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テーマ詩集:果樹園

リンゴがまんなかの世界

作者: 歌川 詩季

 エデンの園、の話ではありません。

 枝がどうして 赤く色づいた果実を

 てばなしてしまったのかは わからない

 まるく熟した その重みに

 耐えきれなくなったのかもとは思う

 ぷつりと切り離されたリンゴは

 すとんと大地のうえへ


 枝がつなぎとめておけなかった果実を

 うけとめてあげたように見えたかもしれない

 でも それは地球がまんなかの世界のはなし


 リンゴがまんなかの世界では

 赤い果実は 高いところで揺られて

 つながれて生きるのに 嫌気がさして


 枝を切りはなして あっちいけすると

 だいたんにも 地球にむかって こっちへおいでした


 これには ニュートンもびっくり


 地球がまんなかの世界では

 大地がリンゴを抱きとめたし

 リンゴがまんなかの世界では

 赤い果実が地球をよびつけた


 万有引力にも 新たな解釈


 なのに みんなは やっぱり

 リンゴが大地に落ちたって 口にする



 太陽がまんなかの世界では

 地球を ぐるぐるまわしているし


 地球がまんなかの世界では

 太陽が のぼって しずんでる

 それこそ 毎朝 毎晩

 年中無休で 出退勤をくりかえさせるだなんて

 地球が とんでもないブラック企業だったとは


 これでは ガリレイもがっかり


 それでも

 天動説と 地動説には 穏便な決着


 これなら コペルニクスもにっこり


 だったら 月がまんなかの世界だと

 満ち欠けする地球が 月のまわりをぐるぐるまわって

 さらに 太陽が そんな地球のまわりをぐるぐるまわる


 あぁ なんだか ややこしい


 そして みんなは なんでか

 地球が 太陽をまわってると思っているくせに

 太陽が のぼっては しずんでくと 口にする



 リンゴがまんなかの世界も

 地球がまんなかの世界も

 太陽がまんなかの世界もあるんだから


 ぼくがまんなかの世界も

 きみがまんなかの世界も

 知らない だれかがまんなかの世界もあるんだろう


 たくさんのまんなかがある世界なのに

 たったひとつのまんなかを名乗って 陣どるために

 いがみあって けんかするなんて

 だれがまんなかの世界から見たって

 そんなの ばかげてるんじゃないかな


 リンゴは リンゴがまんなかの世界を生きればいいし

 地球も 太陽も ぼくだって

 自分がまんなかの世界を生きればいいんだよね

 だけど

 ほかの だれかがまんなかの世界だって

 あるんだよって知ってたら

 ほかの だれかがまんなかの世界だって

 それなりに 大切にできたのなら


 ニュートンも


 ガリレイも


 コペルニクスだって


 そろって にっこりしてくれるんだろうなって思う

 物理は、だめでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても素敵な視点だと思います。 だれもが、こういう想像は、 一度は気にしたこてがあるのでは、と思います。 地球の果てはどうなってるかとか。 私も小さいとき、地球の自転を習ったころ 東に…
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