第十三話 学生時代の先輩に会ってみた
あの村のダンジョンでの騒動から数日。
哲人は自宅でのんびりと過ごしていた。
バイトも入れず、特に予定もなく暇を持て余している状態だ。
スマホでネットのニュースを見る。
最近話題になっているニュースといえば、やはりダンジョン関連のものが多いようだ。
その中でも特に注目を浴びているのはとある女性ダンジョン配信者だろう。
彼女のチャンネル登録数は十万人を超えており、人気は高い。
…そう、なで子とユキのことだ。
「あれから人気が上がってきたよなあ」
例の事件や村の人の証言などがニュースとなり、いろいろな場所で報道された。
行方不明の子どもを見つけ出したというニュースが流れたことでさらに注目が集まったようだ。
そのおかげで、彼女の動画の再生回数もかなり伸びている。
そんなことを考えているうちにも新たな情報が入ってきたようで、またまた話題になっているようだった。
今度はどんな内容なのか気になるところだなと思いながら哲人は画面をタップして詳細を確認することにしたのだった。
「お、セラートの話題もある」
なで子とユキ、二人と組む謎の高レベル探索者セラート。
まぁ哲人自身のことなのだが、
二人の配信に度々登場することから有名になったようだ。
哲人の知名度が上がったことは素直に嬉しいと思っているけど、それと同時に不安もある。
あくまでダンジョンで小金を稼げればいいと思って始めたダンジョン探索。
知名度を上げて面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
しかし…
「なで子とユキのチャンネル登録者数が十万人って…凄いなぁ」
いつの間にか哲人の活動報告や動画再生数が伸びていた。
これは素直にうれしいことだ。
以前までは二万人いくか、いかないかといったところだった。
これが順調に増えていっているのだ。
そんな事を考えながらもスマホを弄っていると、ある人物からの連絡が来た。
「ん?なんだ?」
その人物とは哲人がよくお世話になっている先輩の『佐鳥ヒナ』だ。
学生時代の先輩で、今でもたまに会ったりもする。
メッセージを開くとそこにはこう書かれていた。
『久しぶり!元気してる?』
という内容だった。
哲人はすぐに返信を送ることにする。
内容は『元気です』といったような当たり障りのないものだ。
しかし、それだけでは味気ないと思うので最後にこう付け加える事にしたのである。
『ところで、ヒナさんは今何してるんですか?』
と。
すると程なくして返事が返ってきたのだ。
そこにはこう書かれていた。
『今度一緒に飲まないか?』
一方的な会話はいつも通りだ。
哲人は迷わずOKを出すことにした。
特に予定もないし、断る理由も思い浮かばなかった。
翌日、待ち合わせ場所に指定された居酒屋に到着した哲人。
彼女は既に到着していたようで、個室を取っておいてくれていた。
「いやーこうして会うのも久しぶりだねぇ」
ヒナが酒を飲みながら言う。
確かにこうして会うのは久しぶりかもしれない。
この年になると、月日が経つのも早く感じる。
そう思いながらも哲人も笑顔で返すことにしたのである。
「そうですね、最近はなかなか予定が合わなくて申し訳ないです」
哲人は素直に謝罪の言葉を口にした。
すると彼女は首を横に振りながら言ったのである。
どうやら怒ってはいないようだ。
その後しばらく雑談をしていたのだが、
「世良木くんは仕事の方はどうだい?」
突然そんなことを聞かれた哲人は一瞬固まってしまった。
フリーターで定職についていない。
答えづらいが、すぐに気を取り直して答えることにしたのだった。
「まあ…ぼちぼちです」
「ふぅーん」
「あ、でも副業が結構いい線いってるかな~って…」
「世良木くんが副業!」
「ええ。意外とこれがうまくいっていて」
「はぁ~!」
哲人から出た予想外の言葉に驚くヒナ。
何をしているのか、とでも聞かれるかとも思ったが、ヒナは深くは詮索しなかった。
そんな話をしていると、注文した料理と追加の酒が来た。
早速箸を取り料理をつまみ始める哲人達。
「うん、美味い!」
「世良木くんって本当に美味しそうに食べるよね〜」
そう言いながらクスクス笑っているヒナ。
自分では普通だと思っているのだが、他人からはそう見えるのだろうか。
まあいいやと思い、今は食事を楽しもうと思う事にしたのだった。
それから数時間後。
食事を終えた哲人とヒナは店を出て駅へと帰っている途中であった。
隣を歩くヒナはお酒が回っているせいか上機嫌な様子だった。
「いや~楽しかったよ」
「久しぶりに会えてよかったです」
「ふふふ、ありがとう」
哲人はというと少し酔いを覚ましながら歩いていたのだが、不意に彼女が声をかけてきたのである。
どうやら相談したいことがあるようだ。
なので哲人は話を聞くことにしたのだった。
内容はこうだった。
最近仕事のストレスであまり眠れていないらしい。
「それで、世良木くんに何かいい方法はないかな~って思ったんだけど」
なるほど。そういう事だったのか。
哲人は少し考えた後、ある提案をする事にしたのだった。
「マッサージでも受けてみてはどうですか?」
「え?マッサージ?」
「俺もたまに行くんですけど、結構気持ちいいですよ」
「効果あるのかねぇ…」
スーパー銭湯などで、マッサージをしている場所もある。
哲人のそんな言葉を聞いたヒナはというと、半信半疑といった様子だ。
しかし、興味を持ってくれたのか、とりあえず行ってみることにしたようだ。
「あ、そうだ。忘れてた」
「ふぇ?」
哲人はあることを思い出した。
以前、日本海の新ダンジョンに行ったときに現地で購入した土産物。
それを渡そうと思って持ってきていたのだ。
哲人はそれを手渡すことにした。
本当は自分用に買ったものだが、久しぶりに会ったのだ。
これくらい渡してもいいだろう。
「これ、お土産です」
「ふぇー…何コレ?」
「出先で買ったんです」
哲人が買った土産は、日本海の特産の干物セットだった。
他愛もない、よくある土産物だ。
あまり喜んでもらえないかもしれない。
そう思っていたが…
「ふふふ、ありがとう!」
しかし、そんな哲人の予想に反して彼女は嬉しそうに受け取ってくれたのである。
しかも満面の笑みで。
そんな反応を見た哲人は思わずドキッとしてしまったのだった。
「(あれ?なんだこれ…?)」
今まで感じた事のない感情に戸惑いながらも平静を保つように心掛ける。
それからしばらくして、駅に着いた哲人達はそのまま解散する事になったのだった。
「それじゃあ、また今度」
「はい!おやすみなさい!」
そうして別れた後、家に入った哲人はすぐにシャワーを浴びる事にした。
なぜかどっと疲れた気がする。
シャワーを浴びながら今日の事を思い出す哲人。
「(ヒナさん、喜んでくれてたな)」
それを思うとなんだか嬉しくなってしまった。
きっと酒と酔いのせいだろうと思う。
そんな事を考えつつ、風呂から上がった哲人は布団に潜り込むとすぐに眠りについたのだった。
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