第7話
いつもと違う展開がまだ続くので、お読みになる際はお気を付けてお読み下さい。
ですが、ひかりと他のキャラの可愛い掛け合いがまた増えてきますので、そちらのほうもお楽しみ頂けると幸いです。
「黒マントの使っていた、ラインカーがある」
美実先輩が指差していたのは、体育倉庫の中だった。
第2棟の裏側は校舎になっている。そのため、体育倉庫が校舎裏近くに設置されている仕組みになっている(らしい)。
アタシは、倉庫を指差したまま外で立っている先輩をよそに、倉庫の中へと入っていった。
倉庫の横幅は、3人の人間が両手を広げた時ぐらい。縦は2人ぐらいかな。まぁまぁなスペースはあるって感じ。
うっわぁ〜なにこれぇ、けむたいなぁ。もうちょっと掃除しておこうよ、ケホケホしてるよぅアタシ。
「みみはね……今日の部活に使える物無いかな〜って……探してたんだ」
「そうだったんですね。じゃあ、ホントに黒マントで変なお面被った人は見なかったんですね」
「うんうん……」
でも、ここにはラインカーがある。だが……黒マントはいない。
あの声が本物だったと仮定すると、黒マントはラインカーを置いてどこかに雲隠れした事になる。じゃないと、説明がつかない。
それだけじゃない。あの黒マントとお面が見当たらないという事により、この状況を更に複雑化している。
周りを見ればもしかしたら黒マントもお面も見つかるかもしれないが、見つかったとしたら明らかに美実先輩が黒マントの正体となる。
だけど、美実先輩が黒マントだとして、動機は一体なに? 全く分からないよ。
大体、学校であんな格好をしてラインカーを引いて歩く行為の意味なんて、誰が想像つきますか。
「美実先輩は、この体育倉庫で何を探そうとしていたんですか?」
倉庫の中から先輩のほうを向いて質問する。
「う〜ん……気分だから分からない♪」
ずこぉっ! なんですかその天然娘みたいな台詞ぅ! でも確かになぁ、いつも天然な事しか言ってないからなぁ。
気分ってだけで片付くパターンもあるよなぁ。そう考えたら、この人が黒マント着てセンターセンター言ってても違和感ないですねぇ。あにゅう。
いや待って……そういえば美実先輩、校舎裏で何か話してたよね。それって、何かこれと関係してるのでは??
とりあえず、お面を探しながら聞き出してみようか。
先輩に背を向けて、捜索を始める。
「先輩。先輩って今日、授業終わった後に何してたんですか?」
けむたい倉庫を漁りながら、自分には姿の見えない先輩に質問を投げかけていく。
「う〜ん。授業終わった後はぁ……ちょっとボーっとして……何したかな……何したと思う?」
それを聞いとるんじゃあい! 天然の域を越えてるでしょそれもう!
「先輩……なんかアタシ、先輩の将来が不安なんだけど大丈夫ですかね」
倉庫内をあっちこっちしてガサゴソと捜索を続けるが、まだお面は出てこない。
「えぇ〜……大丈夫だよっ、みみは部長だもんっ♪」
「だからそれが心配なんですよぉ〜! あにゅう〜」
「あっ、思い出したよ! えっとね〜……みみはねぇ……"校舎裏でお話してたよ"」
捜索をしていた手がピタっと止まる。
「ど、どこでですか?」
美実先輩のほうを振り向く。先輩は、以前としておっとりした表情を浮かべたままだった。
「そこの第2だよぉ……」
「どんな話をしたんですか?」
「うんとねぇ……お友達がね……バイトに行くのが面倒だから、店長の『みくのちゃん』を騙せないかって言われたんだけど……みみには出来ないから断ってきたの」
「そ、その友達って、悪い人なんですか?」
食い気味に、前のめりに質問をする。
「ううん! 全然悪い人じゃないよぉ。とっても頑張り屋さんで……友達想いというか……情に深いというか」
えっと、そうすると……状況を整理しなさい優谷ひかり!
現時点では、お面と黒マントが見つかっていない。という事は、誰かがそれだけ持って雲隠れしたんだ。
その人は今現在も逃走中で、目的は不明である。
そして、美実先輩は今のところ黒マントの可能性はなし。友達と怪しい話をしていたが、証拠がないのでまだなんとも。
大丈夫なのかな、色々と。状況を整理しても、不明な事ばかりだし。
あにゅう……でも、1つだけ分かった事がある。
「良かったぁ! 美実先輩の話し相手が、不良じゃなくて!」
ニコッと先輩に微笑むと、先輩も優しく微笑んでくれた。
そう! 先輩に危険は何もなかったって事が分かったのさ! 凄く嬉しいよ!
てことで、先輩にぎゅーっと抱きつきます!
「わっ……! びっくりしたよぉひかりちゃん……。いきなり抱きつくし……。それに、みみとお友達が話しているの聞いてたの?」
まぁね……ちょっと怪しい感じで聞いてた上に、くしゃみが出そうになって悪戦苦闘するとかいう意味の分からない展開続きでしたけどね。
「そ、そうですね! 先輩が居たので、声掛けようとしたんですけど、凄い速さで走っていくから気になっちゃって。盗み聞きしてごめんなさい!」
謝りながら何故か抱き締める力を強めるアタシ。疲れてるのかな? なんか癒やされてきちゃって行動もおかしいや☆
「そうだったんだね……嬉しいな。みみに話し掛けてくれようとしたなんて……。もう……ひいきしちゃうぞこのこのぉ……♪」
先輩も何故かアタシを強く抱き締める。お互いの力が強すぎて、もはやプロレス技を掛け合う一歩手前。
まぁとりあえず、一件落着かな? 萌奈先輩は、女幽霊っぽい誰かを倒すなんて簡単だろうし。
後でもう一度見に行かないとなぁ。みこちゃんもチョーー心配だしね。
とりあえず黒マントとか美実先輩とか怪しいけど、萌奈先輩の所の問題が終わったら考えてみますかぁ。
「はぁ。今日もひかりちゃんは可愛かったわね」
抱き合う体制から離れて、お互い見つめ合うような状態で会話をするアタシ達。
いやぁ〜それにしても、色々と忙しかったから"今日の皆の可愛さ"チェック出来てないんだよねぇ。
じゃあ手始めに、美実先輩をチェックしますか!
まず先輩は、金髪のロングヘアーでポニーテールをしている。前髪は目の上で揃えてて、形はギザギザのM字気味。
2重でジト目、色白の肌、身長はなんと149cm。夏ノ目心高校の黒のセーラー服を着ていて、青ミニスカに黒タイツを履いている。声は透き通った癒やしボイス。
それでこのおっとり系って……かかかかかわゆいいいいいいい!!!!! あにゅう!!
よし。心も満たされたし、萌奈先輩の所に戻って状況を把握しよう。
「みみはこれから……部活の許可証にハンコ貰いに行くからまた後で会おうね……」
「分かりました! 気を付けて行ってきて下さい!」
お互い手を振って、その場を立ち去る。そのままアタシは、萌奈先輩の所へと向かう。
ふぅ……。色々と疲れたなぁ。ニッセン部には数日前に入部したばかりで、活動も始めたばかりだけど、疲れるもんなぁ〜。
なんか、部活と似た疲れを感じるよ。あにゅう。まぁ……なんだかんだちょっと楽しんでる自分がいるのは否めないんだけどね♪
……黒マント。凄く気になる。てか、あれが野放しになったらヤバいよね。
不審者だもんね。それに、女幽霊もね。ずっと考えているけど、やっぱり今日は何か変だよ。
凄く凄く。――あっ。まさか……まさかだけど、もう部活が始まっているとかないよね? それならば、ニッセン部が色々と関わってる事も辻褄が合う気がするんだけど。
…………これは考え過ぎなのかな? いや、こんな非現実的な格好をした人物達がいるのだから、考え過ぎとかはないのかもしれない。
まぁ、ニッセン部のおかげで、日常の何でもない事に対して真剣になる癖が付き始めてるからねぇ。
職業病みたいな物かもしれないね――変な事実に対して、すぐにのめり込んで考えちゃうのは。
「おーい! 後輩ー! 女幽霊やっつけたマヨー!!」
考え事をしていたアタシの耳に飛び込んできたのは、萌奈先輩の声だった。
気づけば、萌奈先輩の居た場所にもう着いていたみたい。
「やっつけたんですね! 良かったぁ〜。で、これからその人どうするんで――えっ、なんで?」
"なんで黒マントとお面が、女幽霊の近くにあるの"?