第二十一話 ダンジョンの競技大会に参加してみた
叢雲ダンジョン。
関東地方に位置する五大ダンジョンの一つだ。
五大ダンジョンは『叢雲』を始めとした五つ
『炎龍』、『氷雪』、『水霊』、『風来坊』のダンジョンを合わせた呼称だ。
叢雲は初心者向けで比較的難易度が低く、モンスターも弱いものが多い。
『初心者用ダンジョン』とも言われている。
そんなダンジョンで開かれる大会に参加することになった哲人。
「ここが叢雲ダンジョンか…」
大会当日、哲人はなで子とユキと共にダンジョン前にいた。
会場は叢雲ダンジョンの入口近くにある広場になっているようだ。
周囲には多くの参加者や観客たちが集まっている。
「すごい人数…」
ユキの言葉に哲人も同意するように頷く。
叢雲ダンジョンの周辺には大勢の人々が集まっていた。
皆それぞれ装備を整えており、やる気に満ち溢れているようだった。
そんな彼らを見て、哲人は思わず息を飲む。
「大会のルール、読んでくれましたか?」
「ああ、もちろん」
以前から気になっていた大会の仕様。
それはゴールとなる地点までの到着時間やマナー、倒した魔物の数。
それらを総合的に見て審査員が優勝者を判定で決めるというもの。
既存の競技の中では、登山競技のイメージに近いのかもしれない。
「それに、レベルも上げてきたしな」
大会に参加するため、哲人はレベルを上げた。
ダンジョンでのモンスター討伐などで少しづつ上げてきたのだが、やはり例の黄金のスライムでのレベリングが最も効率的だった。
ステータス画面を確認する哲人を見てなで子が言う。
「ウチとユキちゃんも上げてきましたよ」
「私は22、なで子ちゃんは21」
「セラートさんに比べるとちょっと低いかな、ははは…」
ユキの言葉に対し、なで子が乾いた笑いを浮かべながら言った。
彼女のレベルは21らしい。
とはいえ、二人とも普通のダンジョン攻略者としてはなかなか高いほうだ。
凄いなと思いつつ哲人も自分のステータスを確認してみることにする。
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名前:世良木哲人
レベル:95
スキル:鑑定3、地図3、自動マッピング、身体強化3、探知2
料理2、剣術2、格闘術1、魔眼2、回復魔法3、雷魔法1…
水の恩恵、達人の妙技、水中機雷設置、偽りの交渉…
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「これなら大丈夫そうだ」
ステータスを確認し終えた哲人は頷く。
ふと、人ごみに目を向ける。
何か嫌な気配を感じたからだ。
「…」
そこには依然、ユキに絡んでいたあの男がいた。
黒崎だ。
こちらを見て不敵な笑みを浮かべていた。
彼はそのまま人ごみの中に消えていった。
あの男も参加するのか。
鑑定のスキルが発動したままだったので、彼のステータスも一瞬だが見ることができた。
「(レベル30か…)」
なで子やユキよりも高い。
面倒なことが起きなければいいが。
そして隣にいるなで子とユキに声をかける。
「…よし、行こうか」
「はい!」
なで子は元気よく返事をした。
ユキも無言でうなずく。
黒崎のことには二人とも気づいていないようだ。
いま不安にさせるわけにもいかない。
そして哲人たちは叢雲ダンジョンの入口へと歩みを進めた。
哲人たちが中に入ると、そこは洞窟のようになっていた。
薄暗い空間の中にいくつもの通路が見える。
「みんな気合入ってるね…」
なで子は緊張した様子で言った。
確かにその通りだと思う。
ここにいる全員が優勝を狙っているのだから当然だろう。
『それでは第一関門!開始です!!』
アナウンスと共に参加者たちは一斉に動き出した。
この辺りは昔、鉱山として使われていた。
つまり、その環境がダンジョン内に再現されているという訳だ。
周囲の環境を取り込み、その内部で再現する。
それがダンジョンなのだ。
「気をつけていこう」
「はいっ!」
「…うん」
なで子、ユキと共に、哲人は慎重に歩みを進めることにした。
叢雲ダンジョン内部は想像以上に複雑だった。
曲がり角や分岐が多い上に通路自体も狭い。
参加者たちも分岐によってふるい分けられていく。
もしかしたらすでに脱落者などが出ているのかもしれない。
そんな道を進んでいくうちに哲人たちはある扉にたどり着くことになる。
『第一関門 鉱山エリア』と書かれた看板が貼ってあった。
どうやらこの扉の向こう側に進む必要があるらしい…
「開けるぞ、扉」
「はい」
哲人たちは扉を開いた。
扉を開くとそこは広い空間になっていた。
天井が高く、奥行きもかなりあるようだ。
どうやらここが鉱山の採掘場が再現されたダンジョンの内部のようだ。
昔は鉱山として使われていたらしいが、今は見る影もない。
そんなところまで再現されているのか、と思わずうなずく。
「うわぁ…」
ユキはその光景を見て感嘆の声を上げた。
哲人もまた同じ気持ちだった。
だがすぐに気を引き締め直すことにする。
「このエリアで出現するモンスターは…」
ユキが、運営から配られているテキストを開く。
出現するモンスターなどが書かれた紙だ。
そこには二種類のモンスターの写真が表示されていた。
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ストーンラット
Lv:10
スキル:突進
メタルスネーク
Lv:12
スキル:毒攻撃
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どちらともレベルはさほど高くないが、それぞれ厄介な能力を持っているようだ。
集団で現れ、確実に体力を削ってくるタイプだ。
警戒しつつ哲人はなで子とユキに声をかけた。
「どうする?迂回するか、戦うか…」
「戦う!」
哲人の質問になで子は即答した。
という元気な声と共に魔法杖を構えたのだ。
やはり戦うつもりらしい。
ユキも、笑みを浮かべながら黙ってうなずく。
そしてクロスボウを構える。
そして、いよいよ戦闘が始まるのだった。
哲人たちは目の前の敵に集中した。
「来るぞ」
メタルスネークが口から毒液を吐いてくる。
哲人となで子はそれを躱しつつ距離を詰めていった。
メタルスネークはその名の通り金属のような体を持つ蛇だ。
体は硬質化しており、並の攻撃では傷一つつけることができないと言われている。
なで子はその体に仕込み杖の中の剣を引き抜く。
そしてメタルスネークを両断する。
そのまま粒子となり消滅した。
「…ッ!」
ユキもクロスボウで援護しつつ距離をとる。
彼女の支援射撃は的確だ。
哲人もまた、剣で応戦している。
メタルスネークは硬い外殻に覆われているが、哲人の剣はそれを切り裂いていく。
やはり以前戦ったレッサードラゴンなどと比べるとずいぶんと弱く感じる。
哲人はそのままメタルスネークに斬りかかる。
「先に進もう」
「はい!」
「うん」
メタルスネークを倒した哲人たちは先へ進むことにした。
ここでは石を積んだバリケードで道が塞がれているらしい。
先に進むためにはこれを撤去する必要があるようだ。
問題はその方法だ。
「ここを開ければ次のエリアに行けるみたいですね」
「よし、壊そう」
哲人がバリケードを吹き飛ばした。
いきなりのことに驚くなで子。
それを黙って見るユキ。
「あ、ありがとう、行きましょうか」
「扉が出てきたよ」
ユキがバリケードの残骸の奥に扉を見つけた。
その扉に触れるとゆっくりと開いていった…
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