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神の川

次の夜

昨日でもらったスクロールはだいぶ減った。うまく行けば、今日でお使いは終わる。今日も夜霧がでている。屍界リンクで見る世界は霧はクリアに見える、不思議なもんだ。

肩に止まっている。フクロウにオヤツをやる。

ベッカー「今日も頼むぞ。」

音もなく、フクロウは空高く飛び上がる。屍界リンクで戦場を見渡す。昨日の腐乱死体はそのまんま、疫病になるぞ。

いや、もうなってる。侵攻側の帝国軍内部はひどい有様らしい。

リュプケ「お?何だあのデカいの?」

フクロウの目から見える景色、リュプケも屍界リンクしてるらしい。ベッカーの製作者なんだから当然っちゃ当然か。

ベッカー「何が見えるんだ?」

地上からは夜霧のせいで何も見えない。

リュプケ「お前も見てみろよ。」

どれどれ、ベッカーはフクロウにリンクする。遠くの方から大きな土煙がこちらに向かってきている。

ベッカー「……ありゃぁ……」

次第にその足音が地響きのように近づいてくる。

ベッカー「ゴッドリバーだ!」

大きな鉄でできたムカデ、帝国軍、四天王の一人、

元は人間だったものだ。すごい勢いで走ってくる。

ベッカーは急いで塹壕の後方へ、廃屋のあるほうへ走った。

ドゴォォォ!

巨体が死体を空高く巻き上げ、塹壕を吹き飛ばす。

リュプケ「アララ、もったいない。」

言ってる場合か!?

ベッカーは近くの物陰に隠れた。

ゴッドリバーの腹側から雷光がバチバチと光る。

塹壕に隠れた兵士を焼き払う雷撃。ズドォン!!

轟雷と閃光が辺りに轟く。

ゴッドリバー『ははは!シュヴァルツカッツめ、最初からこうしておけばよかったのだ!』

巨大なムカデの電子音声が夜空に響きわたった。

ベッカーは見つかりませんように、と心のなかでつぶやいた。ゴッドリバーは強敵だが、活動時間は短いし、

再稼働に数日かかる。体も大きく近くは見えにくい。

リュプケ「塹壕にいた奴らは丸焦げかなぁ。使えるかな?」

ベッカー「強力な電圧で先ず、内臓が弾ける。とても見れたもんじゃ無いだろう。使える代物はないと思うね。」

魔女とは心の中で会話できる。幽世かくりよ技術、便利なもんだ。物音を立てることも声を出すこともないのだ。

ムカデの触覚がゆらゆらと動く、生体センサーになってる。ムカデは辺りに生物が残っていないことを確認すると、元来た道を去っていった。

ゴッドリバー『@◆;▲……つまらん。』

ベッカーはこの時、自分がネクロイドだということに感謝した。

ベッカー「死んでてよかった。」


突然の地響き、轟音、雷光。

前線指揮所は蜘蛛の子を散らしたような騒ぎになっていた。

レオナールはベッカーの報告を聞いて頭を抱えた。

レオナール「最悪だ。」

ベッカー「前線の塹壕にいた奴らは全滅だろう。」

さすがに見る気にならない、生存者なんているわけがない。

ベッカー「どうにかしないと、死体漁りなんてとてもできないぞ。」

レオナール「話をややこしくするな。ベッカー。ゴッドリバーの装甲は魔法に耐性があるし、ここの対戦車砲で太刀打ちできるかどうか……」

ゴッドリバーを初めてみたのは北の小国と帝国との戦争の時だ。帝国四天王が実戦で始めて投入された戦争。あんなのは戦争とは言わない。蹂躙、一方的な殺戮だった。

黒鉄の巨人 シュヴァルツカッツ

鋼鉄のムカデ ゴッドリバー

不死身の羅刹 ハートランド

刃のつむじ風 エウレカ姫

あんなのを倒せるものがあるとすれば神話の産物だ。

ベッカーはおとぎ話を思い出した。しかし、本当なのだろうか?神話の話だ。鉄も魔法も切り裂く光の剣。

リュプケ「あれがいるのか?作れなくはないぞ?」

頭の中で魔女の声がする。実在する?あれが?

リュプケ「失礼なやつだ。お前はなんだ?私はなんだ?」

おとぎ話の魔女とその従者、ゴーレムの類だ。

ベッカー「レオナール、俺がなんとかするよ。数日で戻る。」

レオナール「?こちらも最善を尽くしておこう。」


ベッカーはバイクに跨って帰路についた。

リュプケ「いや、エレミアのところにいけ。アイツも必要になる。」

?いいけど。

夜のバイクが街道を走る。国の真ん中あたりも穀倉地帯になっている。今年も実り豊かな年になるだろう。

小麦が夜風にそよいでいる。

ベッカー「そう言えば、作ると言ったな。詳しい話を聞かせてくれ。」

リュプケ「光の剣だろ?現存してるやつはないが作れる。材料の入手場所があるのさ。」

なるほど。

リュプケ「しかし、材料があるのは帝国領内。私は帝国が嫌いでね。それに光の剣に必要性を感じなかったから、今まで放置してたってわけさ。」

エレミアが必要ってことは……

リュプケ「まぁ、荒事になるわな。」

あー、やだやだ。お使いくらい、穏便に済ませたいもんだ。


月が空高くにある。月明かりが、遠くに見える城塞都市を照らしている。

早い。馬とは大違いだ。最近、軍に導入されたバイク。

時代の流れだ。銃も紙薬莢から金属の薬莢に変わったし、リボルバーも先込めタイプから後装式に変わった。

騎兵だった頃が懐かしい。

ベッカー「あの頃はまだ生きてたなぁ。」

城塞都市の入り口にピンク髪のメイドと荷物が満載のトラックが見える。


エレミアはパフェを食べながら嫌味を言っているが、

モゴモゴ言ってて聞き取れない。

エレミア「……(ゴクン)、ですから、妹たちにコレを引き継ぐまで待ってくださいよ!」

ベッカー「急ぎなんだがなぁ。」

リュプケ「?いろいろ回らなくちゃならないぞ?1日で終わるもんかい。材料は2つ、あー、3つだったかな?それに、あれを作れるやつは北の小国の方にいる。」

えぇ……。エレミアはほれみなさいと、ない胸を張る。

ネクロメイド「遅くなりました。お姉様。」

転移してきたメイド姿のネクロイドが言う。目は長い前髪で見えない。

エレミア「それじゃあとよろしくね。」

ネクロメイド「はい。」

エレミア「いい子だね。」

その光景を見ていて思う、エレミアのほうが小さい。

ネクロメイドの頭をエレミアが撫でているが、

エレミアが背伸びして、妹(?)のほうが少し屈んでいる。

ベッカー「……どっちが妹なのやら……」

エレミア「失礼な。身長は関係ありません。私よりあとに作られたネクロイドは皆、妹です。もちろん貴方も弟になります。」

ベッカー「……弟に見られてたのか……」

さて、我々も行きましょう。そう言うと、エレミアは当然のようにバイクの後ろにまたがった。ベッカーはしぶしぶ前に座る。

エレミア「私は運転できません。」

ベッカー「……まぁ、コレでいいのか。」

リュプケ「先ずは帝国との国境を目指そう。」

フクロウが夜空を舞っている。ベッカーは白んできた東へバイクを走らせた。




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