表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第一章 ダンジョン配信編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/34

第二十六話 最深部に到着してみた

『第五関門:廃都市エリア』と書かれた看板。

 哲人たちその前にいた。

 ここが最後のエリアらしい。

 今までのエリアに比べてもかなり難易度が高いようだ。


「…ここが最後のエリアか」


「まさかここまで来れるなんて…思わなかった」


 なで子がそう言った。

 大会に参加してそこそこの成績を出して配信の宣伝になればいい。

 その程度に気軽に考えていた。

 いくら哲人がいるとはいえ、最後のエリアまで来れるとは考えてもいなかったのだ。


「感慨深いね」


 一方、ユキは違った。

 このパーティなら、このダンジョンを突破できる。

 その確信があった。


「…行こう」


 哲人の言葉に頷く二人。

 ここまで来るのにもかなり苦労してきた。

 妨害もあった。

 なんとか無事にここまで辿り着くことができた。

 だが最後の関門でリタイアになっては元も子もない。

 気を引き締めていく。


「それにしても、廃都市っていうだけあってすごい光景だな」


 哲人が思わず呟いた。

 目の前に広がる光景はまさに廃墟といった感じだ。

 ボロボロの建物が立ち並び、人の気配は全く感じられない。


「以前、テトラとコラボした時のダンジョンに似てる」


「難易度は全然違うけどね」


 以前コラボ配信をした『結晶戦姫テトラ』とともに攻略した『県庁所在地の街中ダンジョン』を思い出すユキ。

 確かに雰囲気は似ている。

 だが難易度は明らかにこちらのほうが上だ。

 倒壊した高層ビルにひび割れた舗装道路。

 折れ曲がった街灯や、半分だけ原形を保った看板。


「…静かだな」


 警戒は怠らない。

 しかし、ここで立ち止まっているわけにもいかない。

 三人は覚悟を決めるとゆっくりと前に進み始める。

 空は常に薄曇りで、どこからともなく灰色の塵が舞っている。


「すごい、さっきの鉱山や水路とは全然違うね…」


 ユキが思わず声を漏らす。

 遮蔽物が多く、視界が悪い。

 非常に戦いづらそうだ。

 なで子は周囲を見渡しながら言った。


「文明の終わりって感じね。趣味が悪い…」


 歩くたび、靴底でガラス片が軋む音がする。

 遠くでは、崩れた建物の間を風が吹き抜けている。

 低いうなり声のような音を立てていた。

 あの風はどこからきているのだろうか…


「…あ」


 ユキが前方を指さす。


 そこには、人影があった。

 一人、二人ではない。

 瓦礫の街路を進む、別の参加者たち。


「他のチームも、もう来てるんだ」


「強豪ばかりね」


 なで子は、すぐに何人かを見分けた。

 商会所属のチーム『三条会』だ。

 プロ重装戦士。

 有名配信者として知られる双剣使い。

 後衛に高位魔法使いを従えた、完成度の高いパーティだ。

 どの顔にも、焦りはない。

 ここまで辿り着いた者たちだけが持つ、静かな自信。


「さっきの黒崎とは全然違うな」


 哲人が呟く。

 実際、参加者同士は互いを警戒しつつも一定の距離を保って進んでいる。

 視線が交わることはあっても、武器が向けられることはない。

 こちらが何か妙なことをすれば、即座に制圧してくるかもしれない。

 しかし、逆に言えばそれ以外では敵意など絶対に向けてこないということ。


「ここまで来た連中は、全員わかってるのよ」


 なで子は静かに続ける。

 哲人は、崩れた市庁舎らしき建物を見上げた。

 中央広場。

 そこに向かって、複数のルートが伸びている。


「…最終ボス、か」


「ええ。おそらく、あの先」


 重い沈黙が落ちる。

 その時、別のパーティの一人が哲人たちに軽く手を挙げた。

 口元は笑っていた。

 気楽にいこう、という敵意のない無言の挨拶。


「…行こう」


 哲人は応じるように小さく頷いた。

 崩壊した都市の奥で、何かが待っている。

 それを、全員が理解していた。


「うん」


 ユキが呟き、なで子は黙って頷く。

 崩壊都市の中心へ向かう道は、いくつもに分岐していた。

 だが不思議なことに、進むにつれて参加者たちは自然と同じ方向へ集まっていく。


「…やっぱり、残ってるのは精鋭ばかりね」


 なで子が小さく呟く。

 視界に映るのは、明らかに場慣れしたパーティばかりだった。

 重装備に身を包んだ三人組チームの『アイアン・フォートレス』。

 盾役二名と後衛ヒーラーという、安定性重視の構成だ。


「あれは…!」


 哲人が見つけたのは有名配信者の『スタチューバスターズ』だった。

 哲人はこのコンビが結構気に入っており、よくチェックしていたりする。

 コンビのチームで、巨大な盾を持った大男と大弓使いの男だ。

 名前は『タゴサク』、彼は大きな盾を振り回しながらモンスターを倒していくスタイルだ。

 そしてもう一人の方は、細身の男性。

 彼の名は『サツバツ』、主に弓を使って戦っている。

 二人とも年齢は三十歳を超えているベテラン探索者だ。


「…みんな、空気が違う」


 ユキがそう言うのも無理はない。

 誰も無駄口を叩かず、しかし互いの存在を強く意識している。

 そんな中、瓦礫が崩れる音がした。


「来るわよ」


 なで子の声と同時に、廃墟の影から魔物が姿を現す。



 --------------------


 崩壊都市のレイダー

 Lv:20

 スキル:群体行動


 --------------------


 人型に近い影が、次々と這い出てくる。

 レベルは20、数も多い。

 哲人は一瞬、周囲を見渡した。

 ここで各個撃破を狙えば時間を食う。

 そこで…


「共闘、いいですか!」


 哲人が声を張り上げる。

 一瞬の間。

 だが次の瞬間、即座に返事が返ってきた。

 他のチームの者たちから。


「構わない!」


「後衛、援護する!」


「前、任せた!」


 言葉は最小限。

 だが、連携は完璧だった。

 哲人が前に出て、剣で群れを引きつける。

 なで子が広範囲魔法で動きを鈍らせ、ユキが的確に急所を射抜く。

 三条会のメンバーが側面から切り込み、アイアンフォートレスが盾で通路を塞ぐ。

 スタチューバスターズが殲滅速度を上げる。


「…これが、最終エリアか」


 哲人は思う。

 ここまで来た者同士だからこそ成立する、無言の信頼。

 大会優勝よりも攻略を重視している。

 数分で最後のレイダーが霧散し、街路に静寂が戻った。


「助かった」


「そっちもな」


 軽く頷き合うだけで、各パーティは再び距離を取る。

 馴れ合いはない。

 だが、敵意もない。


「…前方、広場だ」


 誰かがそう呟いた。

 崩壊した都市の中心。

 かつて人々が集っていたであろう巨大な広場。

 そこに何かがあった。

 ゆっくりと地面が揺れる。

 一瞬、瓦礫が浮き、落ちた。

 魔力が渦を巻いているのがわかる。


「…来る」


 なで子が、はっきりと言った

 広場の中央、亀裂が走り、

 その奥から巨大な影がせり上がってくる。

 ビル一棟分はあろうかという巨体。

 崩壊した都市そのものを纏うような姿。


 --------------------


 Lv:???

 最終ボス


 --------------------


 誰も、まだ動かない。

 息を呑み、全員がその姿を見上げていた。

 叢雲ダンジョンの最終試練がはじまる…

この小説が気になった方は☆☆☆☆☆で応援していただけるとありがたいです。

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします!

作者のモチベーションが上がります!

コメントなんかもいただけるととても嬉しいです!

今後ともよろしくお願いします

皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ