第二十七話 最終決戦してみた
アイアン・フォートレス、三条会、スタチューバスターズ。
そして哲人たちのパーティ。
瓦礫の広場に、重苦しい沈黙が落ちた。
「…来る」
なで子が、はっきりと言った
広場の中央、亀裂が走り、
その奥から巨大な影がせり上がってくる。
ビル一棟分はあろうかという巨体。
崩壊した都市そのものを纏うような姿。
地面の亀裂から姿を現したそれは、誰もが一目で理解できる存在だった。
「…ドラゴン」
なで子が、息を呑んだ声で呟く。
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グランドドラゴン
Lv:???
スキル:超耐久8、咆哮6、踏砕6、岩鱗7…
備考:翼は存在するが飛行能力なし
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全長は二十メートルを超える。
巨大な四肢で瓦礫を踏み砕きながら、都市の中心に鎮座するその姿。
それは、まさに『災害』だった。
背中には都市の破片の残骸が張り付き、鱗は都市そのものと見紛う色をしている。
折りたたまれた翼はあるが、飛ぶ気配はない。
「飛ばないの…?」
「ええ。地上戦特化の竜よ」
ユキが小さく言った。
なで子は視線を逸らさず、静かに答える。
「その代わり、能力が桁違い」
まるでその言葉を肯定するかのように、
グランドドラゴンが前脚を地面に叩きつけた。
衝撃波が広場全体に走り、瓦礫が跳ね上がる。
「全員、距離を取れ!」
三条会のリーダーが怒鳴る。
参加者たちは一斉に散開し、崩れかけた建物や瓦礫を遮蔽物に取る。
「共闘?」
「基本は各自判断ね」
ユキが問いかけになで子は答えた。
しかしドラゴン相手では連携しないと持たない。
哲人は剣を強く握りしめる。
「(…レベル、測れない)」
表示が伏せられている。
それはつまり、今の哲人の鑑定のスキルが効いていない。
哲人よりレベルが高いということ。
今の彼のレベルは95。
だが、放たれる魔力の圧だけで分かる。
「(レベル100を超えている…)」
初めて自身よりレベルが高い敵と対峙する。
恐怖もあるが、なぜか興奮もあった。
皆に感化され、どうやら哲人は生粋の冒険者になってしまったらしい。
グランドドラゴンは、低く唸り声を上げた。
そして次の瞬間…
「来る!大地咆哮!」
なで子が叫ぶ。
グランドドラゴンの叫び声が衝撃波となる。
複数の参加者が吹き飛ばされ、建物の壁に叩きつけられた。
一部は受け身をとるものもいたが、ほとんどは対応できなかったらしい。
「くっ…!」
哲人は踏ん張り、衝撃を殺す。
ユキとなで子をかばいながら。
二人のレベルは25程度、真正面から戦うと確実に瞬殺される。
もちろん、二人もそれを理解している。
「ユキ、無理に近づいちゃだめ!」
「わ、分かってる…!」
ユキは瓦礫の陰からクロスボウを構え、隙を探る。
別のパーティが前脚に集中攻撃を仕掛けるが、岩のような鱗に弾かれている。
ほとんど効果がないようたぶ。
「硬すぎる…!」
「脚も胴もダメだ!」
アイアン・フォートレスのメンバー二人が叫ぶ。
グランドドラゴンは、ゆっくりと首を持ち上げた。
赤褐色の瞳が、広場全体を睥睨する。
「…狙いを変えないと」
なで子が歯を食いしばる。
哲人は、折りたたまれた翼に目を向けた。
「(飛ばない竜。でも、翼は弱点になり得る…のか…?」)
その時、グランドドラゴンが大きく息を吸い込んだ。
地面が再び震える。
先ほどの攻撃…
『大地咆哮』が来るのか…?
いや、違う。
「まずい、動き出したぞ…!」
『スタチューバスターズ』のサツバツが叫ぶ。
グランドドラゴンの巨体がゆっくりと前進する。
巨大な影が広場の一角へと迫ってくる。
一歩踏み出すたび、崩壊都市の地面にひびが入る。
地鳴りとともに地面が揺れ、残骸が崩れ落ちる。
「来るぞ、散開!」
アイアン・フォートレスの盾役の号令で、参加者たちは再び距離を取る。
次の瞬間、ドラゴンの前脚が地面を踏み砕き、衝撃波が放射状に広がった。
「うわっ…!」
数人が吹き飛ばされるが、致命傷には至らない。
皆、必死に体勢を立て直す。
「…火力が足りない」
なで子が歯噛みする。
「でも、確実に動きは遅い」
哲人は冷静に観察を続けていた。
グランドドラゴンは強力だが鈍い。
素早さはないし旋回能力も低い。
都市という複雑な地形は、完全に敵の味方ではない。
「ユキ、狙撃してみてどうだ?」
「鱗は無理…でも」
ユキはクロスボウを下ろし、首を振る。
「目と口の中は柔らかいと思うけど…」
哲人は軽く頷いた。
だが、そこへ近づくのは自殺行為だ。
「おい、あんた!」
スタチューバスターズのタゴサクが叫ぶ。
憧れの配信者に話しかけられ、思わずうれしくなる哲人。
しかし今はそんなこと言っている場合ではない。
何とか『謎の男セラート』としてのキャラを貫く。
「その剣、雷を纏ってたな!」
「…ああ」
「地面を伝わせられないか?」
その言葉に、哲人の思考が一気に繋がった。
グランドドラゴンは地上適応型。
常に大地と接触している。
「なで子!まずは…」
哲人は即座に声を上げた。
彼女に作戦を伝える。
なで子は一瞬考え、頷いた。
「わかった、瓦礫を浮かせる程度なら可能よ」
「それで十分だ」
哲人は広場中央に目を移す。
ドラゴンの足元には様々なものが散乱している。
崩壊した建物の残骸、鉄骨、石材…
「誰でもいい、ドラゴンを引きつけてくれ!」
「正気か!?」
「数秒でいい!」
アイアン・フォートレスのリーダーと三条会の双剣使いが一瞬迷いを見せる。
しかし、突破口がないのも事実。
歯を食いしばり、覚悟を決めた。
「…やってやる!」
アイアン・フォートレスと三条会のパーティが前へ出る。
攻撃がぶつかり、ドラゴンの注意がそちらへ向く。
その隙を見逃さなかった。
「なで子、瓦礫を浮かせて!」
なで子は杖を構え、魔力を解放する。
ドラゴンの足元の瓦礫が少し浮いた。
完全な浮遊ではない。
「やば、思ったより量が多い…!」
なで子の魔力の絶対数が少なすぎる。
鉄骨や大岩を持ち上げられない。
浮遊していた瓦礫や残骸は、すぐその場に落下してしまった。
しかし失敗するわけにはいかない。
と、その時…
「魔力足りないのか?」
「あたしの分も貸すよ」
スタチューバスターズのサツバツとアイアン・フォートレスのヒーラー。
二人が魔力を貸してくれた。
何をするかはわからない。
しかし、今の『セラート』とその仲間には魔力を与えるだけの価値がある。
そう判断したのだ。
「ありがとうございます!」
「たぶんこの中で一番レベルが高いのはあいつだ」
「…何するかはわからないけどね」
一方、哲人は剣を構え雷魔法を最大まで込める。
剣が眩い光を放ち、空気が震える。
レベル95の雷魔法だ。
その威力は並の物ではない。
「(これなら…)」
雷は地面をまともに伝わらない。
だが、宙に浮いた瓦礫を媒介にすれば…
「まだ倒せない…でも!」
剣に溜めた雷魔法。
溜めきれない余暇魔力が空中に放たれている。
その一部がドラゴンに当たった。
『ギィ…ッ!?』
ドラゴンが、初めて明確な苦悶の声を上げた。
「効いた…!」
「今の、効いたぞ!」
参加者たちがざわめく。
グランドドラゴンはゆっくりと地面を踏み鳴らし、後退した。
完全なダメージではない。
だが、突破口が見えた。
「…いける」
なで子が、息を荒くしながら言った。
「同じ手を、もっと大規模に使えば…」
「決め手になる」
哲人は剣を握り直す。
崩壊した都市、瓦礫、そして雷。
条件は、すべて揃っている。
最終ボス攻略の糸口は確かに見えた。
だが、勝負はこれからだ。
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