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隣街SF夢

 隣街行きの路線バスは屋根がなくて空が抜けて、バスの切った風につむじや髪のうわべを心地よさと煩わしさが丁度くすぐったい。土曜の午後の魔力に僕は眠った。目を覚ましたのは目的の隣街まであと一つの頃で、その一つ手前のバス停に降りたい人の押した停車ボタンの音が、ガビガビで、その音質のひどさに乗客はみんな一瞬だけで十分なほどの嫌な顔をし、でもすぐに表情を隠して、また各々の向きに顔を戻した。運転手は寝ていたので、結局そのバス停には止まらず、終点の隣街に停車していたタクシーに突っ込んでやっと停車した。乗客からしてみれば、バスの仕事はそれで十分だった。誰も気に留めることなくバス賃を順に払い、順に煌びやかな隣街に足をつけようと降車口すぐにある蓋の開いたマンホールの中へ落ちて誰も帰らず、最後尾にいた僕だけがマンホールを避けて隣街を歩くことができた。巨大な象のような鳴き声が街の頂に響いて、呼応するみたいに街のいたるところから熱い水蒸気が噴き出した。地元の人はそれでせいろ蒸しをして、夕飯のにおいが通りに充満、三十秒もしないで午後のチャイムが、カビカビで、でも誰も嫌な顔をしないで、だって隣街は煌びやかだから、街のパソコン屋もむしろゲーミングPCを光らせない方が売れることをよく知っていた。蒸発して舞うアルコールで漂流記を読む浮浪者の家はキレイだった。ブルガリアの屋根をしていた。象に似た鳴き声はとっくに止んでいて、どの家も夕飯を済ませたあとの公園でサッカーへ繰り出している。裸足が隣街の暮らしを強くしている。もう僕は十分だった。ある雑居ビルの三階へ入って、音を立てないよう、あの割れた窓ガラスの側に放置された、深くたゆんだピアノ、その脚からほつれた糸を、少しずつこちらへ手繰り寄せる。一時間してやっと、ピアノは跡形もなく僕の手に収まってこれで、僕の仕事は終わったのだった。隣街は早くも眠りについていた。こんな時間にはもはや、向こうの街へバスを出すだけの労働力が不足していて、僕はホテルの部屋なんて取っていないし、連絡を入れたからといって経費としてホテル代を払ってくれるほど気の利くクライアントではないし、収支マイナスの覚悟でホテルを探す間に、カラスの声がして、窓の外、隣街は朝を迎えている。僕は一睡もしていないのにたった今このとき、ホテルを探しながら目を覚ましたのだと、子供のように純粋な脳が騙されてしまうほど、隣街は煌びやかな水蒸気に包まれその霧の中を巨大な象が背中の羽を雄大に動かして遊びまわっていた。糸くずを抱いて雑居ビルの三階から眺めていた。

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