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第1話

 女の子達が、色んな遊びをする日常青春物です。気軽に読んで貰えると幸いです。

 "ツルっ"という、上履きから発せられる嫌〜な音。その出所は……アタシの左足だった。


 あぁ……このままいくとちょっと左側に倒れ込みながら、左手と右手で受け身とって変な風に体痛める奴だよこれ〜。あにゅうぅ。


 ん……? 左側? あー…………優莉乃(ゆりの)先輩にぶつかってしまうではないか!!!!


 アタシはこの倒れそうになるたったの3秒の間で、どれだけの思考を詰め込んでいるのだ!?


 そんでもって、先輩にダイレクトひかりちゃんアタックをお見舞いさせない為にもどうすればいいのだ!?


 あっ。これっ。もう〜考えている余裕ないですねっ。


 あれ〜〜。どうにかこうにか、ミギガワニ倒れ込め〜。オリャ〜。


「えっ!? ひ、ひかりちゃん!!」


 教室から皆の声が聞こえた。あぁ……入部して早くも、優莉乃先輩にご迷惑をお掛けしてしまうとは……。


 一生の不覚かも……やも……。


 ガバッ。


 あぁ……倒れちゃったよ……。アタシ、先輩にぶつかっちゃったよ……。先輩の腕が背中に当たってる〜あにゅうぅ。


 あぁ〜先輩の良い匂いがするなぁ〜。なんか少し宙ぶらりんになった気持ちだなぁぁぁぁ――ぁぁ宙ぶらりん???


「大丈夫かい? ひかり。もうっ、入部出来たのが嬉しいからって、そうはしゃぐでないさ。まぁ……君にケガが無いのなら、私は安心だ」


 あっ、あっ、あにゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!??


 ままままま、待って! アタシ……優莉乃先輩に抱っこされてるんですけど! あにゅにゅにゅ……えっと、ど、どうしよう!


 ど、どうすればいい!? あ、頭がパニックだよぉ! えっ! えっとえっと! あにゅっと! 


 ……ま、まぁ。優莉乃先輩の良い匂いを嗅げたり腕に抱かれたりしたから……これはこれで良いかも、やも。あにゅぅ☆


「あっ、えっと……あぁりがとうございます。へへっ。ごめんなさい、ついついはしゃいじゃって。せ、先輩は大丈夫ですか?」


 先輩は中腰のような状態でアタシを抱き、アタシの両足は地面で両腕は宙ぶらりん。


 半分お姫様抱っこみたいな感じで、アタシを抱き締めていた。いやチョーーカッコよぉ!!!!


 ん? てかアタシ、なんで仰向け? うつ伏せに倒れた(はず)では?


「私は大丈夫だよ。それなりに鍛えているからね。マッソーマッソー♪ ……なんてね。でも良かった……うつ伏せに倒れて、君の可愛い顔が台無しになったら私も悲しかったよ」


「あ、あにゅっ!? ななな、何を仰ってるんですか!!」


「おや? 私は本気で言ってるんだよ? だからこうやって、わざわざ仰向けにしてまで、君の顔を見ようとしてるんじゃないか」


 そう言って、アタシに顔を近付けてくる優莉乃先輩。まっ、待って! 


 先輩の顔が美し過ぎてアタシのライフはゼロよ! の状態になるんですけど!


「いやいやいや!! こんなどこの鹿の骨とも分からないような奴の顔を可愛いだなんて!!」 


 アタシは、赤面しながら先輩の顔を遠ざけさせる。


「ここから徒歩15分程で着く、メェヨクナルケドキチャウガンカ? さんに行った方が良いと思います!」


 恥ずかしすぎて、家から徒歩1分で着けたとしても絶対に行かないであろうぼったくりヤブ医者臭のする眼科の名前を出してしまった。


 あにゅう……。本当に存在していたら、出来るだけハートフルな眼科である事を望みますよ。

 

 そして、先輩の腕から離れたアタシは、端から見ても分かるほどモジモジした態度で立ち尽くしていた。


 指をモジモジしたり、真っ赤になった顔を抑えたりね。


 だってぇ……恥ずかしいじゃないですかぁ〜! あにゅうぅ。


「ふふふ。本当に面白い子だね、ひかりは。君は私達『日常を鮮やかにしてやるぜ部』の部員ではないか。どこの鹿の骨――いや、動物違いだね。どこの馬の骨とも分からない奴ではないさ」


 そう言いながら、優莉乃先輩はアタシに顎クイをしてきた。え!? 令和のこの時代に顎クイが存在したんですか!?


「それに――君の可愛さは天下一品。いや、宇宙下(うちゅうか)一品だ。私の目に狂いは無いよ。クルッイー♪ クルッイー♪」


 あ、あにゅう!!? か、顔がぁ……少しだけ近付いたらこれキス出来ちゃうのでは!?


 どどど、どうしよう。え? てか、なんでアタシはキスなんて考えてるの!? 何事!? と、とにかく。


 ――事故が起きないように先輩を止めなきゃ! ていうか……マッソーとかクルッイーとか……なんか先輩のセンスちょっときつ……。


「せ、先輩。皆見てますから……ちょ、恥ずかしいですよっ。ダメ! なんかそういう感じの奴ぅ……ダメ!」


「ほう……。君はとても可愛いのに……残念だ。薄緑色のショートヘアを、ライトブルーのシュシュでツインテールにするその可愛さのセンス。ギザギザの前髪……なんて可愛らしい」


 わっ、ちょちょ! 逆に怪しい方向に行ってませんか!? ていうか、同学年や先輩の皆はなんで止めないの!? 


 そういうプレイなの!? 傍観するだけって良くないと思うんですけどっ(プンプン顔)!?


「そして、大きくて可愛らしいタレ目。愛らしい唇。成長盛りでかなり発達しているお胸、スラッとしたくびれに美脚。これを美少女と言わずになんと言うのかしら。ビッショージョー♪」


 せ……先輩? なんか……アタシの中の先輩像崩れてるんですけど……だ、大丈夫ですかねこれ? 


 ジャナクテ! DA! KA! RAaaa!!!! 誰か止めましょうってこれ!!!!


 ね? 分かる? 節度って物知ってる? 


 常識って知ってる? 愛って知ってる? 君らに慈悲(じひ)とか慈愛(じあい)の心ってある? ハハハ……♪☆


 ――ないみてぇDANAA! マジでアタシのきたねぇオペラボイスぶちかましますよ(ドスの効いた心の声)!?


「こら! そこで何やってるのアナータ達!」


 こ、この声は!! 


 アタシ達がいる廊下の端から端の距離は、推定でも20mほど。廊下の両端と真ん中の場所には、1階や3階を上り下りする階段がある。


 そう……その声は、アタシ達がいる真ん中のフロアの下の階段から聞こえてきたのだ。


「エセ英――(うるさ)先生!!」


「今日は『ニッセン部』の活動許可なんて、下りてないワーヨ。ていうか、そこの2人は一体何をやってるノーヨ」





○●○●






〈ひかりと優莉乃がクイズ対決をしてた時の事〉


 麻優宮(まゆみや)みこは、まだ数回しかいっていない日常を鮮やかにしてやるぜ部――略してニッセン部の活動をしていた。


 みこは黒髪のショートヘア、前髪は左側に流すように巻いてある。


 2重の主張は抑えめで、妖艶に輝く大きな目は少し釣り上がっており、色白な肌と薄ピンクな唇、大きな胸、163cm程あるスタイル抜群な身長も相まって大人っぽさがかなり際立つ。


 近寄りがたいオーラも放っている――そんなような美貌を持つ女の子だ。


 ――初めての高校、慣れない部活、新しい同級生、そして先輩方。慣れない事だらけで疲れる。


 だが……親友の優谷(すぐるや)ひかりと一緒の部活なのだ。慣れない事への不安も、きっと取り除けるであろう。

 

 ひかりがいればなんとかなる。彼女は、親友がいるという安心感で心が一杯だった。


 丁度その親友が今、憧れだと語っていた桜守(さくらもり) 優莉乃(ゆりの)先輩とクイズ対決をしている。


「さぁ、優谷ひかり。あなたのクイズを教えて頂戴」


 噂をすれば、という奴なのか。廊下の方向から、優莉乃先輩の声が聞こえてきた。


 これはきっと、ひかりに言っている台詞だろう。


 今この瞬間、ひかりは、先輩と活動出来る事に胸を踊らせているだろう。


 そして、どんなクイズを出してやろうかと、ワクワクしているのだろう。

 

 そう思うと、彼女自身も胸が熱くなった。


 ひかりの次はみこの番だ。


 自分の番が来るまで待つしかないが、ひかり以外の人との交流がまだない彼女には話し相手という存在がいないのだ。


 寂しいし暇ではあるが、みこは割と人見知りをしてしまう性格の為、話し掛ける事がなかなか難しい。


 この性格も直したいと思っている、けれど人間というのは過去を思い出すと踏みとどまってしまうものだ。


 トラウマなんて物は存在しないと本で読んだ事があるが、彼女にとってその過去はトラウマではない物なのだから、尚更厄介であろう。


 とはいえ、それに甘んじていてはいつまでも人間として進歩する事は出来ないのだけれども。


 みこは、仲良くなりたい気持ちと人見知りしてしまう気持ちの右往左往を繰り返したのち、ひかりの事を考えながら1人教室で待つ方向に気持ちを落ち着けた。


(ひかり、今日も楽しそうにしてて可愛いかったなぁ。『優莉乃先輩がね! こうでね!』ってはしゃいじゃって、ふふ)


 ひかりの事を思い出し、微笑みを見せるみこ。


(んまぁ、ひかりがそんなに好いてるって思うと、優莉乃先輩にはちょっと妬いちゃうんだけどね。でも……ひかりの好きな事だし、うちがとやかく言う事じゃないかな〜って思う。親友だからこそ、うちがウルトラ1番理解してあげたいんだ)


 ひかりに想いを()せる。これは彼女の日課のような物になっている行動の1つ。


 何故このような事をするのか、それは彼女自身もあまりよく分かっていない。どう解釈すれば良いのかも分かっていない。


 ただ何か言える事があるとするのならば、それはきっと、みこにとってひかりがたった1人の親友だからという事なのではないかと思う。


 特別な想いも(いだ)いているし、その想いは誰よりも強く持っているという自負もある。


 その気持ちは、まるで独占欲の強い恋人のようにも捉える事が出来る。


 いずれにせよ、麻優宮みこという女の子が優谷ひかりを溺愛してるという事実は確かなのであろう。


 余談だが、みこはひかりを好きすぎるという想いに気付くと、勝手に1人で赤面するという癖がある。


 我ながら色々と恥ずかしいと思ってしまい、誰も見ていないのに赤く染まった頬をよく手で抑えているのだ。


 今現在も御多分(ごたぶん)に漏れず、頬を手で抑えている事に驚きを隠せない。


 ――だがそんなみこの嬉し恥ずかしな想いとは裏腹に、事態は一変する事になる。


 みこは教室がガヤガヤしてる事に気が付いた。


 そして彼女は、そのガヤガヤが先輩方の声であり、校庭側の窓付近から聞こえてくる事にも気が付いた。


 気になったみこは、のそのそと先輩方に近付いていった。


「あっ、みこちゃん。なんか凄い事になってるよぉよぉ」


「せっ、先輩、ウルトラな何かがあったんですか?」


「えっとね、あれ……この望遠鏡で窓の外を見て」


 みこは言われるがままに窓に近付き、望遠鏡を使う。そこに映し出されていた光景は……。



『はがゆいぞ おくりびと ぼくのきみ さがすんだ あのきみを』


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