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10 げんじつとうひ

ちょっと短めです。

 チャラ男達はどうやら、テントのある広場からまっすぐ南を目指しているらしかった。

 先導するチャラ男に、俺の後ろから愛音君が尋ねる。


「私たちはこれから、どこに行くんですか?」

「ああ……言ってなかったっけか? これから海に行くんだ。皆で話し合ったら、結果的にそうなったって感じ?」


 ほう……海とな?

 しかし、海に何しに行くんだ?

 デスゲームを前に海水浴に行くというわけでもあるまいし。


「話し合った結果、海に……?」


 呟かれた愛音君の疑問に対しては、カップルの男の方が答えてくれた。


「僕たちは、ここから脱出することも視野に入れているんだよ。あんなよくわからない化物の言う『ゲーム』が本格的に始まってしまう前にね」


 要は、脱出できるかどうかの下見に海に行くってことでいいんだろうか?

 無人島脱出計画とか、悪魔様の転移魔法でおじゃんになる未来しか見えないぞ?


 それに加担して、悪魔様の心証が悪くなることの方が問題な気がする。

 となると、こいつらとはここで分かれた方が得策か?


 うっすらとではあるが警戒心が芽生えてきたので、集団からフェードアウトすべく歩調を緩めることに。

 ところが、俺の企みは愛音君によって阻まれた。


「先輩、早く歩いてください」


 そう言うと愛音君は、俺の隠密行動を妨害するかのようにぐいぐいと背を押す。


「お、おう……」


 退路は断たれた。

 ブルータス、お前もか!

 今更おかしな言い訳を並べてこのグループから離脱するのも、のちのち角が立ちそうではあるし、まあいいか。

 そうやって自分を納得させ、俺は仕方なしにチャラ男グループに着いて行くことに。


 ちなみに、海に行くまでの道中でチャラ男たちの考えをある程度知ることが出来ていた。

 そこで分かった事であるのだが、どうやらこいつらと俺との間には、現在置かれている状況に対して認識の乖離があるみたいだった。

 それがどういうことかと言うと、コイツらは『ワープの実験の事故か何かでこの島に閉じ込められた』と考えているようなのだ。


 この世界に来て五分後くらいの俺と同じ思考である。

 事故で行方不明になったのなら、誰かが助けに来てくれるはず。ならば、それまで悪魔様から逃げきれればデスゲームなんてしなくていい、という考えなわけだ。


 カップルの男の説明によれば、この惑星は太陽系外のハビタブルゾーン内にある地球型惑星であるらしく。その場合は、地球外生命体がいる可能性が高いとのこと。

 さらに言えば、この無人島からの脱出は地球外生命体とコンタクトを取り、助けを求めることも視野に入れているのだとか。


 ……ぶっちゃけて言おう。

 何言ってるのか、全然頭に入ってこなかった。


 一応頷いてはいるものの、カップルの男の声は途中から俺の耳を右から左に素通りしている状態だったと言っていい。


 おそらく、それは愛音君も同じに違いない。

 その証拠に、さっきから口数が減っているしな。

 俺よりもおバカな愛音君が理解できるわけがないのだよ。


 すると、いつの間にか俺の横にやって来ていた愛音君が口を開いた。


「えっと……そうなると、あの悪魔の力についてはどう説明するんですか?」

「そのことについては、『僕たちの脳内にあるチップに干渉されたんじゃないか?』という考えで意見が一致したんだ」


 つまりこの男は、悪魔様だけじゃなく、悪魔様が見せたチカラすらもチップが見せた幻覚であると言いたいんだな?

 やっぱり、何を言っているのか分からない。


 だったら、この世界が仮想現実であるとした方が、まだ現実的な論に思える。

 世界の技術の粋を集めた脳内チップのセキュリティを掻い潜り、俺達十三人の肉体を拉致るなりなんなりして、仮想世界に閉じ込める。

 その方が、『他の惑星に飛ばされて知的生命体から干渉を受けた』とかいう、荒唐無稽な主張よりよっぽどいい。


 ただし、仮想現実世界論を受け入れてしまった場合は、俺達に救いがなさすぎる。

 なぜならその場合において、俺達は誰かの悪意によってこの世界に閉じ込められている、ということになってしまうからだ。

 そんな世界で行われるデスゲーム。

 絶対ろくなもんじゃない。


 それになにより、俺はそんな恨みを買うようなことをした覚えはない。

 なんせ俺は善良なる一般ピーポーだからな!


 結局のところ、コイツらと俺は相容れないということが分かっただけだった。

 俺はまだ、この世界が異世界であるという希望を捨てていないんだ。

 そんなトンデモ論を押し付けようとしないでくれ。

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