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屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜
第一章 ダンジョン配信編

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第二十五話 反撃?してみた

 次のエリアへの扉を前にして、その場の空気が張りつめる。

 黒崎のチームとなで子のチーム。

 二つのチームがにらみ合う。


「…通してもらう」


 哲人は剣を構えた、低く告げる。

 この黒崎のことは、以前ユキから聞いている。


「冗談だろ?、せっかく追いついたんだ。少しくらい話をしようぜ」


 そういう黒崎。

 しかし、彼が普通に話をする人物などではないということは彼女がよく知っている。


「(まずい…)」


 ここで戦えばどうなるか。

 哲人がいる以上、勝つこと自体は不可能ではない。

 だが…


「ダメ、セラート」


 なで子は小声で言った。

 ここで直接やり合ったら、大会規定に間違いなく引っかかる。

 最悪、両チーム失格もありえる。

 ユキも周囲を見回し、少し焦った様子を見せている。


「さっきの矢もグレーだけど、こっちが攻撃したらアウトだよね」


「…ああ」


 哲人は一瞬だけ黒崎を睨む。

 そして剣を下げる。

 戦いはしない。

 そして…


「走るぞ」


「逃げるのか?成功者様は慎重だなあ」


 黒崎の挑発。

 しかし哲人は答えない。

 あえて別の橋へと方向転換する。


「第四エリアの端に行く。出口は一つじゃない」


 なで子の指示に従い、三人は一気に走り出した。

 激しい水音が響く水路エリア。

 足場としておかれた橋を勢いよく駆け抜ける。

 黒崎は舌打ちし叫ぶ。


「ちッ…!追え!」


「え、もう相手にする必要なんか…」


「下手に手をだしたら失格に…」


「失格? 知るか。あいつらをこのまま行かせるかよ!」


「いいんですか、リーダー!?」


「多少グレーでも構わん!運営が見てなきゃ問題ねぇ!」


 黒崎はチームメンバーたちを怒鳴りつける。

 それを聞き、メンバーたちは迷いなく追走を開始した。

 水路の橋は狭く複雑だ。

 一歩踏み外せば水に落ち、戦闘不能になる可能性もある。


「速い…!」


「橋の先で分岐がある、右!」


 ユキが必死に足を動かす。

 なで子が叫ぶ。

 だが、背後から鋭い音がした。

 空気を裂く音、橋に矢が突き刺さる。


「くっ…!」


「警告のつもりだ」


 黒崎の声が水音の向こうから響く。

 彼の部下の弓使いが矢を放ったようだ。


「止まれ。なで子、変なことはしねえよ」


「信用できるわけないでしょ!」


「だったら次は足元を狙う」


 なで子は振り返らずに叫び返す。

 黒崎の声が、冷たく変わる。

 水路の流れが強くなった気がし。

 橋が揺れ、足場が悪くなっていく。


「(このままじゃ…)」


 哲人は歯を食いしばる。

 反撃すれば、失格の可能性。

 だが、このまま追われ続ければいつかは…


「(ジリ貧になる…)」


 そう考える哲人。

 戦うことができない以上、どうしてもジリ貧になる。

 失格覚悟で戦うか、いやそれはできない。

 そんな時、前方に見えてきたのは、崩れかけた橋。

 そして、細い岩場。


「なで子、この先は…!」


「分かってる、ここが、分かれ目よ」


 彼女の声は覚悟に満ちていた。

 追う者と、逃げる者。

 水路エリアは、完全に狩り場へと変わりつつあった。

 しかし…


「はぁ…はぁ…!」


 荒い息を吐きながら、ユキが必死に走る。

 一番体力が低い彼女にとっては厳しいかもしれない。

 ただでさえ初めて参加する大会なのだ。

 そんな状況で襲われ、逃げる羽目になってしまうとは…


「この先、行き止まりだよ!」


 ユキが叫ぶ。

 前方にあるのは一本の橋。

 だが、その橋は崩れている。

 対岸につながっていない。

 しかしその先は小さな岩場。

 そして、その奥に次のエリアへ続く扉が微かに見えていた。


「追いつくぞ!」


 黒崎たちの声が、すぐ背後まで迫っている。

 矢が飛び、橋の石が砕け散った。


「…もう限界だ」


 哲人は走りながら、後ろを見返した。

 黒崎たちの距離は、あと十数メートル。

 このままでは扉に辿り着く前に捕まる。


「(戦えば失格、だけど…)」


 哲人の視線が、橋の支柱へと向く。


「…なで子、ユキ」


 哲人が言った。

 低く、しかしはっきりと告げる。


「俺が足止めする、合図したら全力で走れ」


「まさか…」


「大丈夫だ。ルールは破らない」


 哲人は立ち止まり、剣を構えた。

 黒崎がそれを見て、勝ち誇ったように笑う。


「ようやく覚悟決めたか?、今さら戦っても…」


 その言葉を遮るように、哲人は剣を振り下ろした。

 しかし、その狙いは黒崎たちではない。

 橋の基部だ!


「なッ…!?」


 剣に雷魔法を込める哲人。

 それにより威力は倍加。

 攻撃能力の上場した一撃が、石造りの支柱を正確に砕いた。

 橋全体が悲鳴を上げるように軋む。

 そして次の瞬間、崩落した。


「うおっ!?」


「落ちる!」


 黒崎たちの足場が一斉に崩れた。

 水路へと吸い込まれるように、数人の体が落下する。

 激しい水しぶきとともに、流れに飲み込まれていった。


「くそっ…!なで子…セラートぉッ…!」


 黒崎の怒号が響くが、すでに橋は完全に断たれた。

 哲人はすぐさまなで子たちの元に戻る。

 黒崎たちが戻ってこないとも限らない。


「今だ、行くぞ!」


「う、うん!」


 三人は最後の力を振り絞り、橋を駆け抜ける。

 崩落し、崩れ落ちた橋。

 しかし…


「跳んで!」


 なで子が叫ぶ。

 対岸までは十メートルはある。

 とても跳べる距離ではない。

 しかし…


「わかった!」


「うん!」


 哲人とユキがそう返事をした。

 なで子が何の考えもなしにそんなことを言うわけがない。

 崩れた橋から勢いよく跳ぶ三人。

 そして…


「風の魔法、『ウィンドウェーブ』」


 強風を発生させる魔法。

 それを使い、三人を対岸へと跳ばすことに成功した。

 一方、背後では黒崎たちが水路から這い上がろうとしている。

 だが、流れが強くすぐには戻れない。


「追手は、しばらく来られないよ」


「直接攻撃じゃない、地形破壊ね…」


 なで子が息を切らしながら呟く。

 たまたま攻撃が橋にあたってしまった。

 ただそれだけだ。


「完全に、ルールの範囲内ね」


「ギリギリだけどな…」


 哲人は苦笑する。

 そして三人は、次のエリアへと続く扉に飛び込んだ。

 水路エリアの喧騒が遠ざかっていく。

 そして、次の瞬間。

 三人の足元に硬い地面の感触が戻った。

 固い地面だった。


「…ここが」


「第五エリア…」


 そこに広がっていたのは、これまでとはまったく異なる空間だった。

 広がる静寂。

 重く張りつめた魔力。

 ここは叢雲ダンジョンの最終エリア。

 哲人は一度、深く息を吸った。


「ここからが、本当の正念場だな」


 三人は視線を交わし、黙って前を向いた。

 目の前に広がる最終エリアに視線を移した…

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