第十六話 西のダム湖ダンジョンを攻略してみた
「よーし、ついたぞ」
数日後、哲人たちは県内にある五つのダンジョンのうちの一つ、西のダンジョンに来ていた。
このためにレンタカーを借り、ユキとなで子を乗せてきたのだ。
哲人たちが住む県の西の山中にはダム湖があり、その付近にダンジョンがある。
普段は姿を現さないが、ダムの水位が少し下がると入り口が現れるのだ。
今回潜るのはこのダンジョンだ。
ダム湖の近くの洞窟、そこに入り口があるようだ。
「大きなダム…」
ダンジョン攻略前にもかかわらず、ユキはダムの大きさに驚いているようだ。
確かにこのダムは大きい。
まるで小さな町のようだと哲人自身も思うほどだ。
しかし今はダンジョン攻略が先だ。
哲人はユキとなで子と共に入り口に向かうことにした…
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入り口の前まで来たところで、なで子がドローンを飛ばした。
そしてカメラを入り口に向けて撮影を始めることにする。
視聴者たちは興味津々で見ていることだろう。
中に入るとそこは広い空間になっていた。
天井も高く広々としている。しかし、油断はできないだろう。
ここには魔物がいるのだ。
入り口付近は比較的安全だが、奥に行けば行くほど危険度は増すことになるのだ。
「結構不気味化かも…」
ユキが不安そうに言う。
哲人は大丈夫だと言って安心させた後、ゆっくりと進んでいくことにしたのだった。
冷たい岩肌とコンクリートの通路が混ざったような、見ているだけで不安になるようなダンジョンだ。
と、その時…
『お!誰かいるぞ』
視聴者のコメントが流れると同時にドローンのカメラを向けた。
そこには一人の少女が映っていた。
どうやら探索者のようだ。
彼女は一人で探索をしていたようで、その手にはショートソードが握られている。
どうやら戦闘中だったらしく、周囲には魔物の残骸らしき物が散らばっているようだった。
「ちょっと待ってね」
ユキが視聴者たちに語りかける。
どうやら、探索者の少女に声をかけるつもりのようだ。
さすがに許可な配信動画に顔をはっきりと映すわけにはいかない。
そこら辺はしっかりとしているユキなのだ。
少女に軽く事情を説明し、許可をとる。
そして…
「あのーすみません」
なで子は少女に向かって声をかける。
すると少女はドローンに気づき振り向いたのだ。
そしてドローンに視線を向ける。
『探索者かな?』
視聴者のコメントが流れる。
「はい、そうですよ」
少女が答えると同時にカメラを向ける。
髪はショートカットで活発そうな印象を受ける顔立ちをしている。
服装も動きやすそうなもので統一されていた。
革製の鎧とショートソードという出で立ちをしている。
「あなたも探索者ですか?」
「はい、そうです!」
なで子が質問すると少女は答えた。
どうやら彼女もダンジョン探索に来ていたようだ。
一人ではかなり危険だと思うのだが、人には人の事情がある。
あまり詮索するのは良くないだろうと思い哲人は何も言わなかった。
それよりも今は目の前の少女のことだ。
彼女の実力はどの程度なんだろうか?
さすがに一人でここまで来たということはそれなりの実力はあるのだろうが…
鑑定のスキルでステータスをこっそり見てみるか?
そんなことを考えているうちに少女が話しかけてきた。
「あの、もしかして『ユキさん』…ですか!?」
「う、うん」
「すごい!あたし、ファンなんです!」
少女の声にユキは嬉しそうな声を上げた。
どうやら彼女はユキのファンのようだ。
確かにユキは人気が出るのもわかる。
「あの、握手してもらってもいいですか!?」
少女が言う。
「え、ああ、うん。いいよ」
ユキは快く了承した。
そして二人は握手を交わすことになったのだ。
『うおおお!羨ましいぞ!!』
視聴者たちの反応がすごいことになっているようだ。
まあ、ユキのファンならば当然の反応とも言えるだろう。
「あたし、トキコっていいます!」
「よろしく」
ユキが軽く頭を下げる。
彼女もうれしいのだろう。
と、そこに…
「あの、ウチは?」
なで子が小声で呟く。
少女がハっとしたような顔でなで子とも握手をした。
その後は三人で雑談することになったのだ。
ユキは探索者の少女にダンジョン内での注意点などをレクチャーしているようだった。
「おい、俺の質問にも答えてもらうぞ」
ふと気になったことがあったので質問してみることにした。
冒険者セラートとして振舞いながら。
それはなぜ一人でここに来たのかということだ。
「実は友達と来ていたんですけど、途中ではぐれてしまって…」
どうやら彼女は仲間と一緒にこのダンジョンに潜っていたらしい。
しかし途中で魔物の群れに襲われてしまい、逃げ遅れてしまったのだそうだ。
なんとか命からがらここまでたどり着いたものの、仲間とはぐれてしまったということらしい…
「じゃあ、一緒に探そうか?」
なで子が言う。
確かにその方がいいだろうと思い哲人は賛成したのだが…
「あ、大丈夫です!多分、一人でも何とかなると思うので!」
彼女はそう言って断ってきた。
しかし、さすがにそれは無理だろうと思い哲人は言った。
あくまでセラートとしてのキャラを崩さずに。
「いや、探すぞ」
しかし彼女は笑顔で答えた。
もちろん、それが無理して作った笑顔なのは誰が見ても理解できた。
「本当に平気ですから!それにみなさんと一緒だと緊張しちゃいますし」
『いい娘だな』
視聴者たちのコメントが流れる。
確かにその通りだと思う。
彼女の性格の良さが伝わってくるようだ。
哲人も好感を持ってしまった。
しかし、だからといって一人で行かせるわけにはいかない。
「いや、やっぱり一緒に行こう。もし怪我をしてたら人手もいるだろう」
そう言って哲人たちは同行することにしたのだった。
道中で何度か魔物と遭遇したものの、問題なく倒していく。
そしてしばらく進んだところで大きな空間にたどりついた。
天井からは水が滴り落ちてきていた。
どうやらここは地下水路になっているようで、足元には水たまりがたくさんあったのだ。
「うわぁ、すごい」
トキコは驚いている様子だ。
しかし今は驚いているしている場合ではない。
早く目的を果たさなければ。
ここまでの道はそこまで複雑では無かった。
トキコの友人がいるとすれば、もうこの最深部しかない。
と、その時だった。
「うわあああああ!」
奥の方から何者かの声がする。
まさか…
「ユージ!」
トキコが叫ぶ。
まさか彼女の友人が奥で戦っているのか!?
哲人たちは慌てて声のした方へと駆け出す。
そこには一人の少年がいた。
彼は魔物と戦っているようで、必死に剣を振っている。
しかし、その攻撃は空を切り続けるばかりで一向に当たる気配がない。
このままでは危ない。
そう思った哲人はすぐに援護に入ったのだ。
「大丈夫か!?」
「は、はい…っ!あなたは…」
彼が戦っていた魔物は、このダム湖の西ダンジョンのボス。
その名を『ケイヴ・サラマンダー』という。
淡水に棲息する小型の竜族で、その口からは強力な水流を吐くことができるのだ。
どうやら彼はその攻撃を喰らってしまったようで、かなりのダメージを受けているようだった。
このままではまずいと思い、哲人は剣を構える。
「ネットの動画で見たぞ、かなりレアな奴だな」
「セラートさん!」
なで子が叫ぶ。
哲人は頷くだけで返事を返し、そのまま走り出した。
そしてケイヴ・サラマンダーに斬りかかった。
水をはき出す前に剣で切り裂き、倒すことができたようだ。
その場で崩れ落ちるケイヴ・サラマンダー。
「持つべきものは高レベルだよなあ」
哲人のレベルは70を超えている。
並の魔物では相手にすらならない。
そして、魔物を倒すと同時に少年の方も倒れ込んだのである。
哲人は彼に近づき安否を確認する。
息はあるようだ、命に別状は無いだろう。
ダンジョンのボスを倒した哲人たちは地上に戻ることにした。
途中、ケイヴ・サラマンダーの死体から魔石などを回収した。
これは後で換金するためだ。
そして無事にダンジョンの外に出ることができた哲人たちは、その足で病院へと向かった。
あの少年の名前はユージといった。
彼は怪我の影響で意識を失っているが命に別状はないようだった…
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