☆29☆満月の日
月の光が差す夜。満月の日だ。かつて人間は、悪魔に生け贄を捧げてきた。そしてそれは、悪魔が根城にしていた紫山の大噴火による天災で滅んだことで、解放された。しかしながら、それを予知していたかのように、子孫を残すことには成功している。それが悪魔の子だ。悪魔特有の能力を受け継いだ子供たちが、この太陽に見放された世界で躍動している。
悪魔族の族長のグロリオーサに母の魂を取られた双子兄妹と、生を受けたことに感謝する双子姉妹。そしてその双子に追従する者たち。自らの運命であるかのように、彼らは務めを全うしようとしている。
そして、微かに映る黒い影もまたその一人のようだ。
◎ ◎ ◎
禿山に月光が射す。そこに姿は見えないが、必ずグロリオーサはいる。リリーの魂を取ったことで、力を取り戻しつつある彼は、復活の時を待ちわびている。
「うぉぉぉぉぉ!!!!!」
地響きと共に唸り声が轟く。世界をまた支配下に置こうとする悪魔が、村の皆を不安にさせる。そんな最悪な事態をホウセンもまた、対応していかなければならない。
あの頃と違う点は、ヒオーギら悪魔の子がいることだ。彼らにばかり頼るわけにはいかないが、世界を救うには必要な力だ。
村を出た2人を思う気持ちは、親心のように心配だ。ホウセンは、雲間に見える月を眺めて2人の無事を祈った。
「あの御守りがきっと、ヒオーギとルピナスを守ってくれる」
その目は淀みなく輝くように、月を映した。
◇ ◇ ◇
「クルクマ!」
アネは、爪の彼を呼んだ。名のない彼に、通り名を付けた。彼も名前自体に関心はなく、呼び方なんか気にしていないようだ。
「そこの葉が、月を邪魔しているから刈ってちょうだい」
言われるがまま彼は、自身のもたれていた木の葉を伐採し始めた。その爪の鋭さは健在だ。
「もう満月なの」
モネは、グロリオーサ復活を急ぎたいようだ。アネはただ、綺麗な月を眺めたいだけみたいだが、彼女は先を見据えている。
その三人の姿を後ろから見つめるのは、ヨモギだ。彼女は、ずっとこの状態が続けばいい、そう願っているような眼差しだ。
☆ ☆ ☆
ヒオーギたちもまた、月夜に思いを馳せる。満月の夜に母の魂を失った。グロリオーサの幻影を見た兄妹は、悔やみきれない。特に彼は、一矢報いることさえ叶わなかった。その時の感情が2人を覆い尽くす。
『水氷放射』
ネリネは、私もいるよと言わんばかりに水を浴びせた。その冷たさは、ヒオーギの眼によりただの水へと変化した。
「辛気臭い顔しないの」
まだまだ大丈夫だよ。そう励ます彼女の手は、微かに震えていた。家を出てきた彼女は、まだ何も成し得ていない。早く立派になりたいが故、2人と同様に焦っている。
「ごめんね」
ルピナスは、そっとネリネの手を握った。
これから先、3人は如何にして成長していくのか。課題は山積みだ。希望の花を探し出し、グロリオーサ復活を阻止し、母を救う。そんなに上手くいくのか、活躍次第でどうにでもなる。それは反対に、全て失敗することだってある。
皆の眺める月は、誰の味方なのか、はたまた敵なのか。太陽に見放された世界における月は、それほどに重要なのだ。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
水氷放射
螺旋水槍
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域
黒帽子の少年☆
必ず力になるとヒオーギと約束した




