第8話 終わりの始まり
●登場人物紹介
ナリーマ・シホ 女神『ダ』に仕える斎王。118歳。女性。
貌なきイア・オタカ 伝説の大魔法使い。年齢不詳、少なくとも1万歳以上と思われる。性別は男性の様です。
寒々した大広間は、青白い魔法の光で煌々と照らされている。
全裸で、大魔法使い貌なきイア・オタカと対峙していたナリーマだが、我に返り微かに残った妖力をかき集め、9匹の金狐、一心分体に変化しようとした。
1匹でも金狐が逃げ伸びる事が出来れば、時間は掛かるが妖力を再び蓄えて人間体の妖斎王ナリーマ・シホとして、復活する事も可能だ。
しかし、ナリーマは一心分体に変化する事が出来ない。
微かな声でつぶやく。
「な、何故、変化する事が出来ないの ?」
「ナリーマのお嬢さん、愚禿は貴女を逃がす訳が無いでしょう。貴女の妖力は封じて有ります」
夜の闇より暗い素顔 ? 晒しながらバスの声が寒々した大広場に朗々と響く。
「わ、我を殺すのか」
118年の半生で、初めて恐怖のに脅えて、伝説の大魔法使いに尋ねた。
「愚禿の目的は、美貌の貴女、ナリーマ・シホを愚禿の蒐集品とし加えることですよ。アメーバのお嬢さんや仙狐のお嬢さんの様に」
「蒐集品 ?」
「愚禿は、遥か昔に魔力、妖力を極め、人外の領域に足を踏み入れましたが、性欲は衰える事は無く寧ろ増大して行きましたが、並の女達とは目合をする事が出来できなく成りましたよ」
「目合 ?」
「目合とは、男女の契りの事ですよ。数百年前より愚禿と契った女達は肉体や精神が壊れ廃人と成りました。愚禿と愛を交わしても大丈夫なのは、愚禿と同じく人外の領域に足を踏み入れたナリーマ・シホさん、貴女の様な妖女や女怪達だけなのですよ」
「ば、ば、馬鹿な事を、我を犯すのか ? その様な愚行お犯せば、貴公は膨大な魔力を喪失するぞ」
マリーナの118年の半生、その身に宿した先代達の妖斎王の魂にも男女問わず、肉欲の誘惑に負けて異性と契った魔法使い、妖術師が魔力、妖力を喪失した事が記憶されていた。
神に仕える神官、巫女、僧侶、例え生殖と性愛を司る淫乱な女神「ダ」に仕える妖斎王でも、長い、長い生涯に渡り、男性と契る事なく純潔を守る事で人知を超越した神妖力を生殖と性愛を司る女神『ダ』に仕える代々の妖斎王達は授かっていた。
魔力、妖力を駆使する魔法使い、魔女、妖術師、錬金術師が人々から尊敬され、時には畏怖されるのは、肉の誘惑に打ち勝ち、生涯を童貞、処女として暮らし、知識を探求して魔力、妖力を極める努力をしている他に成らない。
マリーナ・シホが知る限り、異性と契った後でも魔力、妖力を喪失しない魔法使い、魔女、妖術師は居ない筈。
お伽噺の登場人物、伝説の大魔法使いイア・オタカを除いては・・・・・
脅えた声で伝説の大魔法使いに尋ねるナリーマ。
「わ、わ、我を何もするつもりだ」
「勿論、愚禿の蒐集品として、人食い樹海の地下迷路に連れ帰りますよ。その前にこの場で味見をさして貰いましょう。幸いな事に貴女は全裸ですしね」
穢れなき乙女マリーナは瞬時に言葉の意味を理解した。
伝説の大魔法使いイア・オタカは、生殖と愛欲を司る女神『ダ』に、仕える妖斎王ナリーマ・シホを犯すと言っているのだ。
「わ、我を穢す事は、女神『ダ』が決して許さぬ」
「ご心配なく、50重の対神防御結界を大広間の周りに張り巡らしています。吸魂鬼の女神『ダ』の無粋な邪魔が入る事なく思うが侭に、愛を交わす事が出来ますよ」
女神『ダ』に仕える斎王として誰よりも豊富な性知識を持つナリーマだが、強大な神妖力の保持者としては当然、処女のナリーマは、神妖力と処女喪失を恐れて、一糸纏わぬ姿で逃げ出した。
強大な神妖力を戦闘亜空間の激烈な戦闘で消耗し、額に刻印された逆桔梗紋により僅かに残された妖力が封印された現状ではナリーマは、無力で全裸の半獣人の生娘に過ぎなかった。
恐怖がナリーマの体力を一時的に回復させ、一目散に永遠に事象の地平面の彼方へ消滅した扉後に駆けだした。
短距離瞬間移動でマリーナ前に、一糸纏わぬ姿の貌なきイア・オタカが立ち塞がった。
全裸ら晒した伝説の魔法使いは身長は165センチ程の筋肉流々とした小男だが、その身体は瑠璃色の半透明で星々が輝き、素顔は卵型の夜の闇より暗い闇だった。
「愛しいナリーマよ、愚禿と心ゆく迄、愛を交わそうぞ」
素早い動きで貌なきイア・オタカに全裸のナリーマは貌なきイア・オタカの分厚い胸板に抱きしめた。
華奢なナリーマは、半透明の腕、力強く抱きしめられて身動きが出来ない。
「い、い、嫌、ゆ~許してください、ぃ、ぃ、ぃ~イ~」
ナリーマの悲痛な声が寒々とした大広間に響き渡るが、貌なきイア・オタカ以外は、誰一人聞く者は居なかった。
この後、大広間で行われた愛の行為はR18の領域なので記する事は控えます。
数時間の貌なきイア・オタカとナリーマ・シホは数回の愛の行為の後、全裸のナリーマは虚つな眼をして冷たい大理石の床に仰向けに横たわっていた。
貌に刻印されていた妖力封じの逆桔梗紋は消え去り、無毛の下半身には永遠に、伝説の大魔法使い貌なきイア・オタカの眷属の証、逆桔梗紋が刻み付けられていた。
ナリーマは、残りの長い、長い、余生を貌なきイア・オタカの蒐集品、愛妾、彼女と同じく人ならぬ領域に踏み入れた妖女・女怪ハーレムの一員とし過ごす事に成る。
数回の激しい貌なきイア・オタカとの愛の行為の後、虚つな眼をしたナリーマ呟く。
「ゆ、ゆ、許して。我を純潔を散らして満足でした筈、許してください」
「愚禿との愛の生活は此れからが本番です。貴女とアーメバのお嬢さん、妖狐のお嬢さんを愚禿の拠点である人食い樹海の地下に広がる地下迷路に、連れ帰り今迄、経験した事の無い女の喜びを教えて差し上げますよ」
「い、嫌、嫌~イヤ~ゃ、ゃゃ」
立ち上がり、再びに一糸纏わぬ姿で逃げ出したナリーマはだが、金縛り魔法で身体の自由を奪われ成す術も無く立ち尽くす。
「愛しいマリーナ、愚禿と共に愛の巣に行こうぞ。愚禿の地下後宮には、妖女・女怪のお友達が沢山いますよ」
墨染めの作務衣を再び纏った貌なきイア・オタカは、全裸のナリーマを穀物俵を担ぎ上げると転移、魔法で姿を消した。
貌なきイア・オタカは3名の蒐集品を連れて星犬山の裾野に広がる人食い樹海の地下迷路に引き上げと思われるが、我々には知り様がない。
妖斎王ナリーマ・シホの生殖と愛欲を司る女神『ダ』として日々は、幕を下ろし、新たに大魔法使い貌なきイア・オタカの蒐集品、眷属、愛妾しての過ごす長い、長い、歳月が幕を上げたのである。
地下壕から大広間に戻った、女神『ダ』の敬虔な信者が眼にしたのは、大理石の床の横たわる巫女兵の遺体と螺鈿細工の天板の上に並べられた、大皿に盛られた大兎、大鼠等の丸焼きと、杯になみなみ注がれていた、盗人酒と幻覚椰子酒だけだった。
女神『ダ』の神殿が聳える岬、『夕陽ヶ丘』からは、大聖洋の海原に沈む美しい夕陽を見る事が出来る。
この日の黄昏にも、大聖洋の海原に沈む美しい夕陽を見る事が出来た。
平和な東渤海王国の没落を暗示するような美しい夕陽だと、後の歴史が現した書物に記されていた。
※ ※ ※
斎王ナリーマ・シホが失踪した東渤海王国の各地では、数年に渡り盗人稲の不作が続き、各地で飢饉が発生し、飢えた民は各地で反乱を起こし、女神『ダ』は荒ぶる本性を露にして人間の血肉を供物して要求し始め、東渤海王国の発生した民の反乱に拍車を掛けた。
東渤海王国は、223の小領地に分裂して貴族や騎士や豪族が、お互いの娘を強奪し、互いの領地を荒す物騒な地域、東渤海辺境地と化し約200年、戦国の世が続いた。
東渤海辺境地のを統一したのは、彗星のごとく現れたカナフーノ・タオでした。
カナフーノは小領地の領主でしたが、223の小領地に分裂した東渤海辺境地40年で再統一して約300年続いた戦国の世に天下統一して『夕陽ヶ丘』に王都『五津京』を築き、新東渤海連邦王国を統治した。
新東渤海連邦王国の統治は中央大陸のオマケの大百済半島も含めて、約400年続いた。
伝説の大魔法使い貌なきイア・オタカの己の欲望を満たす為の、行為は平和な東渤海王国を滅亡に導き、災厄、悲劇、多くの人々を不幸を招いてが貌なきイア・オタカは其の事に関しては一切気にする事は無い。
人外の領域へ深く踏み入れ、人毛て有る事を辞め人間としての柵、倫理、価値観を全てを超越した、貌なきイア・オタカは、地下迷路で凡人の我々には、理解し難い研究に没頭し、妖しげな魅力を湛えたナリーマ・ホシを含めた妖女・女怪達と愛を交わして楽しんでいる事だるう。
如何なる荒ぶる神、禍つ神、皇帝、大王等の権力者にも決して仕える事は無く、己がの限りない探求心で、遥か昔に人外の領域に、踏み入れた貌なきイア・オタカは、和神、荒神、禍つ神に仕えて童貞、処女を生涯守り通して魔力、妖力を維持している魔法使い、妖術師と違い女性と契っても決して、魔力を喪失する事は無い。
彼は今日も、又、世界各地て人外の領域に足を踏み入れた、妖女・女怪達を蒐集する為に、暗躍している事だろう。
人間としての価値観、倫理観を超越した伝説の大魔法使い貌なきイア・オタカは、己が欲望を満たす為の行動が、人々に災厄、悲劇、不幸を招いて気に留める事は決して無い。
貌なきイア・オタカの異型の精神には、魔法、妖術を更に極め、禁断の知識を探求して、己が欲望を満たす事しか関心が無いのだから。
ー完ー
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
誤字、脱字だらけの拙い小説ですが、完結迄、お付き合い頂きありがとうございます。
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