第二話 日帰りダンジョンの初戦闘
一人暮らしの青年、『世良木 哲人』の自宅の屋根裏部屋にダンジョンが出現した。
しかも、レアモンスターの金色のスライムが出現するのだ
経験値とレアアイテムを多く獲得できるレアモンスター。
「…」
自室で手に魔力を込めようとする哲人。
しかし、魔力は使えない。
いくらレベルが高くとも、魔法が使用できるのはダンジョン内のみ。
これはダンジョンの常識だ。
「なるほどな」
この数日で、彼はこのダンジョンについて大まかに調べた。
手に入れた自動マッピングと鑑定のスキルが早速役に立った、という訳だ。
「わざわざ紙に書き起こす必要もなかったな」
ノートに描いたダンジョンの簡易マップを見ながらつぶやく哲人。
まず、このダンジョンは全部で2階層ある。
特に広くも無く、出現するのはあの金色のスライムのみ。
稀にしか出現しないが、この数日でまた一匹倒すことができた。
レベルは前回から13上がって40だ。
職業としてダンジョン攻略者をしている人物が20程度だと考えると、これはかなり高いといえる。
「するか?ダンジョン攻略者…?」
自室に転がりながら、彼はそう呟いた。
ダンジョン攻略者は今、一番人気の職業らしい。
しかし、当然命の危険もある。
レベルの上げ方やスキルなどの研究などもまだ十分に進んでいない。
世間一般としては、まだまだ未知の職業という訳だ。
彼の場合はレアモンスターを狩って一気にレベルを上げることが出来るが…
「よし、決めた!」
いきなり転職するのはさすがに無理だろう。
とりあえず、県内にある別のダンジョンに潜ってみることにした。
本格的な攻略では無く、力試しだ。
県内にもダンジョンはいくつかある。
その中でも難易度の低いところで様子を見よう。
出来れば日帰りで行けるところがいい。
そう考えていた。
それと…
「…とりあえず装備を整えようか」
さすがに手ぶらでダンジョンに潜るわけにはいかない。
しかし、本格的な武器を揃えるとなると当然だがかなり金がかかる。
そこでネットで中古の武器を仕入れることにした。
ダンジョン攻略者の中には武器や防具を購入するも、一度潜ってすぐにあきらめてしまう者が一定数いるのだという。
そのため、ネットでは格安で武器や防具が出品されているのだ。
そして数日後。
彼の手元には中古の短剣と革鎧が揃ったのだった。
前の所持者の手入れがよかったのか、あまり使っていないのか、装備はどちらも新品同様だった。
これとは別に注文していた物がある。
それは、黒いローブと仮面だ。
「これなら、いろいろ粗を隠せるな」
いかにも新品同様の鎧と剣では、さすがに周囲から浮いてしまう。
そう考えて用意したものだ。
仮面は一応、正体を隠すためのもの。
デザインは無駄に禍々しいが、性能は期待できる。
鑑定スキルのレベルが上がったおかげで、その情報も分かるようになったからだ。
・マジックローブ
魔力を込めることで強度や特性が上がるローブ。
状態異常軽減の効果もあるためダンジョン探索には向いている装備である。
ポリエステル製。
・黒い仮面
目元だけを覆う無骨なデザインの仮面だが、魔力を込めることで防御面を強化する効果がある。
プラスチック製。
という性能があるらしい。
とはいえ、どちらも処分品を適当に買ったものだ。
具体的にどれほどの効果があるかはわからない。
未知数だ。
「さて、準備完了っと」
黒いローブと仮面をリュックにしまい家を出る哲人。
剣と鎧は専用のケースに入れて持ち運ぶことを義務付けられている。
そしてそのまま自家用車である軽自動車に乗り込んだ。
目的地はもちろん県内にあるダンジョンである。
「ここか…」
ダンジョンは山の中にある。
入り口にはダンジョン管理局と書かれた看板が立っている。
中に入ると受付があり、そこで手続きをするらしい。
彼は受付で身分証明書を提示した。
すると、すぐに入場許可が出た。
準備室で装備を身に付け、その上からローブと仮面を身に付けた。
「これで正体は隠せるな…」
準備はできたので中へと入った。
ダンジョンの中は薄暗くて不気味だ。
しかし、不思議と恐怖心は無かった。
それはやはりレベルの影響だろう。
事前に調べておいたが、魔物の個々の平均レベルは7程度だという。
「さて、行くか」
彼はダンジョンの奥へと進んでいった。
屋根裏のダンジョンとは異なり、自然の豊かなダンジョンだ。
草木が生い茂り、動物や昆虫の気配がする。
しかし魔物はいないようだ。
少し残念に思いながら進んでいくと、巨大な湖に出た。
「湖か…」
ダンジョン内は不可思議な環境になっていることが多い。
このダンジョンの周囲の環境を取り込み、反映していることが多いという。
ここもそのようだった。
水棲の魔物がいるかもしれないと思ったが、予想に反して魔物の姿は無かった。
「まぁいいさ」
気長に行こう。
そんなことを考えた時である。
突然水面が激しく揺れたかと思うと、大きな音が聞こえてきた。
「なんだ?」
そして次の瞬間、湖の中から巨大なカニが現れたのだ。
大きさは1メートル以上はあるだろう。しかもハサミには棘がついている。
さすがにこれはヤバいかな…
そう思った瞬間だった。
突然目の前にウィンドウが表示されたのだ。
無意識のうちにステータスを確認していたのだ。
・ジャイアントクラブ
水棲の巨大カニ型魔物。
鋭いハサミで獲物を捕まえて捕食する。
通常の武器では倒すことは難しいだろう。
「まじかよ…」
どうやら彼を獲物と認識したらしい。
ジャイアントクラブが襲いかかってきた。
実質的な初戦闘だ。
「うおっ!?」
間一髪、攻撃を躱すことが出来た。
しかし、体勢を崩してしまう…
そんな隙を見逃すはずもなく、ジャイアントクラブの攻撃が始まったのだ。
激しい音を立てながら迫りくる巨大なハサミを前に、彼は覚悟を決めた。
「やるしかない」
幸い、相手は一匹だけだ。
倒せない敵ではないはず。
「うおおっ!」
哲人は気合いを入れて走り出した。
そしてジャイアントクラブの懐に飛び込んだのだ。
すると、ジャイアントクラブは再びハサミでの攻撃を始めた。
彼はそれをなんとか回避していく。
しかし、このままでは埒があかない。
「よし!」
彼は覚悟を決めて剣を抜いた。
そしてジャイアントクラブに斬りかかった。
固い外殻を持っている相手だ。
通じるのか、そう考えていた。
しかし…
「あれ?」
ジャイアントクラブは簡単に真っ二つになってしまった。
そうだ、よく考えてみたら35ものレベル差があるのだ。
当然と言えば当然か。
「倒せた…のか?」
ジャイアントクラブは黒い粒子となって消えた。
そして、ドロップアイテムとして魔石と甲殻が残ったのだ。
「おお」
思わず声が出てしまった。
初めて凶暴な魔物を倒したのだ。
しかもこんなにあっさりと。
黄金のスライム以外では、初めて討伐した魔物だ。
「やったぞ!」
彼はガッツポーズをした。
しかし、すぐに冷静さを取り戻すことが出来た。
なぜなら、ここはダンジョン内なのだ。
気を抜いている場合ではないからだ。
とりあえず、魔石と甲殻を回収した彼はさらに先へ進むことにした。
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