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ヘパ

エレミア「昨夜は、お楽しみでしたね。」

ベッカー「……聞かないでくれ。」

ツヤツヤしたマリサはVサインを勝ち誇ったように掲げる。

リュプケ「まぁ、女日照りと男日照りが出会ったらそうなるわな。」

朝の宿屋の一階でみんなで集まる。

マリサは山盛りの料理にがっついている。

あれ、全部、胸に栄養がいくのか?

エレミア『で?どうだったんですか?』

脳内で昨晩の話が続く。誰か、助けてくれ……

リュプケ「まぁ、予想通り、無精子症さ。そこら辺はネクロイドだからな。」

ベッカー『もう、いいだろ?昨日のことは?!』

かんべんしてくれ。

あの胸で迫られたら誰も拒めないだろう。

マリサ「旦那様は食べないんですか?」

ベッカー「あー、朝は食欲がなくて……」

エレミア「わたしも。」

普通の人間と行動を共にするのはネクロイド史上初かもしれない。

嗜好品には食指も伸びるが、どうやっても食欲はない。

リュプケ「ネクロイドの市街地擬態効果、マズマズだな。」

一行は、マリサが食べ終えるのを待って次の街へ向かった。

乾燥して黄色くなった牧草、その上に寝転がってエレミアは聞き馴染みのない鼻歌を歌う。

リュプケ「(エレミアが)生前に流行ってた奴だよ。」

ふーん。

ロバを操る農夫の隣でベッカーは思う。

つかの間の のどか な ひととき、前線はこうはいかないだろうが。

マリサ「旦那様達はどこへ行くんです?」

あれ?さっき言ったんだが?

ベッカー「高名な鍛冶屋の所まで。」

エレミア「次の街に居るらしいですよ。」

リュプケ「正確には、奴の工房は街のはずれだがな。」

脳内で魔女の声がするが、普通の人には伝わってない。

マリサ「ならそこで新しい鎧を新調してもらえますかね?」

リュプケ「どうだろう?頼んでみる価値はあるんじゃないか?」

ベッカーは脳内の声を復唱した。

マリサの馬の手綱を握る腕に潰れた胸に目が行く。

うーん、凶器だ。鎧で隠しててもらわないと。

農夫とは街で別れて一行はリュプケの案内で郊外へと向かった。

ベッカー「……」

エレミア『私たちは良いですけど……』

リュプケ「いやぁ、この前来たときと、だいぶ街並みが様変わりしてたからな、悪い悪い。」

街の郊外に出るまでだいぶ迷った……

コレなら、反対方向だからと言わずに、普通に街道の方に戻れば良かったかもしれない。

マリサ「ハァハァ、もう、大丈夫ですか?」

ベッカー「後は一本道、と思う。」

この前っていつだ?魔女と人間の時間感覚のズレというのだろうか?

工房の煙だろうか?森の中から一筋の煙が立ち上っている。


リュプケ「おーい、リュプケの使いが来たぞ、結界を解除しろ。」

迷いの森。人間が入ると方向感覚が麻痺して工房にたどり着かない。最悪、森の中で獣達の餌になる。

『カキぃぃーン!』

ベッカー達の脳内で何かが外れる音がする。

???『開けたぞ。入ってこい。』

マリサ「どうしたんです?旦那様?」

ベッカー「……いや、行こう。この先だ。」


工房に入ると右手右足が義肢の魔女がトンカチを持っていた。

ヘパ「ヘパだ。光の剣が欲しいって?結晶は持ってきたか?」

ベッカーは研究所から取ってきた結晶をヘパに渡した。

リュプケ「奴のことはへパニャンと呼べ。わかったかお前たち。」

ベッカー「ヘパにゃん?=サンは鎧も作ってくれますか?」

ヘパ「あ?」

リュプケ「バカ、サンは余計だ。こいつは気難しいんだ!」

右手の義手で器用に結晶を摘む。

ヘパ「専門は刀剣なんだがなぁ?どいつのだ?」

マリサ「私は○○村の騎士キハーノともうす者です。お初にお目にかかる。高名な鍛冶職人が居ると聞いて馳せ参じた。願わくば我が甲冑を作成してもらいたい。」

ヘパ「フフン、そりゃ高名だろうな。私の名も人の世にしれてきたということか。」

いや、違うけど、高らかに笑う魔女。

やはり何かズレてるのだろう。

ヘパ「まぁ、リュプケのお陰でまた鍛冶ができてるんだ、ソレくらいやってやるよ、こっちも腕試しだ。」

リュプケ?聞き馴染みのない名にマリサはキョトンとしている。

マリサ「お知り合い?ですよね。」

何か合点したのかウンウン頷いている。

ベッカーの周りは奇人が集まるのだろうか?

『魔法剣の師匠(魔女)はまだまともな方だったのか?』

(魔法剣の被害者の惨状は置いといて)

ヘパ「ソレはいいとして光の剣の材料が足りないんだよなー。」

エレミア「というと?」

ヘパ「ここにある鋼材じゃ、光の剣の出力で溶けちまう。持ったやつごと大爆発だ。」

おいおい、研究所にそれっぽい、筒があったぞ。

脳内でリュプケが舌を出してる映像が流れる。

ベッカー「研究所の筒で良いのか?ヘパにゃん。」

ヘパ「いや、あれは使えないんだ。経年劣化してる。溶かして再利用とかもやってみたが不純物が混じって思い通りの強度にならない。他のにしたほうがいい。」

ベッカー『?』

エレミア『前は普通に入れてたんです?』

リュプケ「IDカード、ずっと前にこいつが溶鉱炉に落としやがったよ。」

なるほど。魔女たちがめんどくさがるわけだ。

二人はしみじみ思った。

ベッカー「で?その鉱物はどこにある?」

ヘパ「地球のへそだ。蛾のいるところよ。」

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