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☆3☆共鳴

 先代村長の護衛として働いていたホウセンとマリーゴは、護身術や剣と槍の使い方を教えた。闘いの必要がなくなった現在では、この村に2人よりも強い者はいない。村外れにある森で行われているこの訓練は、秘密裏に実行されている。人目につくと、悪魔を育てているのかと誤解される可能性がある。この双子は、悪魔と闘うのだ。空を見れば分かる、悪魔の支配は続いている。この平穏は永遠ではない。

 ヒオーギとルピナスでは、成長速度にバラつきがあるようだ。

 ルピナスは、頭脳明晰であることは承知していたが、運動は全くダメで、ヒオーギはその真逆だ。

 あの夜の出来事でも、ヒオーギが投げた短剣は、グロリオーサの幻影の心臓付近を貫いていた。あの暗がりの中でも、ヒオーギの眼にはしっかりと見えていたということだ。


「……もう……無理。休ませて」

 マリーゴの突く槍に足を取られ、息遣いが荒く座り込んでしまったルピナスは、大量の汗をかいていた。髪から滴るその汗は、周りの雑草を枯れさせた。


「うーん、ルピナスは能力を実戦でどう操るかを考えた方が懸命じゃないかな」


 マリーゴの言いたいことは分かる。ルピナスは、闘う上で戦力になるのか。動かないものだけに、能力を発揮できても意味がない。しかし、ホウセンは護身術を優先した。もう、誰も死なせたくはない。その思いが人一倍強い。


「ルピナスは、身体で動こうとしてもダメだ。その頭脳を活かそう」

 相手の一手先を読むんだ。剣を振り上げたときは、すぐさま距離を取るために、後ろへ下がれるようにする。槍を突き出そうとしているときは、横へ移動し、槍を掴み相手との距離を縮める。

「勝とうとしなくていい、負けないようにしよう」


 ホウセンの言葉に、ルピナスは、取り除けなかったモヤモヤを晴らしたような気分になった。

 マリーゴとの特訓を再開する彼女は、避けるのに磨きをかけ、ついには攻撃を一度も受けることがなくなった。


「槍を突き出したときは、横に避け、一気に距離を縮める。そして……」


「俺が、攻撃するんだ!」


 ルピナスに槍を押さえられたマリーゴは、手出しが出来ない。剣を振り上げたヒオーギが飛び掛かり、槍を真っ二つに切った。

 共鳴した双子のパワーに敵うものはいない。そう信じて疑わないヒオーギと、2対1は卑怯だったかなと反省するルピナス。

 

「これなら、やっていける。二人でならきっと切り抜けられる」


 ホウセンとマリーゴも自分達よりも強くなったのでないかと思う程、上達速度が早かった。

 ルピナスは、マリーゴとの距離を縮めた時、瞬時に足元の雑草を成長させ、(つる)を足に絡めさせた。ヒオーギも剣を振り上げる一瞬で、剣先に火花を散らした。ほんのり焼けた跡の残る槍と、草履に巻き付いた草が彼らの凄さを物語っている。

 





 とき同じくして、村の門戸で不審な者が近づこうとしている。だんだんと風が強く吹き始め、突風が枯れ葉を巻き上げた。

☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から散らつかせた火花での攻撃が特徴

     



ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     流す涙には時間を操れる効果がある





___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________



リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     



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― 新着の感想 ―
[良い点] 双子の兄妹の感情の表現がとても丁寧で感情移入しやすかったです。 それぞれの持つ能力について、まだまだ応用ができそうで二人のこれからの成長に思いを馳せる楽しみがあります。 [一言] とても素…
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