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屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第一章 ダンジョン配信編

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第二十八話 必殺技を放ってみた

 低く唸り声を上げながら後退したグランドドラゴン。

 都市の中央広場が、重い緊張感に包まれる。

 先ほどまで無敵に見えていた巨竜が、確かに怯んだ。

 その事実が、全員の表情を変えていた。


「…今の、効いたよな」


 三条会の双剣使いが半ば確信を込めて言う。

 あのドラゴンは決して無敵の存在ではない。


「ああ。腹部、鱗の継ぎ目に雷が回った」


 哲人は冷静に答えた。

 完全なダメージではない。

 だが、通る攻撃があると分かったのは大きい。

 哲人は周囲を見回し、はっきりと声を出した。


「あいつを引きつけてほしい、最適な状況でこいつを放ちたい」


 剣に溜められた雷魔法。

 そしてなで子の浮遊させた瓦礫。

 それらに視線を移しながら哲人が言った。

 一瞬の沈黙。


「…いいだろう」


 アイアン・フォートレスのリーダーが盾を構え直す。


「俺たちが正面を引き受ける。耐久には自信がある」


 自然と、共闘体制が再構築されていく。

 言葉は少ないが、ここまで残った者同士の理解は早い。


「ユキ、サポートをしてほしい」


 哲人は振り返りながら言った。

 威力はともかく、連射が効くのはユキのクロスボウだ。


「…分かった」


 ユキは緊張した面持ちで頷き、クロスボウを握り直す。

 その時、グランドドラゴンが、ゆっくりと首を上げた。

 それが意味するものは…


「…まずい」


 なで子が小さく呟く。

 竜の喉奥に、赤茶色の光が集まっていく。

 熱ではない、体内の魔力が凝縮されている。


「ブレスじゃない…!」


「来るわ、範囲攻撃!」


 次の瞬間、グランドドラゴンが咆哮した。


『グオォォォォォッ!!』


 衝撃とともに、広場の周囲が吹き飛んだ。

 暴風のような衝撃が周囲を襲う。

 地面が砕け、岩の柱が無数に突き出す。

 逃げ遅れた参加者が吹き飛ばされ、悲鳴が上がった。


「被害が…!」


「でも、致命傷は少ない!」


 都市の構造が、衝撃を分散している。

 哲人はアイアン・フォートレスのリーダーの盾で攻撃を免れた。


「大丈夫か、まだやれそうかい?仮面の兄ちゃん」


「あ、ああ。ありがとう」


「よし、がんばれよ」


 リーダーはそう言って他の者の救出へ向かった。

 哲人は、雷魔法を溜めながら思う。


「(ドラゴンは地形を壊しながら戦う気だ)」


 壊れれば壊れるほど、瓦礫は増える。

 それは、こちらにとっても武器になる。

 哲人は叫ぶ。


「なで子!」


「次はもっと広く浮かせよう」


「え?」


「都市そのものを、使う!」


 なで子は一瞬だけ目を見開く。

 しかしすぐに、覚悟を決めた顔で頷いた。


「…分かった」


「一回きりよ。失敗したら魔力が空になる」


 スタチューバスターズのサツバツとアイアン・フォートレスのヒーラー。

 そして三条会のメンバーたち。

 彼らが魔力を貸してくれたが、失敗したらそれもなくなってしまう。

 グランドドラゴンが、再び前脚を踏み出す。

 都市そのものが軋む。

 しかし決着への布石は確実に整いつつあった。

 グランドドラゴンが再び前進する。

 瓦礫を踏み砕き、都市そのものを破壊しながら迫る巨体。

 だが、それは同時に『材料』を増やしているということでもあった。


「今よ…!」


 なで子が杖を強く握り魔力を込める。

 これまで使ったことがないほどの魔力をもらったのだ。

 その威力は通常時の十倍以上

 魔力が解き放たれた瞬間、このエリアに衝撃が走る。

 崩れた壁、折れた鉄骨、砕けた瓦礫の山。

 それらが一斉に浮き上がる。


「うわ…!」


 ユキが思わず声を上げる。


 それはもはや、単なる浮遊ではなかった。

 暴風が廃墟の残骸を巻き込んでいく。


「風魔法…ここまで…!」


 アイアンフォートレスのリーダーも驚きを隠せない。

 なで子の額には汗が滲み、歯を食いしばっていた。


「…長くは、もたないわ!早く決めて!」


「了解!」


 哲人は前に出た。

 剣を両手で構え、体内の魔力を一気に引き上げる。

 雷魔法はこれまで補助的にしか使ってこなかった。

 だが、今は違う。


「…来い」


 剣身に魔力が宿る。

 空気が震える。

 周囲の瓦礫も。


「全員、距離を取れ!!」


 三条会のリーダーの叫びと同時に、参加者たちは一斉に後退する。

 グランドドラゴンが異変に気づく。

 咆哮を上げ、突進を繰り出す。


『グオォォォッ!!』


「今だ!!」


 哲人は剣を振り下ろした。

 雷はドラゴンに対して放たれたのではない。

 空中に浮かぶ瓦礫群へと放たれた。

 次の瞬間、風に乗った瓦礫を伝導体として帯電。

 巨大な雷の塊となって、グランドドラゴンへ降り注いだ。


『ガアアアアアァァァァッッ!』


 ドラゴンの全身を雷と衝撃が包み込む。

 鱗が砕け、皮膚が雷によって切り裂かれる。

 そして巨体が大きくよろめいた。


「…まだ!」


 なで子が叫ぶ。

 風魔法の最後の一撃。

 浮遊させていた瓦礫をすべてドラゴンに叩き込む。

 雷を帯びた廃墟の残骸が、勢いよくドラゴンへ突き刺さる。

 轟音と閃光に包まれる。

 そして…


『…グ…ォ…』


 グランドドラゴンは、ゆっくりとその場に倒れる。

 最後に大地を震わせ、巨体が崩れ落ちた。

 しばしの沈黙、静寂。

 数秒後、竜の身体が魔力の粒子となって、空へと消えていった。


「…やった?」


 ユキが、震える声で言う。


「ええ」


 なで子は杖を支えに、深く息を吐いた。


「完全討伐…よ」


 歓声はない。

 ただ、静かな達成感だけが残った。

 他のパーティも互いに視線を交わし、無言で健闘を称えあう。


「…見事だった」


 三条会のリーダーが哲人に言った。

 この戦いで適切な指令を出し、なで子にも魔力を渡していた彼。

 レベルこそ哲人より低いが、おそらく総合的な実力ならば今いるメンバーの中でも最強だろう。


「このエリアそのものを武器にするとはな」


「皆のおかげだよ」


「…終わったんだね」


 ユキが小さく笑った。


「ええ。叢雲ダンジョン、完全踏破」


 なで子は静かに言った。

 この崩壊した都市エリアは、もう何も語らない。

 だが確かに、彼らの戦いの痕跡がここには刻まれていた…

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