第十七話 結晶戦姫テトラ
ダム湖のダンジョンでの出来事は瞬く間にネット上で話題になった。
ニュースサイトなどでは次のような見出しが書かれるようになった。
『ダンジョン配信者、ユキとなで子、そしてセラート。
怪我人を助け、ケイヴ・サラマンダーを撃破』、と。
「ちょっと話題になりすぎだよなぁ…」
自宅でネットニュースを見ながらつぶやく哲人。
以前から考えてはいたが、できればセラートとしての活動はあまり目立たせたくなかった。
静かに暮らしたいと思っていたのだが、どうやらそうもいかなそうだ。
仕方ないと割り切るしかない、哲人はそう考えていた。
「ま、セラートの正体はバレてないしいいか。それに今日はバイトもないし…」
そんなことを考えながら哲人は朝食のパンを齧る。
今日のメニューはジャムトーストとコンソメスープだった。
インスタントのスープだがなかなかうまい。
と、その時、なで子から会話アプリで連絡が来た。
『おはようございます』
「おはよう」
と返すと、彼女は続けてこう言ったのだ。
『ウチのチャンネルにコラボレーションの依頼が来たんで、連絡しとこうかなって』
コラボ。
確かになで子とユキのチャンネルの人気はかなり高い。
しかし哲人にとって、コラボの依頼が来るとは予想外だった。
「(コラボか、いったいどんな内容なんだろうか…)」
そう考えているうちにまたメッセージが送られてくる。
そこにはこう書かれていた。
内容は単純で、お互いのダンジョン配信をコラボしながら行うというものらしい。
どうやら視聴者たちもそれが見たいようで盛り上がっているようだ。
特に女性層からの期待が大きいようだ…
「おお、すごいじゃないか!」
『へへへ…』
思わず口に出してしまった。
それほどまでに嬉しかったのだ。
それに、なで子たちにとってもチャンスだろう。
このコラボを通してさらにファンを増やし、チャンネル登録者数を増やすことになるかもしれないのだから。
『コラボ相手の名前は『テトラ』さん、私と同じくらいの時期から活動してる同期です』
どうやら相当喜んでいるらしい
まあ、無理もないだろう。
今回はコラボである。
相手も同年代の女の子ならやりやすいだろうし、きっと楽しい配信になるだろうな。
哲人は精々邪魔にならないようにしないとな。
あくまで主役はなで子とユキたちなのだから。
『今から楽しみで…ほかにも…それから…』
なで子はわくわくを抑えきれないようだ。
感情をよく表に出す、裏表のない性格。
こういうところが人気の秘密なのだろう。
そう考える哲人。
その後も、彼女はたくさん話していた。
『それじゃあ、また』
「ああ、じゃ」
哲人は一息つくと、先ほどユキが言っていた『テトラ』という配信者の動画を見てみることにした。
一体どんな人物なのだろうか?
「調べてみるか…」
動画を見る前に、まずはネットで彼女の情報を調べてみることにした。
テトラは水属性の魔法を得意とする配信者だという。
主にダンジョン内での探索や戦闘風景を撮影しているようだ。
彼女の使う水属性の魔法は動画映えするため、人気が高いようだ。
「エンタメ性重視ってところか」
人気の高い配信者、例えば以前に哲人が見ていた『スタチューバスターズ』や『ジャスティス・ヒロキ』という配信者。
これらはシンプルなわかりやすい内容を売りとしている。
テトラはそれとは逆というわけだ。
ただ、水属性の魔法は他の属性に比べて使い手を選ぶようで、あまり使い勝手は高くないらしい。
水属性にこだわりすぎて逆にピンチになった、という厳しい意見もある。
それでも彼女は諦めずに配信を続けているようだ。
「努力家なんだな、どんな動画を撮っているんだ」
気になった哲人は動画サイトを検索してみることにした。
するとすぐに見つかったのでタップする。
画面に映ったのは海のような場所だった。
どうやらどこかのダンジョンの内部らしい。
天井からは水滴が落ちてきていて、地面はぬかるんでいるようだ。
そして何より目を引くのはその広さである。
「すごいな…」
と思わず呟く哲人。
テトラという少女は辺りを警戒しながらゆっくりと前に進んでいく。
どうやらかなり慎重な性格のようだ。
結晶をイメージした白と青のカラーリングの衣装を身に纏っており、どこか幻想的だ。
彼女が着ているのは、ダンジョン攻略用衣装で、配信におけるパフォーマンスの一環とのことだ。
背中には大きな袋を背負っていて、そこから杖のようなものが見える。
どうやら魔法を使うための道具のようだ。
先端には青い宝玉のようなものが埋め込まれている
『水の精霊よ、我が呼びかけに応えたまえ!!』
テトラが魔法を唱える。
すると彼女の手に魔力で構成された水の槍が現れた。
彼女はそれを器用に振り回し、構える。
水を硬質化し、武装に転化するのだ。
その姿はまるで熟練の兵士のようだ。
そして次の瞬間、彼女が動いた。
『たあっ!』
テトラは水属性の魔法を駆使して次々と魔物を倒していく。
その戦い方はとても鮮やかで無駄がないものだった。
まるで踊っているかのような華麗な動きだ。
哲人は思わず見惚れてしまったほどだ。
しかしそんな時、彼女の死角から突然魔物が現れたのだ!
「うおっ」
思わず叫んでしまった哲人だったが、どうやら杞憂だったようだ。
なんとテトラは振り向きざまに魔法を放った。
その一撃は見事に魔物に命中し、あっという間に倒してしまった。
『ふぅ…』
安堵のため息をつく彼女。
どうやら無事だったようだ。
哲人は安心して胸を撫で下ろすと再び動画の方に意識を向けるのだった。
テトラの戦い方はとにかく効率重視という感じだ。
無駄な動きは一切なく、最小限の動きで確実に敵を倒しているように見える。
まるで機械のような戦い方だ。
しかし、それでいてどこか優雅さを感じさせるのは彼女のセンスが優れているからだろう。
「すごいな…」
哲人は感嘆の言葉を漏らした。
正直ここまでとは思っていなかった。
テトラという配信者は本当に強いようだ。
その後もテトラの活躍は続く。
テトラは次々と魔物を倒していく。
その動きには一切の無駄がなく、まさに芸術的とも言える美しさがあった。
まるで踊っているかのような華麗な動きだ。
しかし、そんな彼女にも弱点はあったようだ。
「ひゃっ!?」
突然悲鳴を上げる彼女。
どうやら彼女の苦手なモノはスライム系の魔物らしい。
足元にいたらしく、それに足を取られたようだ。
しかし、すぐに冷静さを取り戻して魔法を唱えるテトラ。
そして彼女の手に現れた水の槍は次々に魔物を倒していくのだった。
「ふぅ…」
動画を見終わった哲人は大きく息を吐いた。
まさかあんな展開になるとは思わなかったからだ。
それにしてもテトラは本当に強い人物だと感じた。
あの歳であそこまで戦えるのはかなり凄いことだろう。
特に問題のある人物でもなさそうだ。
彼女ならユキとのコラボ相手として申し分ないだろう。
「楽しみだな」
哲人は自然と微笑んでいた。
果たしてどんな配信になるのだろう?
今から楽しみである。
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