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姉からの贈り物  作者: 秋田リリ
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想い出

 それからしばらくして、病院を退院した。


 入院しているときに親がお見舞いにきたが、形だけだった。

 特に残念がることはない。

 両親にとって私はそういうものなんだから。


 私は家に戻り、ベッドで目を瞑る。

 あの日の事を思い出す。

 姉の必死な表情。私を守るべくして行動した姉の姿。

 迫りくるトラック。

 また涙が流れる。


 私はお姉ちゃんとの思い出を縋るようにお姉ちゃんの部屋に行った。

 お姉ちゃんの部屋に入るのはいつぶりだろうか。

 昔はよく勉強を教えてもらったことを思い出して、また泣いた。


 お姉ちゃんの部屋には必要最低限のものしかなかった。

 こんなにも殺風景の部屋だったのか。


 私はお姉ちゃんが使っていた勉強机に向かい、椅子に座る。

 うつ伏せになり、私とお姉ちゃんがまだ仲が良かった頃を思い出す。

 この机で一緒に勉強をした。

 あのベッドで一緒に寝た。

 この部屋で一緒にお菓子を食べた。

 そんなことを思い出していると、鍵のかかった引き出しが空いていたのを見た。


 なんでこの引き出しだけ鍵が掛かっているのか聞いたことがある。

 たしか、大事なものをしまうのと大事なものをなくさないように鍵を閉めるのだと。


 私はその引き出しを更に開けて中身を見ることにした。

 お姉ちゃんはもういないけど、お姉ちゃんの大事なものは何だったのか気になった。


 その引き出しは、色々なもの詰め込まれていた。


 石ころ、落書きのような絵、押し花の栞、ラジオ体操のスタンプカード、感謝の手紙、手作り感満載の頑張った賞などいろいろなものが引き出しの中にあった。


 私はそれらすべてに見覚えがある。

 なぜなら、全部私が姉にプレゼントしたものだからだ。

 私はそれら一つずつ手に取り、そのときの記憶を思い出す。


 例えばこの石ころ。

 単純に綺麗な色と形をしていたからお姉ちゃんにプレゼントしたのだ。

 そして、落書きのような絵は多分幼稚園の頃に描いたものだろう。

 その絵にはお姉ちゃんらしきものと私らしいものがいる。

 汚いでかい文字で、大好きなお姉ちゃんへと書いてある。


 ああ、私はお姉ちゃんのことが好きだった。

 この場所で私のことを見てくれたのはお姉ちゃんただ一人だった。

 そんなお姉ちゃんを本当に嫌いになることはできない。

 だから、嫌いになろうとした。

 ごめんなさい、お姉ちゃん。

 私にはもう謝ることしかできない。


 私とお姉ちゃんの思い出を机に一つずつ置く。

 引き出しの中には思い出の中に埋まっていた封筒と一冊のノートが現れた。


 まず、封筒を開けることにした。

 中身は写真だった。

 その写真の中で私はいつもお姉ちゃんと一緒にいた。

 どこかの公園、リビング、お姉ちゃんの部屋。

 私はいつも笑顔だった。笑顔でお姉ちゃんのそばにいたのだ。

 お姉ちゃんは私との思い出を大事にしてくれていたのだ。

 嬉しかったと同時に後悔した。

 なんで大好きだった姉のことを嫌いになろうとしたのか。

 写真を一枚、また一枚と噛み締めるようにめくると最後の一枚になってしまった。


 最後の写真では私は中学生になっていた。

 そこに今までの笑顔はなかった。

 そして私とお姉ちゃんの間に隙間が出来ていた。

 ああ。このときか。

 私が家族から離れようとしたときは。


 私は写真をかき集めて大事に封筒にしまった。

 そして、一冊のノートを手に取る。

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