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姉からの贈り物  作者: 秋田リリ
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日記

 妹が生まれた。

 向日葵という名前だ。

 私は妹を守り、尊敬される姉として頑張ろうと決めた。




 向日葵がハイハイできるようになった。

 そしていつも私のあとをついてくる。

 とても可愛い。




 おねえと向日葵が喋った。

 嬉しくなりつい抱きしめてしまった。

 向日葵は嬉しそうにしてくれた。




 向日葵はすくすくと元気に育った。

 向日葵は好奇心旺盛ですぐにどこかへ行ってしまうが、それでもちゃんと私の元に帰ってくる。

 しかし、心配なものは心配なので手を繋ぐことにした。

 向日葵は繋いだ手をブンブンと大きく振るった。

 そんなに嬉しいと少し照れてしまう。




 向日葵が小学生になった。

 私は向日葵の手を握りながら一緒に登校した。

 恥ずかしい気持ちはあるけど、なにより向日葵の願いだ。

 断る理由がない。




 テストで満点を取った。

 両親に褒めてもらった。

 妹も褒めてくれた。

 これからも妹に尊敬される姉として頑張ろうと思う。




 向日葵が泣いて私の部屋にきた。

 向日葵も両親に褒めてもらおうとしたのだ。

 けど、向日葵に向けられた言葉は言葉じゃなかった。

 溜息一つ。

 そして私を見習えと。

 私は両親のことが嫌いになった。

 向日葵は頑張っている。

 なのに、なんで『頑張った』その一言すらないのかと。

 だから私は。

 私だけは向日葵を褒めてあげようと思った。




 向日葵は学校での出来事を話してくれる。

 無邪気な笑顔を見せながら、その日あったことを一生懸命思い出して話してくれるのだ。

 なんて愛おしいのだろうか。

 この笑顔を私は守るのだと再び決意した。




 向日葵から綺麗な石を貰った。私の誕生日でも何でもない日だ。

『お姉ちゃんみたいに綺麗だからあげる』

 そう言われたとき、胸が熱くなった。

 心の底から本当に向日葵は私のことを綺麗だと思ってくれるのだと思うと嬉しかった。




 もしかしたら、いやもしかしなくても私は向日葵の事が好きだ。

 元々、向日葵のことは好きだ。けどこの好きは家族としての好き。

 一人の女性として向日葵のことが好きなのだ。

 だが、この気持ちはしまうべきだ。

 向日葵に尊敬される姉になるのだ。

 そのためにこの気持ちはしまうのだ。




 向日葵はまたプレゼントをくれた。

『名前は分からないけど、綺麗な花だからお姉ちゃんにあげる』

 私は押し花にして栞にすることにした。




 今度は私から向日葵へプレゼントすることにした。

 何を贈れば分からないから向日葵の好きなお菓子を上げた。

 向日葵と一緒に食べた。

 とても美味しかった。




 最近、向日葵が私の部屋に来なくなってしまった。

 これが姉離れなのだろうか。

 私はまだ妹離れしたくないのに。

 寂しい。




 向日葵が中学生になった。

 一緒に食事をする機会がなくなった。

 料理を覚えたらしい。

 私に料理の才能はないから羨ましい。

 友達に、恐くて見てられないから何もしないほうが助かると言われるぐらいだ。

 このことを向日葵に言ったらどう思うだろうか。

 それにしても向日葵の手料理食べたいな。




 向日葵が授業で分からないことがあると私を頼ってくれた。

 嬉しかった。

 向日葵の部屋に行き教えることにした。


 だけど、向日葵に分からない所を教えていたら。

 何かが向日葵の逆鱗に触れてしまったらしい。


『お姉ちゃん本当は勉強ができない私を見て笑ってるんでしょ!!お姉ちゃんはいいよね!!私とは違っていつも満点でさぁ!!』


 突然のことでビックリした。

 まさか、向日葵がこんなことを思っていたなんて。

 私は弁解の言葉を述べようとした。

 だが、向日葵は聞く耳を持ってくれなかった。

 私は向日葵の部屋を追い出され、ドアの前しゃがみ込み泣いてしまった。




 向日葵との会話は挨拶だけになってしまった。

 挨拶を会話と呼べるのかは分からないけど。

 あの日の出来事があって、私はどう向日葵に接したらいいか分からなくなってしまった。

 そして同時に後悔する。


 妹のため、向日葵のために尊敬される姉になりたかったのにどうしてこうなってしまったのか。

 どうしたらこの関係を修復できるのか。




 向日葵が高校生になり、アルバイトをするようになった。

 家で向日葵の姿を見ることはほとんどなくなってしまった。

 もう一度、仲が良かった姉妹に戻りたい。

 向日葵、お姉ちゃん寂しいよ。




 向日葵の友達から向日葵が一人暮らしするためにアルバイトを始めたことを聞いた。

 ショックだった。

 家族なのに。姉なのに。なぜ言ってくれないのか。

 これは向日葵による拒絶だ。

 そう思いと心が苦しくなってしまった。




 私はもう一度仲が良かった頃に戻りたい。

 閉ざしてしまった向日葵の心を開きたい。

 これが自己満足だというのはわかっている。

 それでも、好きな人に嫌われるのは思っていたより辛いものだ。

 一人暮らしをやめさせることはできなくても、私も連れて行ってはくれないかと思う。

 だから、明日。

 向日葵を誘おうと思う。


 何も言わないでいなくなるより、向日葵の言葉を聞きたい。

 その結果、向日葵に嫌われることになっても受け入れる。


 それでも私は、向日葵のことを愛してる。

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