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屋根裏ダンジョン育ちの無名剣士、配信で正体を隠したまま無双する  作者: 剣竜


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第十話 村おこしの新ダンジョン行ってみた

 ダンジョン配信者である少女、なで子とユキ。

 哲人は、そんな彼女たちと成り行きから手を組むことになった。

 そして現在、彼らは新たなダンジョンへ来ている。

 今回挑むのは日本海側のとある県にあるダンジョン。

 遠征、という訳だ。

 比較的田舎の街に突如ダンジョンが発生した。

 それを使って町おこしをしているらしい。

 ダンジョンの中には様々な資源が眠っている。

 それらを手に入れれば大儲けできるというわけだ。

 もちろん、危険も伴うのだが…


「到着しました~!」


 なで子が元気よく言う。

 日本海に面した小さな町だ。

 人口はそれほど多くないだろう。

 そんな町の外れにある洞窟の中に今回の目的地はあった。

 入り口には看板があり、『新ダンジョンへようこそ』と書かれている。


「ちょっとしたお祭りみたいだな」


 その周りには屋台が並び、多くの人で賑わっている。

 どうやらこのダンジョンで採れる食材を使った料理を提供しているらしい。

 ダンジョンで取れた食材は長期保存ができない。

 だが、逆に言えばその場ですぐに食べれば問題ないということ。

 そのため、このようなイベントが開かれているらしい。


「お腹すいた」


 ユキが言った。


「じゃあ先に食事でもしようか」


 なで子が提案する。

 確かにそれも悪くない、早速近くの屋台へと向かうことにする。

 メニューを見ると様々なダンジョン産の食材を使った料理が並んでいるようだ。

 もちろん、その手のプロに鑑定を依頼し大丈夫な物のみを使用しているとのこと。


「結構いろいろあるわね…」


「うん…」


 なで子が楽しそうに悩んでいる。

 ユキも無言でじっと見ている。

 哲人も一緒になってメニューを見ることにした。

 どれも美味しそうに見えてしまう。

 結局なで子が注文したのは『アイアン・シュリンプの串焼き』だった。

 以前に食べた味が忘れられない、とのことだ。

 彼とユキも同じものを頼むことにした。


「いただきます」


 嬉しそうに頬張るなで子を見て彼も思わず笑顔になる。

 一口食べるとその美味しさに驚いた。

 外はカリッと香ばしく中はジューシーでとても柔らかい肉質だ。

 それでいて脂っぽさはなくあっさりとしている。

 絶品と呼ぶに相応しい味わいである。

 以前に彼たちがダンジョンで作った時のものよりも美味い。

 やはりプロが作ったものは違う。


「以前食べた時のことが忘れられなくて」


「ははは」


 と笑いながら答える哲人。

 なで子の気持ちはよくわかる。彼も同じ気持ちだからだ。

 アイアン・シュリンプ以外にも海系の魔物の素材を使った料理が並んでいる。

 どれも美味しそうで目移りしてしまうほどだった。

 ユキはというと、既に次の獲物をロックオンしていたようで、早速注文しているところだった。


「イカキングのステーキです、一番大きいの」


「あ、俺もください」


 彼もそれに便乗して同じものを頼んだのだが…

 これがまた絶品であった。

 口の中でとろけるような感覚に陥るほどの美味しさである。

 思わず顔が緩んでしまうほどだ。

 そんな彼を見て、なで子も満足げな表情を浮かべている。


「さて、そろそろ行きますか」


 と、なで子は立ち上がる。

 今回の目的はダンジョンの探索だ。

 このダンジョンにはどのような魔物が生息しているのか。

 そして資源はあるのか。

 それを調査することが目的となる。


「わくわくしてきた」


 なで子が言う。

 哲人ダンジョンの中は薄暗く不気味な雰囲気が漂っている。

 しかし、その割に意外と人が居た。


「こんなに人がいるのか?」


 彼が呟く。

 すると、隣に居たユキが説明してくれる。

 どうやらこのダンジョンは観光地としても有名らしく、多くの観光客が訪れるらしい。


「くわしいな」


「だってここの看板に書いてあるし」


「あ、なるほどな」


 哲人は納得したように呟いたのだった。

 しかし危険では無いのだろうか?

 見たところ、武器を持っている人はいない。

 防具を付けている者も見当たらない。

 それどころか、ほぼ手ぶらの状態で来ているようだ。


「大丈夫なのか?」


 彼が聞くとさらにユキは答える。

 どうやらこのダンジョンでは強力な魔物が出ないらしい。

 そのため、戦闘経験の無い者でも気軽に訪れることができるのだそうだ。


「これも看板に書いてある」


「へぇ~」


 彼は感心してしまった。

 確かにそれなら安全だろうと思う反面、少し拍子抜けしてしまうところもあるのだが。

 まあ良いかと思い直すことにする。

 と、その時…


「あ、ダンジョン配信者のなで子とユキだ」


「本当だ」


 という声が聞こえてきた。

 どうやらリスナーらしい。

 なで子は笑顔で手を振って応えていた。


「やっぱり可愛いな」


「ああ、癒される…」


 そんな声が聞こえてきた。

 なで子とユキは嬉しそうにしている。

 一方、正体を知られるとまずい哲人は少し離れていた。

 いつもは顔を隠す仮面をつけて動画に出ているが、さすがに外でつけるわけにもいかない。


「フード付きの上着でも着てきたほうがよかったか?」


 早速ダンジョンへ入るための手続きをして、内部へと入る三人。

 それからしばらく歩くと分かれ道に差し掛かった。

 右は行き止まりで、左は奥へと続いているようだ。

 なで子はしばらく考え込んでいた。


「いったん行き止まりの右を撮影したほうが…いや…」


「右まで撮ると動画のテンポが悪くなるよ」


「けどユキさ、ネタ要素も欲しいし…うーん…」


 動画映えを重視して、右の行き止まりも撮影するか。

 それかさっさと左へと行くか。

 少し悩むなで子だが、やがて決めたようで左の道へ進むことに決めたらしい。

 彼も異論はなかった。


「じゃあそろそろ配信を始めるね」


 そう言って配信用のドローンを飛ばすなで子。


「今日はこちらのダンジョンにやってきました!最近出現した話題のダンジョンです!」


「詳しくは下のリンクから…」


 配信中の動画下のリンクにはこのダンジョンの所在地などが記されている。

 ユキが下を指さしている。


「ここでは様々な食材が手に入るそうですよ!」


 なで子は元気よく挨拶をしている。

 哲人もそれに合わせて軽く会釈をした。

 コメント欄には早速視聴者からの書き込みが増え始めたようだ。


『なで子ちゃん、今日も可愛い!』


『セラートさんも一緒なんですね』


『ダンジョン探索頑張ってください』


『ユキちゃんこっち見てー』


 などと言ったものが見られる。

 彼は適当に返事をしておいた。


「ありがとうございます!頑張りますね!」


 そう笑顔で答えるなで子を見て彼も自然と笑みがこぼれてしまう。

 正体をごまかすために造った『探索者セラート』というキャラクター設定。

 それが視聴者たちが受け入れてくれたことに安堵していた。

 進んでいくうちに魔物の気配を感じたので警戒を強めることにする。

 すると案の定現れたのは小型のネズミ型の魔物、数は三体だ。

 海のダンジョンに登場するこの魔物の名前は『マリナー・ラット』というらしい。

 素早い動きで相手を翻弄し、鋭い牙で噛み付いてくる厄介な相手である。

 だが、動きが単調であるため対処は容易だった。


「ふう」


 軽い小手調べ程度という感じで撃退した。

 さすがにこの程度の魔物では相手にならないようだ。

 その後も何度か魔物と遭遇するが問題なく撃退することができた。


「このダンジョンは脅威は少ないみたいですね」


 なで子が言う。

 確かにその通りかもしれないと思った。

 出現する魔物もそれほど強くないようだし、今のところ危険を感じることもないからだ。


「次はあっちに行ってみましょう!」


 しばらく進むと大きな部屋に出た。

 天井が高く、広さもかなりある場所であるようだ。

 ここで休憩を取ることにした彼たちは腰を下ろした。

 水筒を取り出し水分補給をすることにする。


「ふぅ」


 一息つく彼。

 ユキも隣で同じ様にしていた。

 なで子は一人、視聴者と雑談をしていた。

 しばらく休憩した後、探索を再開することにする。

 しかし少し進むと、行き止まりになってしまった。

 どうやらこの場所にはこれ以上進むことはできないらしい。

 引き返そうとしたその時…


「この裏、まだ道があるよ」


 ユキが言った。

 よく見ると、岩の陰に道があった。

 死角にあって気が付かなかったようだ。


「う~ん、行ってみたいけど…」


 なで子の配信用ドローンのバッテリーが切れかかっているとのこと。

 バッテリー残量が20%を切っているらしい。

 このまま進むと途中で切れてしまう。

 今回は引き返すことにしたようだ。

 コメント欄にも残念がっている視聴者たちの声が見られた。

 まあ、また次回に期待することにしようと思う。

 帰り道では特に危険な出来事もなく、無事に戻ってくることができたのだった。


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