1話:王女への手紙
この作品はフィクションです。
実在するすべてのものに関係ありません。
誰の文章でしょうかという企画に出したものです。
プロットは+-さんが担当しました。
ハイリレン共和国とフレスベルク王国が友好条約を結んで二年が経った。それを記念して両国の代表者がフレスベルク王国の闘技場で戦うこととなった。
ハインリレン共和国の代表者であるアルバートの元に書類が届いた。見ると、そこには見慣れない文字が並んでおり、めくっていくとハイリレン共和国の言葉に通訳された言葉が載っていた。
「何々……あぁ、今度の異文化交流武闘会のことか」
それは今度行われる武闘会の脚本だった。
武闘会と聞くとただ戦うのを見世物にしているだけのものだろうと他国は思うかもしれない。だが、ハイリレン共和国の武闘会は見世物であり、娯楽に近かった。客席が舞台に近く、魅せる技をくり広げたり、一人が倒されると急に客席からちょっと待った! と真の本命である第三者が乱入したりなど、観客が見ていて楽しめるショーになっているのだ。今まで七十八戦七十八勝を勝ち取ってきたアルバートも魅せる戦いをしており、どうすれば観客を楽しませて美しく勝てるかを考えて戦っている。
だが、今回は異文化交流だ。向こうの文化がいまいち把握できない。なのでフレスベルク王国の天才脚本家と言われているらしいオレガ・オリナシに今回頼んだのだが、ざっと目を通してアルバートはぎょっとした。
「え……? これフレスベルクの人が書いたんだよな?」
何度も見直した、翻訳の人が間違っていないかとも疑えた。
「文化の違いってやつか? フレスベルク王国で開催されるから、俺が完全アウェーなのに、この対戦相手の覇王って完全にヒール扱いじゃないか」
最初にマイクパフォーマンスをするらしく、そこに注意書きでひたすら煽って盛り上げてほしいと書いてあった。
「え……覇王って、女なのか?」
煽るための相手の個人情報やコンプレックスなどが一
枚の紙にびっしり書き込まれている。似顔絵も書いてあって、色の白い銀髪の美少女だった。
「リリアナ・フレスベルク。第三王女で覇王。よく言えばスレンダー美人だが、ぺちゃぱい。だが身長もメリハリボディもあるので幼女ではない。第三王女と己の実力でお見合いをけりまくっている。本人はそれを誇っているのだが、ただの嫁の貰い手がないだけである。三才の時、国宝を壊してしまい罰として白の間に入れられてから真っ白の光が苦手。同じく三才の時、おねしょで世界地図を描き、罰として布団を国営美術館に展示されたことがある……えらくかわいい情報ばっかりだな」
思わずぷっと噴き出して、アルバートはいかんいかんと首を振る。仮にも第三王女、しかも今回の異文化交流試合には友好関係も含まれている。
「失礼のないようにしたいけど、煽れって書いてあるしなぁ。そういう文化なのか?」
だが、資料を見ると覇王とはフレスベルク王国一強い人という意味らしく、かわいいなと思っても油断はできない。
「で、その国一強い人と戦って、毒霧くらって、大魔術暗黒崩壊破を直撃で受け止め、最後に俺が聖光天滅を放ってフィニッシュ……無理だろ、確実に俺死ぬだろ」
暗黒崩壊破が暗黒太陽、強い、しか書いていないのでわからないがとにかく強そうなのは伝わった。
「向こうの文化がよくわからんな……仕方ない、資料を基に煽るか」
フレスベルク王国の実況煽るなどを参考にして、なんとかアルバートは脚本を完成させていった。