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第13話 ゲーマーのおっさん、ここが日本では無いと思い知る。

 『幼女様との取引(?)』もどうにか無事に終わり。

 雪車ソリにそれなりの量の食材を積み込み、ホクホク顔で家路をたどる俺とジーナさん。


「小麦粉以外にもイモとタマネギ、キャベツにネギ。

 調味料だって、醤油っぽいのと塩、それに生姜とニンニクまで分けてもらえるとは!」


「これでいろんな料理ができるね!」


 作れるのはあくまで『一人暮らしの独身男が知ってる範囲のメニュー』だけで、見たこともないような料理は無理なんだけどね?


「てかイモとタマネギがあったのは大きい。

 あとは牛乳さえ手に入れば、『クリームシチュー(肉なし)』も作れるのに」


「なにそれ!? 食べたことないけどおいしそう!」


 ふふっ、今度またご領主様の屋敷にお邪魔したときにでも作ってみるか。

 図々しい? でも『お貴族様の懐は探るためにある』って、昔の偉い誰かが言ってた気がするし。

 ……もちろん相手が笑って許してくれる範囲でだけどな!


「……というか、ジーナさん」


「ん? どうしたのパパ?」


「村を出たときから、ずっと気になってたんだけどさ」


 俺たちが歩いているのは、それなりに雪の積もった道なき道。

 こんな季節に、わざわざ村の外れまで足を運ぶ物好きが大勢いるとも考えにくく。

 実際、俺がジーナさんのところで世話になるようになってから、周囲で他人の気配を感じたことなんて一度もなかった。


 それなのに……。


「ほら、雪にうっすら残ってるこれ。

 俺たちが来るときにつけた雪車の跡だよね?」


「うん! 引っ張った跡がずーっと二本続いてる!」


「で、問題はその隣。俺たち二人の足跡と……もう一組。

 反対方向に向かって歩いてる足跡があるだろう?」


「うん……ジーナとパパのと……あれ?

 ほんとだ、向こうにむかってるのがある……」


 そう。俺たちが村に行っていたあいだに、誰かが村から山の方……ジーナさんの家の方向にむかう足跡が残されているのだ。


 もちろん? たまたま通りがかっただけという可能性も……限りなくゼロに近いがゼロではない。


「でも正直、嫌な予感しかしないんだよなぁ……」


 念のためマップを開いて周囲に人影がないか確認する……が、それらしい『ポーン』は表示されず。

 もっとも、もしもここで襲われたとしたら俺にもジーナさんにもろくな防衛手段がない……いや、彼女は親父さんの形見でもあるゴツいナタをその腰に差してるんだけどさ。


「……パパが怖い顔になってる……」


 ……先程まで『上手く行った』などと浮かれ、歩いていた背中に悪寒が走る。

 『冷水を浴びせられる』とはこういう感じなのだろうか?

 口をつぐんだまま足を速め、険しい表情をしたまま雪車を引く。


 そして――ようやく帰り着いた我が家で俺たちが目にしたのは、家の周囲に残された何者かの痕跡だった。


 玄関の前だけではない。

 ぐるりと一周、念入りに家を確認したような足跡。

 鍵をかけていたおかげで新居のほうは無事だったが、もともとジーナさんが住んでいた小屋のほうは中まで入られたらしく、完全に荒らされていた。


「……チッ、向こうに入れなかったからって、もう片方を好き放題かよ……」


「どろぼう……?」


 『誰がこんなことを』――などという甘っちょろい発想は浮かばない。

 この時期に、あんな雪車で領主の屋敷まで乗り込んで、しかも堂々と土産の話までしてりゃ、目立つなというほうが無理って話だ。

 道中前を通った家の中から大量の『目』で監視もされていたしな?


 ……それにしたって、まさか数時間のうちに家まで往復されて荒らされるのはさすがに想定外だったけどさ。


「……完全に俺の警戒不足だな」


 そう、全部『平和ボケした日本人』の考えのまま、こんな犯罪意識すらあるのかないのかわからない世界で行動していた俺が悪いのだ。


「それにしても、持ってるものに興味があるなら声のひとつでもかけてくれればいいだろうに……」


 静かに、だが確実に胸の奥で広がっていく苛立ちと嫌悪感。


 この瞬間、俺の中で『村の人間』という存在は『付き合うべき隣人』から『警戒すべき赤の他人』を通り越し、『敵意のある何者か』へと格下げされたのだった。


* * *


「ということで、勝手に『イージー(拠点に敵は攻めて来ない)』だと認識していた現状を『ノーマル(定期的に敵が攻撃してくる)』に改め、拠点の防衛を強化するための会議を始めたいと思います!」


「またパパが難しいことを言い出した……」


 もっとも、今の俺が出来ることは『罠の設置』と『戦闘の強化』の二つしかないわけで。


「簡単なのは……うちのまわりに大量の罠を仕掛けること」


 もちろんこれに問題が無いわけではない。

 なぜなら『罠』と書いて『ブービートラップ』と読むタイプの罠しか設置できないから。


「……いや、勝手に家探しするような連中がどうなろうが知ったことでは無いんだけどさ」


 罠の設置が終わったらご領主様に報告だけはしておいたほうがいいだろうな。

 そもそも正当防衛が過剰防衛になろうと俺は気にしない。

 うん、罠に関しては何の問題も無いだろう。


 てことでもう一つの『戦力の強化』なのだが。

 こちらの方法は三つ。


 まずは一つ目。『戦闘訓練をする』。

 始めようと思えば今すぐ始められるお手軽な方法である。

 ……時間は掛かるけど。


 続いて二つ目。『強力な武器を作る』。

 もちろん武器には防具も含まれる。

 もっとも、材料が『木材』のみなので『棍棒』や『弓』くらいしか作れないんだけどさ。


 そして最後の三つ目。『コロニーの人数を増やす』。

 ……まぁ、あれだ。『ジーナさんを家族にする』……みたいな?

 それにより、彼女も俺と同じ『技能』が使えるように……あれ?


 これ、勝手に『ゲーム』なんだからコロニーに入れることが出来れば技能だって使えるようになると思い込んでたけど……本当にそうなのかな!?

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