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4 るーる

初日につき、五話分を一度に投稿しました。

ルールに関しては、読み飛ばしてもほとんど問題ありません。

 さて、完璧だったはずの俺の作戦は秒速で頓挫したので、ここはおとなしくしておくとしよう。

 ちなみに、主人公の証を受け取ったのは三十歳くらいのお淑やかな女性だった。

 彼女は困ったような顔で、羊皮紙と俺達とで視線をあっちこっちにやっている。


 その仕草は保護欲をそそられ、悪意のようなものは感じられない。

 彼女が主人公というのなら仕方がない。

 全力で媚びへつらう所存である。


 そんなことを考えていると、なぜか愛音君に小さな椅子の破片を投げつけられた。

 結構痛かった。


 あまりの理不尽に多少むかっ腹は立ったが、今それはどうでもいい。

 重要なのは、お淑やかさんが手に持っているモノに何が書かれているのかだ。

 そう、まだ悪魔様はデスゲームであるとは一言も言っていない。ゲームの名前を答えてくれただけである。


 ゲームと一言で言っても、多種多様のジャンルが存在するのだから、まだ希望はある……かもしれない。というか、あって欲しい。

 ホラーとか、サイコスリラーとかは嫌だ。せめてサバイバルゲーム、なんならストラテジーとか、ファンタジーが良いですお願いします。


 心の中で祈りを捧げていると、とつぜん俺の目の前にホテルのベルようなものが出現した。

 よく見れば、何かのスイッチのようで、上部のボタン部分が押せそうである。

 しかも、テーブルの中央には台座付きの巨大なベルが一つ。


 これはあれだ、バトラーズベルと呼ばれる代物だ。

 しかも、ホテルのベルっぽいものを配られたのは俺だけじゃなく、ここにいる全員にだった。


「私ノ名ハ――ウェルギリウス。ソレハ、ワタシヲ呼ビ出スタメノ道具ダ」


 おお! もしや悪魔様は執事であられたのか!

 どおりで悪魔という割に、紳士なわけだ。

 それはそうと、スイッチのようなものを渡されると無性に連打したくなるな。

 押してみてもいいのだろうか?


 そーっと、ベルのボタン部分に手を伸ばす。

 とそのとき、悪魔様がちらりとこちらを見た。


「ソレヲ使エルノハ、一度ダケダ」


 俺は、悪魔様から目線を逸らさないようにしながら、ゆっくりと手を下ろした。


 うむ。やはり紳士だな。

 俺だったら、そんなことを教えないでベルを使わせた上で取り上げる。


「デハ。マタナ」


 悪魔様はそう言い残すと、黒い穴のようなものを展開し、その中に消えた。

 悪魔様が去ったというのに、いまだに放心状態の者たちが多く、ただいまの暫定主人公であるお淑やかさんも、自分から音頭を取る気配はない。


 彼らが動き出すのを待っていられなかったので、俺は席を立って、お淑やかさんのもとへ向かった。


「よろしければ、見せて頂いても?」


 半音高く、スマイルを忘れずに。


「……え? はい。どうぞ」


 受け取った羊皮紙には、以下のようなことが書かれていた。



【『ラ・コメディア』 ~ルール~】


・プレイヤーの総数は十三人。

・プレイヤーは、村人陣営と人狼陣営の二つの陣営に分かれてゲームを行う。

・このとき村人陣営は十一人、人狼陣営は二人となる。

・村人陣営は、人狼陣営二名の処刑または淘汰を目指さなければならない。

・人狼陣営は、村人陣営と数的同数になるまで村人陣営を殺し尽くすことを目指さなければならない。

・初日の夜時間にプレイヤー全員に役職が配られる。

・各陣営の配役は次の通り。

 〇村人陣営の配役……村人――7人

           占い師――1人

           霊媒師――1人

           狩人――1人

           騎士――1人

 ●人狼陣営の配役……人狼――2人


・役職について。

 〇村人……基本役職。特別な力を持たない。

 〇占い師……夜時間が来る度に一度だけ、好きなプレイヤーを占うことが出来る。占いの力を行使できるのは夜時間の間のみ。

 〇霊媒師……朝時間が来る度に一度だけ、処刑されたプレイヤーが人狼かそうでないかを確認できる。霊媒師の力を行使できるのは朝時間の間のみ。

 〇狩人……好きなプレイヤーを一人殺すことが出来る。この力を行使できるのは、このゲーム中に一度のみ。

 〇騎士……朝時間が来る度に一度だけ、守りたいプレイヤーを選択することが出来る。選択されたプレイヤーは、次の夜時間の間に一回だけ人狼の襲撃から守られる。

 ●人狼……夜時間の間に一度だけ人狼状態に変身できる。人狼状態になったプレイヤーは、好きなプレイヤーを一人襲撃し、殺すことが出来る。


・今日以降のゲーム期間中、この惑星は「長日期」と呼ばれる期間に入る。長日期の間において一日は、『朝時間』と『夜時間』を合わせた九十六時間となる。

・プレイヤーは決められた場所でしか睡眠をとることが出来ない。

・バトラーズベルは、スイッチの持ち主であるプレイヤーのみが使用できる。

・スイッチの所有権および、バトラーズベルの使用権は変更できない。

・バトラーズベルを使用した場合、一人につき一回までウェルギリウスを呼び出すことが出来る。

・ウェルギリウスが呼び出されると会議時間に突入する。と同時に、全生存プレイヤーはロッジに強制召集される。

・招集されたプレイヤーは話し合いを行ったのち、処刑対象をプレイヤーの中から一人選び、投票を行わなければならない。投票における細かいルールについては、最初の会議時間にウェルギリウスが説明を行う。

・会議時間中のみヴェルギリウスはプレイヤーの質問を受け付ける。

・召集されたプレイヤーは投票を終えるまで、会議時間中の行動が制限される。

・ゲーム終了時に生存しているプレイヤーには、ウェルギリウスより多大なる報酬が与えられる。




 羊皮紙にざっと目を通して、俺はピシリと固まった。

 やっぱり、この羊皮紙燃やして無かったことに出来ないだろうか?

 そんなことが一瞬頭をよぎったが、やめておく。

 正気を取り戻した奴らが、こっちに向かって来るのが見えたからだ。

 ちなみにその先頭にいるのは、チャラ男だった。


 なんでコイツは暫定主人公の座から陥落したくせに、主人公ムーブをかましているのだろうか、と不思議には思ったが、今はそんなことにかかずらっている場合ではない。

 内から湧き上がる衝動が、俺を突き動かしていた。

 心の赴くまま、チャラ男達の横を通り過ぎ、ロッジの外へ。


「ライト先輩、どうしたんですか⁉」


 愛音君が何か言っていた気がしたが、彼女の言葉は今の俺の頭には入ってこなかった。

 なにせ、異世界ファンタジーの気配はどこかに消え去って、いきなりデスゲームがこんにちはしてきたのだから。

 ロッジを出た俺は、三つの月が輝く青空を見上げ、睨みつける。


 そして、ありったけの想いを込めて中指を天空に突き上げ――叫んだ。


「ファッキュー‼」


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