第四話 ダンジョン配信者の少女 ユキ
ジャイアントクラブを軽く倒したユキ。
哲人はレベルを確認してみる。
彼女のレベルは9、平均よりは高いがとても強いと言うほどでもない。
ダンジョン開拓を職業としているならさらに倍は欲しいくらいだ。
レベルの低いダンジョンだけを攻略するならば、問題はない数値だが。
とりあえずダンジョンから出ることにした。
哲人とユキ、なで子の3人でダンジョンを出る。
そしてあらためて、哲人はダンジョンの外で礼を言った。
なで子を救ったのも事実だが、ユキに助けられたのも事実。
「ありがとう、助かったよ」
「いいよ別に」
「何かお礼をさせてくれないか?」
「…じゃあ食事を奢って」
そう言われ、近くのファミレスへと誘われた。
もっと高めのところでもよかったのだが、どこを選ぶのは彼女たちの自由だ。
そこで改めて自己紹介をすることになったのだ。
まず最初に哲人の方から名乗ることにした。
名前は世良木哲人、年齢は28歳だと告げるとユキは驚いたような顔をした。
「へぇ…」
次にユキの番である。彼女は自分の名前を名乗り始めた。
本名は『小鳥遊 雪花』というらしい。
それ以上は何も言わなかった。
口数が少ないことから、無口な性格なのだろうか。
そして、彼女の友人のなで子。
「あたしはなで子、よろしくね」
「よろしく」
二人は自己紹介を終える。
そして次は食事だ。
三人でドリンクバーと適当な料理を注文する。
「ねぇ、おじさん」
ドリンクバーのグラスを持ちながらユキが話しかけてくる。
おじさん、と言われ少し複雑な気分になるも彼女たちとは十歳以上、年齢が離れているのだ。
そう言っても当然か。
「なんだ?」
彼は聞き返した。
すると彼女は言ったのである。
「本当にレベル40なの?おじさん、明らかに低いレベルにしか見えないんだけど…」
…と。
痛いところを突いてくる少女だ。
彼は屋根裏ダンジョンでレベルを上げたこと以外、ほぼ初心者なのだ。
確かに低レベルに見えても仕方がないだろう。
「まぁ、ちょっと訳があってね…」
彼は言葉を濁した。
しかし彼女は納得していないようだ。
「ふーん」
そう言いながらジト目で見てくる。
これは困ったな。
ちょっと話題を変えるか。
「ところでキミたちはどうしてダンジョンに潜ってるんだ?」
これは彼が一番気になっていたところだ。
ユキは中学生、なで子は高校生くらいか。
この年齢であんな危険な場所にいるのだから当然だろう。
するとユキは答える。
「お金を稼ぐためだよ」
「お金?」
「うん、生活費だったり学費だったりいろいろと」
それを聞いて彼は納得した。
なるほど、そういうことか…
進学の費用だったり、いろいろあるのだろう。
あまり詮索するのもよくない、そう考えた哲人はそれ以上は何も言わなかった。
と、そんな時、ちょうど注文していた料理が来た。
来たのはユキが注文したオムライス。
なで子が注文したサーロインステーキ定食だ。
そして彼はというと、カレーライスを注文していた。
「結構ガッツリといくね…なで子」
「一番高いヤツだよ、これー」
そう言うなで子。
とはいえ、一番高いとは言ってもファミレスの料理だ。
値段はたかが知れている。
好きなだけ食べさせてあげよう。
「食いたいならもっと注文してイイぞ」
「じゃあこれ」
「おお」
「ステーキです、一番大きいの」
なで子は嬉しそうな顔をしながら追加の注文をした。
痩せている割に結構食べる量が多いようだ
しかしユキは首を横に振る。
「いや、いいよ。もうお腹いっぱいだし」
「そうか?」
そう言いつつ、なで子はステーキに食らいついている。
ついでにメニューから他の料理も注文していた。
と、その時…
「おじさん、それ美味しい?」
ユキが聞いてくる。
「ああ、美味しいけど」
彼は答えた。
実際、このファミレスのカレーライスは絶品なのだ。
辛さがちょうどよくて癖になる味をしているのである。
「ふーん…」
そう言いながら彼女は彼のカレーライスを見ているようだ。
そして突然…
「一口ちょうだい」
「ああ、いいけど
「ありがと、うん、美味しい」
どうやら気に入ってくれたようだ。
彼は嬉しくなった。
それからは食事をしながら会話を続けたのである。
しばらく食事を楽しんだ後、ダンジョンの話に戻ることにしたのである。
「ねぇ、おじさん」
「なんだ?」
ユキが話しかけてきた。
哲人は聞き返す。
「おじさんって、どんなスキルを持っているの?」
「まあ鑑定やら探知やら、いろいろさ」
「ふぅ~ん…」
とユキは言った。
どうやら納得していないようだ。
レベル40ならそれ以上のスキルを持っていて当然、そう考えているのだろう。
しかしこれ以上話すことはないだろう。
「…あまり話したくないんだよ」
深みを持つ言葉でごまかすことにした。
実際、鑑定も探知もレアスキルではないからだ。
それに今はまだ自分の能力を他人に打ち明けるつもりはないのだ。
これは彼だけの秘密なのだから…
そんなことを考えている時だった。
「ねえおじさん」
「なんだ?」
「ウチらと組まない?」
なで子が提案してきたのである。
どうやら三人でパーティーを組んでダンジョンを探索しないかという提案だ。
確かに、人数が増えれば効率よくダンジョン攻略ができそうではある。
しかし哲人としては複雑な気持ちだった。
誰かと組むことなど考えもしなかったからだ。
「どうかな、おじさん」
だがその前に一つ確認しておきたいことがある。
それはユキのことだった。
彼女はどう思っているのだろうか。
それを聞くために質問したのである。
すると、意外な答えが返ってきたのだ。
「いいよ」
ユキはあっさりと承諾した。
どうやら彼女も賛成らしい。
しかし、本当に良いのだろうか。
彼は少し不安になった。
すると彼女は言う。
「だっておじさん、『レベル40』でしょ?」
と、ユキは言ったのだ。
確かにレベル40の彼なら2人を守ることはできる。
だが、それはあくまでステータス上の話である。
実際にダンジョンで戦ってみないと分からないことだってある。
「ぶっちゃけさ、おじさん。レベルとステータスは高いけど、小回りが利かないみたいだよね」
「うっ…」
痛いところを突いてくるな、このなで子という少女は。
確かに彼は、ダンジョンに潜っても大した活躍はできていない。
だがそれは仕方ないことなのだ。
彼には戦闘経験が足りないのだから。
「ウチらにはレベルが足りない。おじさんは小回りが利かない」
「た、確かに…」
「互いに足りないモノを補える、いい関係になれると思うんだよね」
と、なで子。
なるほど、そういう考えもあるのか…
確かに彼女の言う通りかもしれない。
若い子の考えは合理的で素晴らしいものだな。
「どうかな?悪くはないと思うけど」
と、なで子は聞いてきた。
正直言って迷っている部分もある。
確かに悪くない話だと思う。
断る理由もない。
答えはもう決まっていた。
「わかった。よろしく頼むよ」
なで子は嬉しそうな顔をした。
するとユキも…
「私もいいよ」
そう言ったのだ。
そして彼女は続けて言った。
「よろしくね、レベル40のおじさん」
「あんまりおじさん連呼するなよ」
「ありがとう!これからよろしくね!」
こうして三人はパーティーを組むことになったのだった。
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