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禍津神

ココは夢?ところどころ霧が出ているがココは俺の故郷。山を削って作った要衝の村。

高低差があるんだよなぁ。その分、みんな足腰は強いのが唯一の取り柄。

つまらない村。子供の頃は、森に出かけては父から譲り受けたスリングを使って晩ご飯のおかずを追加するのが日課だった。

「ア……ナタ……アナタ、アナタ。」

懐かしい妻の声。墓参りに行ったのは生前の事だ。

光る人?何故かソレが先だった妻とすぐに分かった。

互いに手を取る。

リュプケ「そいつはオムカエだ!目を覚ませ!ベッカー!!」


ベッカー「っ!」ハァハァ、ハァハァ

リュプケ「やばいもん見ちまったぞお前。」

まだ朝日は昇ってない。ベッドの上には裸の女性2人が転がるようにねている。戦場暮らしが長かったから、床で寝るのは慣れてる。

リュプケ「あれも、たぶん魔女だったんだ。」

ベッカー「魔女?俺の妻だぞ?」あり得ない。

息子は頭脳明晰だが、魔法なんて使えない。

顔をぬぐう手に見覚えのない“印”のようなほくろができている。

リュプケ「捕らえられたな。お前はもうだめかもしれん。」

不吉なことを、けれど……

ベッカー「彼女にもう一度会えるなら構わないかもしれない。」

ベッカーは突然、右手にできたほくろをいとおしく感じた。


エレミア「もう、うるさいんですよ。隣にいる人のことも考えてくださいよ~!」

ベッカー「悪い、悪い。」

マリサとデュラ子も神妙な面持ちである。

デュラ子「まぁ、今日、地球のヘソに向かうんですよね?」

ここからだと馬のカゴ車で丸一日あれば着く位の距離かな?後で業者に借りに行こう。

マリサ「(モグモグ、モグモグ)」

美味しそうに食べるが、なんか見てるこっちはお腹いっぱいになる。

エレミア「マリッチは豪快ですよね、朝から。」

マリサ「朝は一日の元気の源。ちゃんと食べませんと。」モリモリ食べて、ビシバシ働くのかな?

ベッカー『リュプケ?なんか静かだな?』

リュプケ「お前は私の商品だ。あれに渡すもんか。」

?一応、心配をしてくれてるのかな?


うまく借りれた、馬のカゴ車で亜人の村まで行く。

亜人「ここ、宿屋、無い。」

ベッカー「どこか泊まれるとこはないか?マリサだけでもいいんだ。」

亜人「それなら、村の外れの。あー、案内、したほうが、早い。」

マリサ「私だけですか?」

生の人間はお前だけだよ。(ニッコリ)

エレミア「我々は馬舎ですか。」

聖人かな?そんな大層なもんか。魔女からツッコミが入る。

デュラ子「4人分のガスマスクをもらえましたね。」

コレでマリサに自分達が普通の人間ではないことを怪しまれないですむ。

エレミア「えー、あそこまで歩くんですか?」

ベッカー「まぁ、そう言うなよお前の力が必要になると思う。頼りにしてる。」

おぉ!エレミアが目をキラキラさせている。

やる気のあるのはいいことだ。

一行はその日は早めに床についた。


マリサ「……息がしづらいです。」

マスクのスキマを埋める。あの鱗粉を吸ったが最後、命はない。

ベッカー、エレミア、デュラ子は賛同しかねて苦笑いするしか無かった。

エレミア「さぁ、行きましょう。」

マリサは上空の大きな蛾を呆然と眺めた。

あんなのより、これからもっとやばいのに会いに行くが……

マリサ「我が伴侶の協力者が居れば、大丈夫ですよね?!」

あれ?足が震えてる。虫嫌いなのかな?

今は一人でも人手が欲しい。マリサには片手で引けるボウガンを渡してある。

ライフルは使ったことがないらしい、時代錯誤もいいとこだ。

昔、軍学校の戦術の講義で、東方の国の騎馬突撃と火縄銃の激突の話をやったのを思い出した。

枯れ木の間を通って地球のヘソという大穴に進む。

ベッカー「マリサ、ペースが落ちてるぞ、大丈夫か?」

この山を抜ければ後は下りなんだが、山の中腹でマリサがバテ始める。

あー、無理だな。魔女のドクターストップが入る。

ベッカー「人命には代えられないか……」

エレミアをマリサの付き添わせて亜人の村へ引き換えさせる。

デュラ子「夫婦水入らずですよ?貴方?」

リュプケ「……このせいで、あっちの世界に旅立った奥さんが怒ってるんじゃないか?」

ベッカー『……そうかもしれない。』


エレミア「お待たせー。無事に亜人に預かってもらいましたよ。」

ベッカー「生身には過酷すぎるな、この環境は。お前らもガスマスク外していいぞ。」

デュラ子「……」

ベッカー「顔はその位置をキープしといてくれ。」外そうとするな。気色悪い。デュラ子は少し膨れている。


地球に空いたおおきな、地球のヘソが見れる山頂まで来た。禍津神は外に出て何かを食べてある。

エレミア「ここからでも、その大きさがわかりますね。」

その声が聞こえたのか、禍津神と目が合う。

リュプケ「お前ら見るな!取り憑かれるぞ!」

とっさに視線をそらす。

禍津神にはそういう能力もある。リュプケは長い人生で何度か他の禍津神と遭遇してるらしい。

リュプケ「昔はカバン一つで世界を回ったもんさ。」

ドス、ドス、ドス

こちらに気がついた禍津神がやってくる。網にかかった獲物に近づく黒い蜘蛛、そんな感じだ。

デュラハンが詠唱を始めると辺りは段々と寒くなっていく。

エレミア「うお、さっむい!」

ベッカー「防寒具を着とけばよかったな!」

リュプケ「とりあえず、保温の護符をつけとけお前ら。四肢末梢が凍傷になった場合はパーツ交換だな。」

なんかウキウキしてる……

鱗粉に雪が混じりはじめるが、詠唱はまた終わる気配がない。

このままでは禍津神に接敵される。詠唱を妨害される。

ベッカー「抜刀!」

ベッカーとエレミアは剣を抜くと禍津神へと駆けた。

人が立ち向かってくる。禍津神は久しぶりのその光景に身震いして、唸り声を上げた。

リュプケ「笑ってやがるぜ。」

ベッカー「五行の剣!土!」禍津神の腕に斬りかかる。

コーン!

硬い。そんな音ではない。

エレミア「通らない?!」

ベッカー「いや、コレでいい!エレミア巻き込まれる!離れろ!」

グォン!

禍津神「おお。」禍津神がぐらつく。禍津神は足元の地面に沈んでいく。

リュプケ「考えたな!」

禍津神は足を地面に取られて身動きが取れなくなった。しかし、その体が泡?丸い球体がボコボコできると、中から人型の獣達が出てきた。

リュプケ「うっわ!ムシラだ!」

黒い瘴気をまとった黒紫の獣人。目の前のいきのいい獲物を前に舌なめずりをしている。

ベッカー「どんどん出てくるぞ……」

エレミアはその光景に恐怖した。

リュプケ「コイツラ元はゴブリンや亜人の類だ。刃は通る。」

それを聞いたエレミアはいても立ってもいられず、敵陣に切りかかった。

エレミア「てりゃぁ!」

獣人は黒い血飛沫を撒いて絶命した。

リュプケ「お前ら、その血には触れるなよ。呪いだ。」

エレミア「了解です!(わかってない)」

ベッカー「五行の剣!火!」

切りつけられた相手は炎に巻かれその場で消し炭になる。

詠唱が終盤に差し掛かってきているのか、デュラ子を中心に吹雪いて来た。

ベッカー達の背中には雪が積もっている。

エレミア「さっむ!」

エレミアは身震いした。それは禍津神達も同じだった。

リュプケ「コイツラ、氷河期は地下で過ごしてたからなぁ。寒さはこたえるだろ。ケケケ。」

底しれぬ、魔女の知識量に驚嘆する。禍津神達は寒さに次第に体の所々が凍り始める。

禍津神「おおおおお!」

見るからに、ものすごく嫌がっている。その場から離れたいのに、地面に足が埋まってて取れない。

エレミア「ムシラ達が逃げます!」

エレミア「追うな!あんな呪いの塊、相手にするな。」

ムシラ達が穴に走って帰っていく。

禍津神は体のほとんどが凍って動かなくなった。

リュプケ「コキュートスだ。恐ろしい。」

地獄の最下層は氷漬けの地獄らしいが、目の前の光景がそれらしい。

デュラ子「終わりましたね。」

デュラ子はベッカーたちに合流する。

デュラ子「貴方、イイコ、イイコしてくださいな。」

リュプケ「やめとけ、(幽世の)奥さんが怒るぞ。」

ベッカーは思考するのをやめた。


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