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チート転生者に最愛の妹は娶らせない!  作者: 千早一
第1部:【FATE】恋愛は運命から始まる。物語は因縁から始まる。そして兄妹は……
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第6章:その4

1章が長いため、分割しています。

今回は4000字程度となっています。


(前回と同様で、高ステータス頼りの魔法戦を挑んでくるのか? ……ん?)


 下手くそなラップで、ザクズがシークに語りかけてきた。




「YO! シークYO! 今日こSO! エルシィたそWO! もらうYO!」


「だが、断る」


 シークは素っ気なく返答する。


「……」


 その瞬間、ザクズの流れは終わってしまった。

 シーンと場が静まり返り、ダンスもラップも止まる。

 だが、ザクズは興醒めた空気を読まなかった――〝KY〟だYO!


「何でだYO! 何も減らないYO! 妹が減るだけだYO!」


「何よりもかけがえのないない存在が減ってるだろ。死ねよ」


「もう死んでるYO! ってか、別に良いじゃんかYO! 会わせてYO!」


「お前を目に入るだけでも、エルシィが汚れる。命と引き換えになっても、絶対阻止だ。たとえ死んでも、俺はお前を殺す」


 シークの発言に「よく言った! 最高だ!」とグールたちが称賛する。

 ザクズは「ぐぬぬ!」と悔しそうに唸り、諦めず、必死にアピールする。




「ぼ、僕は生まれ変わったぁ! クズだったのは〈転生者〉になる前のNEET時代の話! それも必要悪を甘んじて引き受けていたのだ……仕方ないのだ! それで良いのだ!レレレのレ!!!」


 ザクズが元々〈転生者〉だったのは事実だが、供述の全てが本当ではない。

 彼は『自分の自分による自分のための自己肯定』を正論だと思い込み、さらに調子に乗る。――この思い込みは一般的な〝クズ〟の定義とは異なるかもしれないが、コレがクズのクズたる所以なのだ。

 ただ、登場して間もないキャラを〝クズ〟と決めつけるのは良くない。

 とりあえず、先にザクズの言い分を聞いてから、判断しよう。




「そうだ! 転生後はクズではないのだ! 少なくとも、NEETではなかった! 〈大女神〉様に選ばれた〝選ばれし者〟だった! ……だから、『異世界嫁』を1人くらい恵んでくれたって良かっただろぉ!? 生まれ変わったんだから、幸せになって良いだろぉ!?」


 ――『誰にだって幸せになる権利はある』という点については同意だ。


「なのに……村娘をほんのちょっとだけ強引に宿へ連れ込もうとしたら、自警団の連中にズタズタにされ……サキュバスに少しだけリアルサービスを頼んだら、用心棒たちにボロボロにされ……世界を救う条件に性奴隷として王妃をよこせと要求したら、国王たちにズタボロにされ……こんなの僕が望んでた異世界ライフじゃない! 不幸だー!!!」


 ――さてさて、雲行きが怪しくなってきた。

 ――もう先に言っておこう。個人的な感想なので、間違っていたら、謝罪する。

 ――ザクズは〝THE クズ〟である。


「ヒドいよぉ! こんなのあんまりだよ! 元〝無職・男性(34)〟という業を前世で背負ってきた男にする仕打ちかッ!? コレが異世界モノのやることかよぉおおおおおおおおおお!」


 いつしか『当たり前だが、人とはそう簡単には生まれ変われない』と言った。

 まさにザクズのことである――彼はディフェに来ても、全く変われなかった。

 〈転生者〉に選ばれ、外見や能力が改善されたが、中身はクズのままだった。

 前世と中身が同じままであれば、転生後の現世でも同じような人生になって当然だ。現実とはそんなヌルゲーではない。


「頑張ったのにぃ……僕は悪くないのにぃ…………誰か責任取れよぉおお!!!」

 



 閑話突入――ただ、人とは過ちを犯してしまう存在である。

 誰にだって〝クズ〟な一面はあるし、〝クズ〟に堕落してしまう可能性を秘めている。そこで、自分の〝クズ〟な要素を自覚すれば、悪癖を上手く制御することができる可能性があり、短所を長所として活かせるかもしれない。

 たとえ〝クズ〟であっても、変わろうという意志があれば、救いようがある。

 ――〝悪〟に闇落ちしても、それはそれで良い。〝悪〟として生きれば良い。

 良く言えば、〝クズ〟とは化ける可能性を秘めているのだ

 ――一種の主人公属性だ。

 閑話中断――つまり、〝クズ〟とは、まだどうにかなる可能性が残っている。




「そして、穢れが溜まりに溜まった結果、僕は英霊ではなくリッチになっちゃったんだ……別に闇堕ちしてしまっても構わないんだもんね……」




 閑話再開――だが、本当にどうしようもないクズ〝ドクズ〟は存在する。

 自分を〝クズ〟だと受け入れないから〝悪(現実)〟になれず、変わろうともしないから〝正義(理想)〟になれない――どっちにもなれないまま〝クズ〟で在り続ける。

 現実と理想に板挟みされている中途半端な状態。

 だから、いつまでも幸せになれない。

 ――不満が溜まると、人は『排他的』『自己中心的』『制御不能』の暴徒となる。

 いつしか『自分の幸せのためならば、他人の犠牲は厭わない!』というクズ行為を起こす。

 ――『自分はクズじゃなく、悪くない!』とシラを知るから、〝悪〟よりもタチが悪い。

 そして、〝クズ〟の悪化の一途を辿ると、後戻りができなく〝ドクズ〟と成り果てる。

 ――『死んでもクズは治らない』とは良く言ったものだ。

 結論を言うと、ザクズは〝ドクズ〟である

 ――あくまでも事実確認だ。道徳の授業ではない。

 閑話休題――〝私〟は〝ドクズ〟を〝主人公〟には絶対に選ばない。




「……転生早々、痴漢・ストーカー・強姦未遂の容疑でルクセア前国王に捕らえられて、牢屋にぶちこまれたことが『頑張った』ねぇ……頭、大丈夫か?」


「「「そうだ!」」」


「えっと……それは前々前世の話というかぁ……覚えてないというかぁ……」


 シークの正論。グールたちの同調。ザクズの弁解。

 『ザクズは〝ドクズ〟じゃないし、まだ救える!』と反論する心優しい博愛主義者の方々がいれば、今後もザクズの言動を見て欲しい。

 ――もはや手遅れの人間はいるのだ。


「まあ、誤解はあるけど、それは事実だね。ただ、僕が『頑張った』のはその後だよぉ! 出所後の人の過去ばかり見るのはダメだよぉ! ダメよ~ダメダメ! ダメダメよ☆ Foo☆ クズクズ☆ナイトフィーバー☆」


「脱獄するために〈大魔神〉と契約を結び、悪行の限りを尽くしたことが『頑張った』? その脱獄の時だけで3桁の殺人を犯したのに?」


「「「そうだそうだ!」」」




「いやいや! あの国は腐ってたから! やむを得なかった! 僕はルクセア王国という国を救済、後に奉仕、そして改善しようとしただけだぁ!」


「……『名君と称された前国王を暗殺し、国を服従させ、全てを改悪した』」




 ――ザクズの『美化』を、シークが『訂正』し始める。




「野に捨てられた獣耳ガールズを城へと招き、保護したぁ!」


「『自然の中で不自由なく暮らすビーストの女性たちを捕縛し、ペットとして監禁した』」


「閉ざされた環境で苦しむエルフを城へと救出し、保育した」


「『人里離れた秘境でヒッソリと暮らすエルフの女性たちを拉致し、奴隷として調教した』」


「〈大女神〉にこき使われている〈女神〉たちを啓蒙して、先導した!」


「『被害者を救いにきた〈女神〉たちを欺罔し、堕天使へと堕落させた』」


 ザクズはドヤ顔だ。他は冷ややかな視線を送っている。




「コレを『頑張った』と言わないで、何て言うんだいッ!?」


「『死ねば良いのに』って言うんだよ。お前は〝史上最悪の〈転生者〉〟として教科書に掲載されるくらいの元〝魔王〟だ。反社会的存在……〝犯罪者〟だ」


「いやぁ~有名人はツラいなぁ~でも、〝魔王〟は誤表記じゃないかなぁ~?」


「人を不幸にしてきたことを反省してないお前には幸せになる権利なんて無い」


「「「そうだそうだそうだ!」」」


 批判するシーク。賛同するグールたち。納得がいってない様子のザクズ。


「う~ん……反省しろと言われても……僕は悪くないし……」


「……ハァ?」




「それは価値観の相違から生じてる勘違いというか……正義と悪は表裏一体で……21世紀の地球だと、コレが当たり前だったから……世界観の違いってヤツぅ? この世界が時代遅れってヤツぅ? 原始人ばっかぁ?」


「そんな正義があってたまるか。仮に世界がお前を正義と認めたとしたら、俺がそんなクズな世界をぶち壊してやる。どんな詭弁を弄したとしても、俺はお前を絶対に認めない」


「「「そうだそうだ! 逝け逝け消え去れ!」」」


 グールの『逝け逝け消え去れ!』とは生者の『死ね死ねくたばれ!』。


「ひ、ヒドいよ……みんなで寄って集ってイジメて……あんまりだ……ううぅ」


「当然の報いだ。それほどまでにお前は自分勝手で極悪非道を成してきたん」


「「「そうだそうだ! 逝け逝け消え去れ! 地獄に落ちろ! ザ・ク・ズ!」」」


「う、うわぁあああああああああん!」


 ザクズは顔を両手で覆う――誹謗中傷に耐え切れなくなったようだ。

 肩が震えており、鼻をすする音が聞こえ、裏声が混じった話し方となる。


「そうだ……みんなの言う通り、僕が全部悪い……地獄に落ちるべき……」


 顔を覆ったままザクズはブツブツと懺悔を始める。


「でも……最後に一目でもエルシィたそを……あの子は生前の……転生前の嫁にそっくりで……どうしても幸せだった日々を思い出してしまって……諦められなくて……どうかご慈悲を……成仏させてください……」






「嘘つけ。お前と一緒に居てくれるのは、せいせい優しい母親くらいだろ」


 ザクズの震えが止まる。

 ――〝ドクズ〟とは、人を欺く演技力だけは超一流の役者並だ。


「……チ、チャットや風俗嬢のお姉ちゃんだって優しくしてくれたわぁ!」


 ザクズは嘘泣きを潔く止める

 ――あれだけ罵倒されたのに、ケロッとした表情だ。




「クソぉ~言質が取れてたら、契約魔法を発動できたんだけどなぁ~やっぱキ〇ガイシスコンは騙せないかぁ~残念ぅ! テヘ♪」


 自分の頭をコツンと叩く――自分が悪いと思う気持ちは微塵も無い。

 ザクズは「上手く行かないなぁ~」と能天気に呟く。

 ――クズマのような転生者もいれば、ザクズみたいな者も存在してしまうのだ。



~つづく~

次回、5月2日23時59分までの投稿予定。


ご愛読ありがとうございます。

バトルシーンまではもうしばしお待ちください。


私事ですが、GW明けには出勤の日常が戻ってきそうです。

ZOOM会議ともおさらば……ああ、私の引きこもり生活が……。

ただ、出来る限り、執筆活動は続けたいと思っています!


では、今後も頑張ります。


蛇足:

ザクズに対しては嫌悪感たっぷりです。ただ、

どうにもならないことはある、そうなってしまう、なにをやってもだめ、エトセトラ……。

その気持ちは分かります。昔は反発しかしてないでしょう。歳でしょうか(笑)

自分も半ばそうなのだと思います、上手く誤魔化しているだけで。

とはいえ、もしザクズが目の前に現れ、自分に迷惑をかけてきた場合は、拒絶するでしょうねw

では、自分に迷惑をかけていない場合はどうするのか……?

彼が友達だったらどうしているのか……?

書いていると、そういう疑問を思います。疑問提示して、答えに繋がるかもしれない考えが出せれば良いかもですね。

……はっ!? 後書きが長()

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