表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第二章 屋根裏ダンジョン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/34

第三十三話 天地反転ダンジョンで戦ってみた

 

 ある日、なで子から連絡がきた。

 珍しいダンジョンが出現したから行ってみないか?とのことだった。

 配信とは関係なく、純粋に興味があるのだという。


「ちょうど素材も欲しかったところだしな」


 屋根裏ダンジョンで使用する素材が足りなかったところだ。

 これはありがたい、素材調達ついでにダンジョンを攻略しよう。

 そう考え、なで子たちとともにダンジョンへ行くことにした。



 数日後、なで子、ユキと合流しその新しく出現したダンジョンへと向かう。

 そのダンジョンは、商業施設跡地に出現したと報告されていた。


「潰れたショッピングセンター跡ね」


「あ、ここ潰れてたのか!」


「世良木さん来たことあるの?」


「小学生のころ何度か…」


「…たぶんウチら生まれてないね、ユキ」


「うん」


 潰れた商業施設跡に出現したダンジョン。

 どうやらダンジョン内がかなり特殊な構造になっているらしい。

 準備を整え、ダンジョンへと入る。

 しかし入口をくぐった瞬間、三人は同時に足を止めた。


「…え?」


 なで子が天井を見上げる。

 妙な違和感を感じる。


「…上下、逆じゃない?」


 床だと思って踏み込んだ場所は、実際には天井だった。

 天井に貼りついたまま、三人は歩いている。

 視界の下側には、もう一つの道が広がっていた。

 上下が反転しているのだ。

 いや、違う。


「空間が折れてるんだ…」


 ユキが静かに言う。

 フロアは巨大な筒状構造。

 内壁全体が床と天井を兼ねており、重力が内側へ向いている。


「これ、あっちに向かって飛んだらどうなるんだろう」


「多分、反対側に着地するだけだと思う」


 哲人は短く答えた。

 視線はすでに素材になりそうなものを探している。

 内壁に生えた結晶。

 金属質の蔓。

 いろいろと使えそうだ。


「今日は探索寄りでいこう」


「え、珍しくない?」


 なで子が笑う。

 素材集めもあるが、このダンジョンの構造がとても気になる。

 どこが最深部なのか。

 環境は?

 どんな魔物が出現する?


「確かに気になる」


 ユキも哲人に同意した。

 なで子も笑いながらうなずいた。

 それとともに、彼女は小さなカメラのようなものをとり出した。

 ダンジョン内でも使える特殊なカメラらしい。


「写真撮って雑談配信のネタにする!」


 そう言いながら、三人は進み始めた。

 歩き出すと、壁面がゆっくりと回転し始めた。

 鈍い音があたりに響き渡る。


「うわ、動いた!」


 床が傾く。

 重力の向きが微妙にずれる。

 回転のたびに、景色が変わる。

 さっきまで足元にあった道が頭上へ。

 石柱が今度は天井からぶら下がる。


「あ、結晶体」


 ユキが指さす。

 重力反転の影響を受けず、空中に固定された青い鉱石。

 哲人は軽く跳躍し、雷をまとわせた刃で切り取る。

 手の中に残ったのは、

 通常の魔石よりも軽く、内部に渦を巻く魔力が見える結晶。


「(これは当たりだな)」


 屋根裏ダンジョンの環境変化素材として使えそうだ。


「中で渦を巻いてる…珍しい…」


 なで子が不思議そうに言う。

 カメラで写真を撮りながらつぶやく。

 と、その時だった。

 鼓動のような振動がダンジョン内の空気を揺らす。

 空間が再び反転する。

 今度は完全に上下が入れ替わった。


「来るよ!」


 ユキが叫ぶ。

 壁の隙間から、細長い魔物が這い出る。

 体は半透明。

 内部に小さな光点が見える。

 重力を無視して跳ね回る不気味な魔物だ。

 鑑定を使うまでもない、低級の魔物だ。


「スライム…とはちょっと違うか」


 哲人は冷静に構える。

 なで子の風が渦を巻き、魔物の軌道を乱す。

 哲人は最小限の雷撃で核だけを焼き切った。

 派手さはない。

 だが、効率はいい。

 倒れた魔物は、砕ける代わりに魔石を残した。


「これも素材になるな」


「今日、やたら拾うね。最近、探索スタイル変わった?」


「まあ、少しね」


 哲人はそれ以上説明しない。

 屋根裏ダンジョンをもっと良くするため。

 自分たちの安全を底上げするため。

 だがそれはまだ言う必要のないこと。

 確定していない未来の話だ。

 回転する回廊の奥。

 さらに濃い魔力の反応がある。


「奥、行く?」


 ユキが問う。

 哲人となで子は頷いた。

 逆さまの回廊は、奥へ進むほど静かになっていった。

 いや、静かというよりは音の方向が曖昧になるといったほうが正しいか。


「あたまおかしなるで」


 なで子が小さく呟く

 足音は上から響き、呼吸音は背後から聞こえる。

 回廊は巨大な筒状構造のまま、緩やかにねじれている。

 重力は一定ではない。

 十歩進むごとに、わずかに傾く。

 足裏に伝わる感覚が、じわりと変わる。


「三半規管、狂いそう…」


 なで子が笑うが、声は少し緊張している。

 まるで、見えない球体の表面を歩いているような感覚。

 空間そのものが生きている感じがする。


 そして…


 ダンジョンの最奥部と思われる場所にたどり着いた。

 巨大な円形広間。

 内壁全体が鏡のように滑らかな金属質。

 中央に浮かぶ王座のようなもの。

 そこに座していたのは…


 --------------------


 鏡の長老

 Lv:48

 スキル:鏡面5、反射4、空間把握5


 --------------------


 哲人の鑑定のスキルで敵のステータスを見る。

 体長は三メートルほど。

 人型だが上下が曖昧だ。

 頭部が二つあるように見える。

 上にも下にも王冠のような装飾が見える。

 背後には、半透明の重力輪が回転している。


「…長老様、か」


 哲人は呟く。

 その瞬間、重力が反転した。

 視界がひっくり返る。


「っ!」


 三人の体が部屋の中央へ引き寄せられる。

 だが中央には足場がない。


「ユキ!」


「補助展開!」


 ユキの補助魔法が展開され、三人の落下速度が緩む。

 だが鏡の長老は動かない。

 王座に座ったまま、片手を上げる。

 回廊全体が回転する。

 床が壁に、壁が天井に。


「地形ごと戦うタイプか…!」


 哲人は空中で体勢を立て直す。

 このタイプの敵はレベル差があっても厄介だ。

 特定の環境下では『最強』に近い魔物もいるという。

 戦いを長引かせるのはマズい。


「なで子、風で軌道制御!」


「了解!」


 風が三人の体を押し戻す。

 壁面に無理やり着地した瞬間、再び重力が反転。

 だが今度は予測している。

 哲人は跳躍と同時に雷をまとわせる。

 鏡の長老は、王座ごと滑るように移動した。

 背中の重力輪が高速回転する。

 次の瞬間、床そのものが槍のように突き出した。


「地形攻撃!?」


「させない」


 ユキが即座に拘束魔法を放つ。

 重力輪の回転が一瞬鈍る。


「今だ!」


 哲人は一直線に加速。

 派手さはない。

 だが、最短距離。

 刃が長老の胸部を掠める。


「核、中央じゃない!」


「重力輪が本体かも!」


 なで子が叫ぶ。

 鏡の長老は初めて立ち上がる。

 広間全体が、完全反転。

 今度は、あらゆる方向が下になる。

 中心へ、中心へ。

 三人も、瓦礫も部屋の中央へ吸い込まれる。

 このままだと押しつぶされてしまう。

 まるで宇宙のブラックホールのよう。


「…なら!」


 哲人は雷を一点集中。

 長老の重力輪を狙う。


「そこだ!」


 刃が触れた瞬間、重力輪が砕ける。

 吸引が止まり、空間が静止。

 鏡の長老は、その場に崩れ落ちた。

 上下二つの冠が静かに砕ける。


「うわッ!」


 それと同時に、吸い込まれていた瓦礫がその場に落ちた。

 鏡の長老の制御から解放されたのだ。


「…これ」


 ユキが息を呑む。

 空間制御系のコアユニット。

 非常に貴重な素材だ。

 哲人はそれを手に取る。

 そのほかの素材、魔石や長老の部位素材もたくさん回収できた。


「今日は当たり日だね」


 なで子が大きな皮袋に素材を詰め込みながら笑う。

 雑談配信のネタもできた。

 素材も入手できた。

 思わぬ成果に喜びを隠せない。


「変なダンジョンだったけど、面白かったし」


「うん」


 ユキも頷く。

 彼女は純粋にこのダンジョンが楽しかったのだろう。

 哲人は結晶を収納し、広間を見渡す。

 回廊の回転は止まり重力は安定している。


「よし、帰ろう」


 三人は再びダンジョンを歩き始める。

 今度は正しい上下を感じながら。

 哲人の手の中で、円環の結晶が静かに回転していた。



この小説が気になった方は☆☆☆☆☆で応援していただけるとありがたいです。

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります!

コメントなんかもいただけるととても嬉しいです!

今後ともよろしくお願いします。

皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ