渓谷の研究所
ガス欠になったバイクを捨てて渓谷を進む。
一面赤い、地肌がむき出しのところをベッカーとエレミアは歩いた。
いくら、死なないから、疲れないからといっても、なんだか気分はダレてくるものだった。
ベッカー「結構、歩いたぞ。」
エレミア「パフェが食べたい……」
頭に魔女の声が響く。
リュプケ「そうだなぁ、ソロソロお前ら、コレを持っとけ。」
ベッカーの胸の高さ、転送魔法で空中に空いた穴からボルトアクションライフルやら武器が落ちてきた。
エレミア「あ、私のロンパ。」
ロンパイアな。
長い刃、長い柄、その柄にモーニングスターがついてる、玄人仕様の長物。
ベッカーの剣もあった。腰のベルトに吊るす。
エレミア「そろそろ着く、そろそろ戦闘ですね?」
エレミアがロンパイアを片手でぐるぐる回転させる。
危ない。
リュプケ「ロンパはまだ出番じゃない。ベッカー、お前のスリングで鍛えたエイム力の出番だ。」
嫌な予感しかしない。ベッカーはボルトを引いて固定マガジンに弾を装填した。
開けた場所にそこには不釣り合いな建物が崖の中にハマる様に建っていた。
ベッカー「おい、コレ最近できた帝国軍の研究施設とかじゃないよな?」
リュプケ「私なんかよりもずっと年寄り施設だよ。」
え?おいおい、壁に傷一つないぞ。
キラっ!
ベッカーの足元の草が消滅する。
『警告。我が施設に入るには許可証が必要です。直ちに提示してください。』
エレミア「わー、機械が生きてる系だ。」
リュプケ「二人とも、早く身を隠せ。」
ベッカーとエレミアは物陰に隠れた。
リュプケ「いいか、ベッカー。ガードメカのレーザー射出口を狙え。」
ベッカーは薔薇の花のようなピンクのコンパクトを胸ポケットから取り出すと鏡を物陰からだして研究所の壁を調べた。
ベッカー『ははぁ、あの目みたいなとこだな。』
研究所の壁にはたくさんの小さな目が等間隔に配置されていた。時折、まばたきするかのように壁の中に引っ込んだりしている。
ベッカーはタイミングを見計らって物陰から身を乗り出した。
ズドン!
まずは1つ目。ベッカーは素早く身を隠して、排莢、再装填する。
『敵襲。排除。排除。排除。支援を求む。』
サイレンが渓谷にこだまする。
リュプケ「ここらで生きてるのはお前らくらいさ。」
ベッカーは続ける。時折、壁の目が光るが、結構、標準が甘いのか直撃は避けられている。
ベッカー「といっても、髪の毛は止めてもらいたい。」
ハゲる。もう死んでるから毛は生えてこない。
コレで全部。ようやくすべてのレーザー射出口を破壊すると、中からワラワラと蜘蛛のような形をしたロボット達が出てきた。
リュプケ「エレミア。」
エレミア「任せてください。」
ベッカー「大丈夫かよ。」
エレミアはロンパイアをブンブン振り回しながらロボットの群れに飛び込んでいった。
なるほど、敵中に飛び込めば、遠距離攻撃しかできないロボットなら味方への誤射があるからソレが使えなくなるのか。
ベッカー「あ。」
確かに、遠距離攻撃は封殺したが、近距離用に電撃棒みたいな触腕がついている。
エレミア「わー!ベッカー!」
ベッカー「大丈夫じゃないじゃないか!」
ベッカーも抜刀するとロボットに突撃した。
ベッカー「影の刃!」
魔法剣。ベッカーの剣の周りに無数の刃が現れる。
一振りするとロボットはまるで千切りキャベツのようにスライスされた。
ベッカー「コイツラ柔らかいぞ。」
爆散。
エレミア「背中は守ってください。」
回転しながらロンパイアで切りつけ、別の敵に遠心力でモーニングスターを叩き込む。まるで舞踊を見ているようだ。
ベッカー「どこの剣術だ?」
エレミア「やだなぁ、年がバレるじゃないですか。」
何その返し。ブンブンと風を切る音がロボット達を爆発させているかのようだった。
リュプケ「ざっと3世紀前の剣術だな。エレミアの生前は騎士の家系だったからなぁ、お前の大先輩だぞ。」
あ、そうなんだ。ズバッと動きの鈍くなったロボットを薙ぐ。
リュプケ「跡取り娘のエレミアが病気で他界。それでお家も剣術も断絶したってことさ。」
ベッカー「ちょっとした、歴史の勉強になったな。」
エレミアは複雑な顔で苦笑いするが、次々と敵を無力化していく。
乱戦向けの剣術。昔は近距離兵器が主流だったからなぁ。
ベッカー「ただの無鉄砲な少女くらいにしか思ってなかったよ。」
エレミア「美少女ですよ。(ニッコリ)」
あらかた片付けると。二人は研究所に入っていった。
リュプケ「ちょっと待て。」
二人の頭の中に研究所の間取り図が浮かぶ。
リュプケ「赤で囲った部屋だ。結晶のような形だ。見ればすぐに分かる。」
奥の部屋、とりあえず、剣は抜いたまま奥へと進む。
稼働をやめた機械の腕が並んで、蛇腹の上に何かの筒が並んでいる。
部屋は窓から中をのぞき込めるが。ソレが何が何やら2人には分からない。
リュプケ「光の剣の製造ラインさ。そんなでも、護身用には需要があったって話だ。」
レーザーの時代に、近接兵器……
ベッカー「確かに。」
リュプケ「私の何代も前の魔女が書き残した文献だ。」
エレミア「よく覚えてますね。あれ、実験で爆散したじゃないですか。」
リュプケ「私の片目と一緒にな。」
おや?エレミアの脳内会話は初めてかもしれない。
エレミア「ムー、私もアップデートされてるんですー。」
ベッカーとエレミアは顔を突き合わせた。
まあ、美少女だな。うちの奥さんには負けるが。
リュプケ「そこの部屋だ。回収しろ。」
ベッカーは鍵のかかってない扉を開けて製造ラインから、キラキラ光る結晶を何個かとった。
リュプケ「あれ、一つでよくないか?」
ベッカー「作成に失敗したらどうするんだ。」
また戻りゃいいじゃんとリュプケは言う。
……時間の流れが違うんだな、人と魔女は。
リュプケ「差別発言だぞ、ベッカー。」
ベッカーはため息をつくとその研究所を後にした。




