのコートはまだ早い」


「アデレード、そっちの娘も一発殴るのです!!」


 頬を膨らませる幼女様と、それをニヤニヤしながらからかうジーナさん。

 思わず頬の緩みそうになる可愛いらしい光景に部屋の中のみんながホッコリする。


「どうもリアンナさん、この間ぶりです。

 あれから風邪など引いてはいませんか?」


「はい、ヒカルさんにいただいた外套のおかげで暖かく過ごせております」


「今日はあなたのサイズに合わせて作ったロングブーツを持ってきました。

 一度履いてみて、きつくないか確かめてもらえますか?」


「まぁ……! それは嬉しいですね。ありがとうございます」


「ちょっと待つのです!!

 どうしてあなたたちは二人で、そんな甘い空気を出しているのです!!

 というか、どうしてあなたがリアンナの足のサイズなんて知っているのです!?

 あと、ミーナにもそのブーツをよこすのです!!」


「フッ、ちびっこにはブーツもまだ早い」


「ムキーーーーーーッ!!!」


 ジーナさん、俺も人のことは言えないけど……さすがに煽りすぎだからね?


「と、このままでは話が進みませんね。

 リアンナさん、こちら、今日お屋敷に持ち込んだモノの一覧となるのですが」


「これはご丁寧に。

 メープルシロップは前にもいただいたあの蜜ですね。

 それからウサギとオオカミのお肉……お屋敷にお邪魔した時に出していただいたものでしょうか。とても美味しゅうございました。

 ええと、こちらのチェスとショウギ、あとリバーシというのはいったい?」


「いえ、ちょっと本格的に待ちなさい。

 えっ? 話が進まなかったのはあなたとその娘のせいでは……?

 なのにどうして私に責任を負わせたうえでのけ者にしたあげく、真面目な顔でメイドと話を進めるのですか?

 リアンナ、私はお肉についての報告などまったく聞いていないのですが……おいしかったとはどういうことですか?

 あと、チェスとショウギとリバーシについては詳しく……の前に、お昼ごはんにお肉料理を所望するのです!!」


「フッ、ちびっこといっしょにジーナもお肉をしょうもう? する!!」


「『しょうもう』じゃなくて『しょもう』ね?」


 ジーナさんはダイエットでもするつもりなのかな?


* * *


 てことで好き勝手の出来る(※リアンナさんに許可を頂いてます)お貴族様の台所。


「今回提供いただいた食材はこちら。

 牛乳、そしてタマネギと人参にジャガイモ!

 リアンナさん! そこに鶏肉とくればこれから作るお料理は何!?」


「はい!? えっ、ええと……煮込み……か何かでしょうか?」


「正解です! 今回作るのはみんな大好き!! くりぃむれ……クリームシチューです!!」


「あの、一文字も合っておりませんが……。

 といいますか、クリームシチューとはいったいどのようなお料理なのでしょうか?」


「そうですね! 一言でいえば……牛乳味のごった煮です!」


 なぜか微妙な表情になるリアンナさん。


「それではまず、牛乳からバターを作り――」


 ……それほど長くはならないが割愛。


* * *


「信じられないのです……。

 そこの娘、ミーナが二杯目をおかわりする前に五杯も食べやがったのです……。

 お鍋がからっぽなのです……」


 久しぶりに食べたクリームシチューはとても懐かしく、そしてちょっとだけ味気なく。

 クッ、とうもろこしさえあれば……いや、グレイおばあさんのコーンクリームシチューのルゥさえあればっ!!


「ばんごはんも同じものを所望するのです!」


「いや、夕方までには帰りますので無理ですけど」


「ふふっ、ならおうちでいっぱい作って?」


「いや、うちには牛乳が無いから無理だけど」


 二人して顎が外れたような顔をするルミーナ嬢とジーナさんだった。


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