第5章:その3
若干のホモ注意報。苦手な方は心の準備を。
1章が長かったため、分割しています。今回は2000字程度と短めになっています。
「……俺の〝真の選ばれし者〟についての主張はこうだ!」
「うっす!」
ジロウは目を光らせている
――野獣の眼差しではない。純粋に人としての憧れ。
シークは堂々と告げる。
「〈転生者〉よりも俺の方がよほど〝真の選ばれし者〟として相応しいッ!」
「……うっす?」
「だから、ヤツらは〝真の選ばれし者〟ではないッ!」
「う、うっす……」
今度はジロウが反応に困ってしまう。
兄貴分が〝世界一のシスコン〟を目指しているのは知っている。
そのため、あえて傲岸不遜な言動をしているのも分かっている。
(どういうことっすか……根拠が……根拠が欲しいっす!)
だが、時折、理解がついていけないこともある。
ジロウがバカな訳ではない――彼は優秀だ。
シークの主張が突飛すぎるだけだ。
頭上に『?』を浮かべているジロウに構わずに、シークは持論を展開する。
「まず〈転生者〉なんて三桁はいるご時世だ。そんなのが『世界で唯一無二の存在』か?」
「語源を考えれば、違うっす。世界を救った〈勇者〉に与えた方が良いっすね」
「それも違う。『世界を救った~』的な出来事は毎年のように起きてる。世界を救ったヤツなんていっぱいいる。俺だって、クソ親父のパーティメンバーの一員として世界を救ったことがある。そしたら、俺もその〝真の選ばれし者〟の査定をクリアできてる」
「そうっすね! それには異論ないっす!」
「さらに言うと、俺は〈転生者〉に一度も負けたことがない。無敗だ」
「そ、そうっすね! さすがアニキっす! 〝世界一のシスコン〟っす!」
ブンブンと頷きながら、ジロウはシークの主張を肯定する。
(アニキの不敗神話は継続中っす……紛れもない最強無敵のシスコンっす……っす!)
ジロウはアニキの武勇伝を思い出す――それだけで興奮してしまう。
ただし、ココで警告しておく。
シークの実力は最上級であっても、ジロウが思うような『最強無敵』ではない。
彼が『最早敵無しの強さ』という頂に至ることは絶対にありえないのだ。
「それだったら、エルシィの唯一無二の兄である俺の方が〝真の選ばれし者〟だ!」
シークは唯我独尊な態度で宣言した。
『意味不明』と思った方、まともな感想である。誰もがそう思っている。
ただ、シークはふざけていない――断言はできないが、頭がおかしい訳でもないと思う。
本心から自分がエルシィの兄であることを誇りに思っているのだ。
「ア、アニキの言いたいこと、よく分かったっす!」
実際は、ジロウはよく分かっていない。
だが、「うむ!」と上機嫌なシークの機嫌を損ないたくないから、調子を合わせた。
しかし、腑に落ちていないのも事実だ。
ジロウはタジタジと問う。
「それで……結局、アニキの考える〝真の選ばれし者〟の条件って何っすか?」
「俺。それが嫌だったら、俺に勝て。以上。異論は認めない」
「……」
ジロウは絶句した。
今回は理解が及ばなかったのではない。
もしくは大勢の人がシークに対して抱く『アンタ、バカァ?』という感情でもない。
(アニキは最強無敵なんっすから、負けるわけがないっす!)
ジロウは心酔している――そうだった、彼はシークの狂信者だった。
(……ただ、エルシィちゃんは世界によって決められた〝世界一のヒロイン〟)
一方、ジロウはシークが言わんとしていることを察している。
(〝世界一のヒロイン〟である唯一無二のエルシィちゃんが娶られた瞬間に……)
その娶った相手は〝世界一のヒーロー〟。つまり〝真の選ばれし者〟となる。
(だから、もしアニキが負ければ……その時は……)
だからこそ、シークは1度の敗北も許されない。
(そして、それはもう1つのことを意味する……アニキは……)
ジョージと同じく真実に気付いているジロウは、シークの零した独り言を聞こえなかったフリをする。
「……まあ、俺は〝選ばれし者〟ではあるが〝真の選ばれし者〟ではないんだよな」
一瞬、弱々しい表情になったが、シークは何かを否定するようにブンブンとかぶりを振る。
「それでも! 俺は〝真の選ばれし者〟でなければいけない! エルシィの兄として!」
「……うっす!」
ジロウはブレないアニキを見て『やっぱりアニキは世界一っす!』と確信した。
(アニキ……アニキ……最高っす……うっ!)
ビクビクと絶頂してしまうジロウだった。
(……コイツ、どうしてアヘ顔になってるんだ?)
シークはヘブン状態の弟分を不可解そうに見た。
『もしかして、俺で……』と思ったが、思考停止した――続行したら、気が触れてしまう。
とりあえず、シークは身の危険を感じたから、放心状態の弟分を置いて、全速力でその場を去った。
閑話突入――最後に問う。どうすれば、ディフェ人は〈転生者〉に勝てるのか?
我らがシークの身になって考えてみよう。
――ご覧の通り、シークは一般的なディフェ人と違って、不戦敗を認めない。
〈転生者〉はラノベ・漫画・アニメで活躍するような『最強チート系』キャラだ。
――もちろん、NPCなどではなく、学習能力が備わっている知的生命体だ。
だが、長々しい前置きを耐え聞いてきた同胞諸君!
〝君〟たちであれば、必ずや妙案を思い付くと確信している!
それが未来永劫に通じる必勝法であれば、最高であると言わざるを得ない!
手段は問わない。現実的で、実現可能であれば、どんな方法も採用とする。
必要な知識が不十分であれば、これからも情報収集に励んでくれ。
閑話休題――では、頼んだぞ。グットラック。
次回、4月28日23時までの投稿予定。
ご愛読ありがとうございます。
おそらく感染症胃腸炎と診断されましたが、コロナの疑いがまだ晴れていない者です。
みなさんも体調にはお気をつけて。
次回から新しい展開に入ります。
第5章のミスを確認しながら、頑張っていきたいと思います。
では、今後も頑張ります!
蛇足:
友人にチェックしてもらい、こうアドバイスをもらいました。
「色々あるけど、とりあえず後書き長くね?」
「…………(´・ω・`)」
「本文でこれくらいやる気だせよw雑談無しで報告くらいで良いだろwwウザイwww」
「……………………(´;ω;`)」
イイトモダチモッタナー
(本文もボロクソ言われたよ~もう慣れちゃったけど~心が叫びたがってるんだ!(泣))
……後書きは少し自粛し、様子見します(笑)




