第06話 人間爆弾
●登場人物紹介
ナリーマ・シホ 女神『ダ』に仕える斎王。118歳。女性。
カルハ・シマーコ ナリーマの側近。巫女兵長。
イーユ・イツツ ナリーマの側近。侍女長。
侵入者 女神『ダ』の神域に侵入した謎の存在。
生殖と性愛を司る荒ぶる女神『ダ』の神殿のエントランスき、青白い魔法の光で煌々と照らさせ、壁には男女の交合を描いたモザイク画や、浮彫で飾られている、
エロチックな装飾だが、美術評論家が評価すれば値の付け様の無い、超一級品の美術品と評価する事だろう。
又、男女の交合を主題とした彫像が、エントラスの各所に展示されている。
美術館の展示室様な、エントラスに踏み入れた"侵入者"を待ち受けていたのは、針鼠の様に全身を武装した巫女戦士達では、無く首輪、腕輪、足輪等の装飾品以外は、身に着けていて無い全身を紅に彩った侍女達と、素肌に法被と腰布を身に着けた楽師達だった。
「わたくしは、女神『ダ』に仕える、侍女長イーユ・イツツです。""侵入者"様、土偶兵団、埴輪兵団、三獣巫女戦士を退けた貴公を歓迎しますわ。さあ楽師達、勇猛な""侵入者"様を歓迎する旋律を奏でなさい」
素肌に法被と腰布を纏った楽師たちが、激しくバチで、太鼓を打ち鳴らし、横笛を吹き始める。
官能と性欲を刺激する魔曲が、奏でられエロチックくな彫像が飾られたエントラスに響き渡り、全身を紅で彩った侍女達が""侵入者"歓迎する蠱惑的な舞踊を舞い始める。
紅に彩られた乳房が"侵入者"を誘惑する様に揺れ、しなやかな腰が妖しく、ふり動き"侵入者"を幻惑する妖艶な舞を舞い踊る。
腕輪、足輪に取り付けられた鈴が、エロチックな舞踊を舞う侍女達から微かに聴こえる。
激しくドラムと銅鑼が打ち鳴らされ、舞踊が最高潮に達し、全身を紅を彩った、侍女達が次々と"侵入者"に殺到して、抱き着く。
そして、全裸を紅で彩った侍女達が唐突に姿を消した。
「自己爆発魔法ので特攻ですか。愚禿も人減爆弾の自爆に巻き込まれたら重症を負いますので対処させていただきますよ」
予期せぬ結果にカルハは、戸惑いを隠せない。・・・・・
「わたくしの侍女達に何をしたのですか ?」
「愚禿を熱烈に歓迎して頂けるのは嬉しいですが、人間爆弾の自爆に聞きこまれたら溜まりません。魅力的な侍女の皆さんは、全員、月へ転移させましたよ」
瞬間移動魔法は、一度訪れた場所なら瞬時に転移する事が出来るが、訪れた事の無い場所へには、転移する事は出来ない。
"侵入者"は、約38万キロメートル離れた月へ訪れた事が有るのだろうか ?
謎が深まる・・・・・・
魂を惑わす妖しげな旋律は鳴りやみ、痛いほどの静けさがエントラスに訪れた。
女楽士達が、法被の裾を翻して"侵入者"に一斉に襲いいかかった。
バチを金砕棒に持ち据えられ"侵入者"を打ち据えるが、"侵入者"は手刀で反撃して行く。
手刀で鉄砕棒と鍔迫り合いして、女楽士達の生首を刎ね、身体を袈裟懸けに切り裂いていく。
しかし、人魚の肉を食してた、女神『ダ』の眷属達は、人魚の肉の効果が切れる880年間は、不老不死で決して死ぬ事は無い。
例え、生首を刎ねられも、身体を木端微塵に爆破されても身体を再生して、再び敵に襲い掛かる不死身の戦士達なのである。
首を刎ねられ、身体を切り裂かれた楽師達は身体を再生後、再び""侵入者"に襲い掛かる。
「愚禿を歓迎する美女達は、不死身の戦士ですか。厄介な相手ですね。全員、月へ転送ししますか」
1秒、意思を集中すると、転移魔法が無言呪文で発動された。
鉄笛と金砕棒を振り上げて"侵入者"に襲い掛かった、楽師達は唐突に全員が姿を消した。
楽士全員が月へ、約38万キロメートル離れた死の衛星、月へ転移されたのだろう。
高等魔法でである瞬間移動や転移魔法を無言呪文で使いこなすとは、"侵入者”の魔力は、人間離れして、測り知れない。
2階の大広間で仮想幻術で今迄の戦いの推移を見守っている妖斎王ナリーマ・シホも感じている事だろう。
不気味で得体のしれない相手が、我が身に迫っていると。
イーユ・イツツは、2階へ続く大階段に立ち塞がり、""侵入者"の行く手を阻む。
「わたくしの命に代えてもナリーマ様の下へは行かせませんよ」
大輪の百合が図案化され着物ドレスを纏ったイーユの口が大きく裂け、白い肌には白い毛が密集して臀部からは三本の尾が生える。
イーユ・イツツは三又尻尾の仙狐に変化して、不遜にも女神『ダ』の神域に侵入した"侵入者"に襲い掛かった。
"侵入者"は紙一重で仙狐の攻撃をかわし、手刀光刃で右脚を切り離すが、不死身の仙狐の右脚は、再生して魔法で再び、黒衣の"侵入者"を攻撃する。
異界より召喚された無数の正体不明の小動物が牙の生えた鼠に似ている小妖獣が、"侵入者"に群がり墨染めの作務衣ごと身体を貪りつくしていく。
1秒後、"侵入者"はこの世から姿を消して、戦いの決着は付いたかと思われたが、""侵入者"を食らいつくした小妖獣達に異変が生じた。
小妖獣達は肉片を吐き出し、吐き出された肉片は作務衣を纏った"侵入者"に再生され、1分後には無傷の""侵入者"が何事も無く立っていた。
「仙狐のお嬢も愚禿の激しい目合に耐えられそうですね。アメーバのお嬢さんに引き続き仙狐のお嬢さん、地下後宮に連れて帰りますか」
再び太陽のコロナより生きた核融合、太陽の子を召喚。
太陽のコロナより召喚された、太陽の子は無数に分裂すると、無数の小妖獣を全て焼き尽くし太陽のコロナへ帰って行った。
無言呪文で、高等魔法を使いこなす黒衣の"侵入者"に、妖斎王ナリーマ・シホに使役される式神、三尾仙狐イーユ・ツツイも驚きが隠せない。
「高等魔法を無言呪文で使いこなす、貴方は何者なの ?」
目深に被った頭巾の下の翁の面からは、喜怒哀楽の感情や、年齢不明のバスの声が、淡々と三尾仙狐の問いに答えるが、話が嚙み合っていない。
「愚禿は愚禿に過ぎません。愚禿との激しい目合に耐える事が出来そうですね、イーユ・イツツさん。アメーバのお嬢さんホーミ・マヤカナに引き続き貴女も愚禿の地下迷路に連れ帰る事にします」
「再び問いますが、貴方は何者 ? 何ゆえに女神『ダ』神殿に侵入した ? 目的は何 ?」
「愚禿は愚禿です。愚禿の目的は細やかなモノですよ。愚禿との激しい目合に例えられる妖女・女怪を収集して、愚禿の地下後宮に連れ帰る事ですよ」
「わたくしとナリーマ様を蒐集品に加える事が出来るモノならやって見なさい」
ナリーマが無言呪文で発動した、魂迄を燃やし尽くす青白い狐火が、"侵入者"に襲い掛かろうるが、"侵入者"が先手を打って、無言呪文で魔法を発動させていた。
仙狐が立つ大理石の床には、逆桔梗紋が浮かび上がり仙狐に、変化したイーユ・ツツイの妖力をほぼ吸い取った。
変化が解けた後には、一糸纏わぬ姿を晒したイーユが呆然と立ち尽くしていた。
部下達を全て失い最後の切り札を失った、全裸のイーユは慌てて逃げ出そうとしたが、見えない障壁に阻まれた。
「愚禿が、愛しいイーユさんを逃がす訳が有りませんよ」
頭巾の白い翁の面からは朗々とバスの声が、"侵入者"とイーユ・イツツしか居ないエントラスに響き木霊する。
「金縛り魔法発動」
一糸纏わぬ姿のイーユは、瞼を閉じる事も獣耳を動かす事も三尾も動かすこ事も出来ない。
勿論、ナリーマに召喚され使役されて以来、初めて感じる畏怖や、戸惑いを現す絶叫を叫ぶ事さえ許されない。
金縛りで指一本動かせないイーユからは無言の絶叫が、恐怖、絶望が念波として放出された。
"侵入者"はマネキン人形の様に動きを止めた、イーユを念動魔動で収納空間に収納すると、2階に続く大階段を上り始めた。
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
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