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チート転生者に最愛の妹は娶らせない!  作者: 千早一
第1部:【FATE】恋愛は運命から始まる。物語は因縁から始まる。そして兄妹は……
14/42

第5章:ちゅ~とりある④・ どうあがいても、絶望 ~然てもや彼の者は~

ホモ注意報。苦手な人は心の準備を。

また、1章が長いため、5000字程度で分割しています。


「……………………」


 クズマは相変わらず失神していた

 ――ごめん、存在を忘れていた。

 ――さて、シークとジロウがジョージたちを送って、戻って来た。

 

「……コイツ、やっぱり〈転生者〉だな」


 クズマの元まで着くと、シークは一瞬で元〝引きこもり〟の正体を見抜いた。


(それに……何かヤバいモノを秘めてる気がする……)


 復習も含まれるかもだが、確認していこう。

 〈転生者〉とは『異世界から転生された者』という意味――その名の通り。

 専門家によって、ディフェに年々増加している彼らの傾向・情報・知識は、ある程度まで解析されている。

 諸事情から、シークはその専門家たちよりも〈転生者〉について精通している。

 よって、彼らを一瞬で見抜けるような『目』も養われている。


「……コイツがっすか?」


 ついさっきまでホモホモしい態度だったジロウ――真面目な表情となる。


「どう見てもレベル1のザコっす……」


 ジロウは倒れ伏しているクズマを意識する――焦点を合わせるように凝視した。

 

《レベル1〈勇者〉〈タイプ:駆け出し勇者〉

 HP:0 MP:10

 物攻:5 物防:3 魔攻:5 魔防:3

 (中略)

 状態:気絶。ゲロまみれ

 リストレイント:〈大女神の加護〉〈主人公補正〉(他にも何かある……?)

 性癖:ノンケ。ロリコン。男の娘もイケる 》



 ジロウの『目』にクズマの情報が文字・数値となって視覚化された。

 ――コレが〈ノダメ〉だった。

 ジロウは「う~ん、本当っすね~」と唸り、見るに堪えないゲロ少年から注目を外す。すると、クズマの情報も視界から消えた。


(〈ノダメ〉が無くても分かるが……後で見てみるか……)


 長年、シークは〈転生者〉を目の敵にしてきた。

 おかげで〈ノダメ〉抜きでも、大体は見当がついている。

 ――〈ノダメ〉が無くとも、人とは観察眼は養われる。


「ドスコイの体当たりを喰らって、ゲロだけで済んでる。おかしいだろ?」

 

 シークは指摘する。

 ――ドスコイのタックルは『時速40kmの自動車』くらいの威力。

 クズマが五体満足で済んでいるのは不思議だと分かる――ゲロまみれだが。


「たしかに……最低でも骨折くらいはしても良いっす……」


「それが起きない。つまり、〈主人公補正〉と〈大女神の加護〉による恩恵だな」


「物理攻撃の利点・クリティカルヒットだったら、最悪、死んでるっす。『ただ、ちょっと打ちどころが悪かっただけで……』って展開もありえますからね」


「随分とネタが古いな」


 シークの言う通り――80年代ネタのことではない。

 クズマは〈主人公補正〉のおかげでクリティカルヒットを回避していた。

 ――正直、意味不明だ。だが『〈主人公補正〉だ!』と言えば、済んでしまう。


「……骨折してないのは〈大女神の加護〉でもないと説明がつかないっす」

 

 ジロウは「自分もまだまだ勉強不足っすね」と呟いた。

 正面衝突したにも関わらず『打ちどころが良くて、骨折しなかった』という不可解要素。『運が良い』だけでは納得できない。

この疑問を解決してくれるのが〈大女神の加護〉だ。

 ――〈大女神の加護〉で『転生早々、いきなり大怪我は可哀想!』とか何たらの効果が発動したのだろう。


(本当に忌々しい能力だ……〈女神々〉を相手にしてるようなもんだ……)

 

 〈大女神の加護〉。闇落ちした場合は〈チート能力:大魔神の冥加〉。

 〈主人公補正〉。闇落ちした場合は〈チート能力:ダース・ヘイター〉。

 〈転生者〉はこの2つの〈チート能力〉を必ず持っている。

 ――コレらを合わせて『転生者アンハッピーセット』と呼ぶ。


(普通だったら、存在さえ疑う能力だ……でも、在る……差別に近いな……)


 第666世界では、〈主人公補正〉などの〈チート能力〉は存在の有無さえ不透明だ――だが、実在する。第7世界では〈ノダメ〉で視認されている。

 そして、この〈チート能力〉は本当に不平等極まりない能力だ。




(生まれた瞬間には、区別という名の差別がされることが決定されてる……)


 〈チート能力〉や〈タレント〉とは先天的才能。

 ――生誕時に全てが確定している。


『もしかしたら、俺にも〈主人公補正〉が眠っているかも……』

『レベル100まで頑張ったら、〈主人公補正〉を取得できるかも……』

『〈主人公補正〉が無くても、努力次第では、〈勇者〉になれるかも……』


 以上の甘い期待が全て裏切られてしまう――そう考えると、最強の〈チート能力〉を所有している〈転生者〉は、もはや『チート』を通り越して『バグ』のような存在だ。



「酷い現実だ……とりあえず、『吹け吹け。浮け浮け〈フロ〉』!」

 

 シークは風の初級一般魔法を発動した。

 クズマがフワフワと宙に浮く――ついでに服もパパッと脱がされ、全裸になる。

 彼のジャージとゲロを一緒にまとめ、天に向かって猛スピードで浮上させた――汚物はすぐに火球となり、空気と一体化してしまった。ジャージを燃やしたのは、嫌がらせ行為でもある。

 その後、クズマをうつ伏せに反転させて、地面に戻す。




「コイツ……アソコが小さいっすね」


 ジロウはため息をつく――クズマのダガーナイフをチェックしていた。


「……」


 シークは『最初に思うのがそれかよ……ってか見るなよ』というツッコミを飲み込む――言ったら負けだと分かっているのだ。


「それは言ってあげるな。将来に期待してあげよう」


 何故か怨敵を気の毒に思ってしまい、フォローしてしまう。

 ジロウに『守備範囲外』と見なされたクズマは幸運だろう。

 ただ、自分の知らぬ間に『不採用』と評されるのは、男のプライド的にはどうなのかと思ってしまうが、ホモに狙われないで済むのだから、ヨシなのだろう。




「ち、ちなみにアニキのアソコは……?」


「…………」


 ジロウの質問を無視して、シークはクズマの観察を続けていた。


「ジロウ、コイツのケツの右側部分を見てみろ」


「ウホッ……とはならない。鍛えてない、だらしないケツっすね」


「……おい」


「そ、そうじゃないっすね! 蒙古斑……じゃない……唇の形……? あっ、〈大女神〉と契約した証の〈大女神のキッス跡〉っすね!」


「そうだ。おそらく契約したばかり。出来立てホヤホヤの〈転生者〉だな」


 クズマがレベル1という点も踏まえて、シークは断言した。

 ジロウはコクリと頷き、兄貴分の考えに同意を示す。


「そうっすね。アニキが森への侵入者に気付かないのはありえないっす。相手が〈女神々〉か伝説級の冒険者でもなければ、無理っす」


「その通り。コイツは〈大女神〉に転生されて〈起承転結の森〉に生み落とされたばかりだ」


「……はぁ~っす」


 ジロウは露骨にため息をついた。


「この森はそういう場所だから、仕方ないっすけど……ダルいっすね~。エルシィちゃんの究極のヒロイン力も引き寄せる原因なんでしょうけど……」


 エルシィの途方もない潜在能力を思うと、ジロウは再びため息を出してしまう。

 ――〈チート能力:世界一のヒロイン〉については、時が来たら説明する。


「エルシィは世界一可愛いチート妹だからな。仕方ない」


 逆にシークは嬉しそうに肩をすくめる。

 ――妹が可愛くて仕方ないのだ。

 嬉しそうな兄貴分と共感したいが、ジロウは愚痴を零してしまう。


「とは言っても……〈転生者〉が年に平均4人は送られてくるっす……だから、アニキが森の警護を買って出てるんっすけど……ダルいっす……」


「そう言うな。世界の理……もしくは〈大女神〉の嫌がらせかもしれないが……とにかく!」


 シーク。チラッとクズマを一瞥する。

 クズマ。だらしないケツを出したまま、絶賛失神中。

 ジロウ。意図を汲み取る――ついでにクズマのケツの穴が見えないか確認する。


「エルシィちゃんの近くに〈転生者〉を置いておくのは面倒……絶対阻止っすね!」


「察しが良くて助かる」


 ジークは心の中で『さすがジロウ』と頭の回る弟分を褒める。

 自身の有能さを証明するかのように、ジロウは〈転生者〉の危険性について確認する。


「〈転生者〉は『転生者ハッピーセット』を初めとした数々の〈チート能力〉を持ってる危険因子っす……一筋縄で勝てる相手じゃないっす……」


「そうだ。しかも『〈主人公補正〉を逆手に取る!』みたいな戦法も通用しない。それを織り込み済みなのが『転生者ハッピーセット』だ」


 シークは『やれやれ……』と言っているかのように目頭を押さえる。

 取るに足らない問題を『困ったなぁ』と苦笑している訳ではない。

 正真正銘の死活問題に『勘弁してくれよ……』と苛まされているのだ。


「すなわち、真っ向勝負で打ち勝たないといけない……キツいっすね」


 ジロウは苦虫を噛み潰したような表情となる。

 それほど〈転生者〉とは、敵にすると最も厄介な存在なのだ。

 ――兄貴分と共に行動しているからこそ、尚更、その困難さを実感している。


「それに『転生者ハッピーセット』は戦闘時のみに発動する能力じゃないっすからね……本当に厄介っす……」


「……ああ」


 シークはあからさまに憂鬱な声を出してしまう。


「日常生活からバンバン発動されてるっす……つまり……」


 ジロウは言葉にすることを躊躇う。

 それはシークにとって不愉快極まりない事実。

 しかし、シークはさっさと口にしてしまう――不変の真理だから、思い悩んでも仕方ない。


「その〈転生者〉にとっての『ヒロイン』とポジティブな出来事が発生しやすい。たとえ、ソイツがクズであってもだ。普通ではありえない。だが、コレが現実だ」


「……うっす」


 ジロウは申し訳なさそうに相槌を打った。


(遠慮してしまっている時点で、自分はアニキより格下……不甲斐ないっす……)


 彼は心の中で己の愚考を恥じた。

 一方、シークは気にせずに話を進めることにした。


「ジロウも〈主人公補正〉を持ってるから、そこら辺は詳しいだろう?」


「そ、そうっすね!」


 ジロウは気持ちを切り替えて、応じる。シークの気遣いを無駄にはしない。

 ――彼らが話す〈転生者〉事情をココでしっかりと把握しておこう。


「〈大女神の加護〉とは違って、ディフェ人でも〈主人公補正〉は持てるっす!」


「まあ、正確に言うと、〈転生者〉は〈大女神の加護〉のおかげで〈主人公補正〉を副産物として取得できてるな。〈大女神の加護〉はその名の通り『〈大女神〉と契約した者に与えられる奇跡の護り』という効果だ。『奇跡の護り』を分かりやすく言うと『何でもアリ』だな」


「その神業のおかげで、〈転生者〉は、本来、生まれた後には絶対に手に入らない〈チート能力〉や〈タレント〉を取得できるんっすね」


「そうだ。それで最初に取得するのが〈主人公補正〉だ。〈転生者〉は〈勇者〉として〈大女神〉に招かれるから。〈勇者〉に〈主人公補正〉は必要不可欠な能力」


「主人公のような〈勇者〉には『主人公が遭遇するようなラッキーな状況を作り出す自動修正能力』の〈主人公補正〉は必須っすからね。まあ、主人公では全然無いっすけど!」


 ジロウは皮肉気味に言った。

 ――〈主人公補正〉に対しては、さほど思い入れはないようだ。

 シークはフッと鼻で笑う――嫌味ではなく、ちゃんと冗談として受け取る。


「実際、〈主人公補正〉の持ち主としては、どんな恩恵を与ってきたんだ?」


「戦闘時には『なぜ死亡フラグを回避できるか教えてやろう。主人公だからだ』的な現象が多発するっす。日常時には『規制の厳しいトラブルを掻い潜るとエロであった。股の間が熱くなった』的なイベントが連発するっすね」


「何か分かりづらいな……それにパクリみたいなセリフだ」


 分かりにくかったと思うので、〈主人公補正〉の具体例を挙げておこう。


『好みのヒロインが周りにいないと思った瞬間に、曲がり角でヒロイン候補とぶつかる』

『出会った瞬間に、ヒロイン候補を一目惚れさせられるイベントが起こるのは当然』

『可愛い女の子(男の子)のエッチな姿を見られるのが日常茶飯事』 


 ぶっちゃけ、喉から手が出るほど欲しくなる能力。

 だが、コレはあくまでも先天性の能力である。

 くどいが、生まれた時に持っていなければ、一生手に入らない。


「その〈主人公補正〉に加えて、〈大女神の加護〉を持ってるのが〈転生者〉っす……相乗効果ってやつが働いて、とんでもなく厄介な存在になるっす……」


 この『とんでもなく厄介な存在』についても具体例を挙げておこう。


『平均的にレベル500(歴代最強は〈大女神〉と同等のレベル9999)まで育つ』

『「見ただけで○○○(即死など)する」などの〈チート能力〉を持つのは当たり前』

『恋敵は病死などで消え、ヒロインは自分好みになり、ハッピーエンドを必ず迎えられる』

 

 こんな『バグ』を相手にするには、いくら覚悟があっても足りないだろう。






「まあ、それでも、俺は〈転生者〉なんて才能任せの連中には負けないけどな!」


 しかし、この〝世界一のシスコン〟は、その程度の覚悟はとうに決まっている。

 それを知っているはずなのに、ジロウは要らぬ気遣いをした。

 ――だから、さっきは己を恥じた。


(……何の心配をする必要もないっす!)


 彼は『アニキは最強無敵のシスコンっす!』と改めて思った。


「そうっすね! アニキは負けないっす!」


 ジロウは心の中で『あとでお仕置きケツトレを100セット!』と自らに罰を与える。

 さらに『自分は一生アニキのケツを追いかけるっす!』と誓った。

 最後は『いつかお互いのアナというアナを……アッー!』と相思相愛になることを願った。


(ッ!? な、何だ……今、お尻ら辺に寒気……悪寒が……)


 何も知らないシークは身震いしてしまう。

 ――自分自身が『〈主人公補正〉の持ち主に狙われている』という恐怖を、真に理解するのはまだまだ先のことである。もしかしたら、最大の悲劇的要素なのかもしれない。





~つづく~


次回、4月26日23時59分までの投稿予定。


ご愛読ありがとうございます。


先に一言お詫び。

何かミスがあれば、申し訳ないです。

本来、第5章は第2章の後に来る予定だったので、説明などの順序を色々と組み替えています。

一応、確認はしたのですが……体調(精神)不良のため、行き届いていないかもしれません。

もし見過ごせない間違いがあれば、ぜひ報告してください。お願いします。

しつこく言ってしまう理由は、あと約10000字ほど第5章が続くからです。

重ね重ね、先にお詫びを。申し訳ないです。


では、皆さんも体調にはお気をつけてくださいね。


追伸:

この作品の1つの特徴、パロディネタの多さです。

パロディは気付けた瞬間、ものすごい喜び(笑い)が訪れる時があります。展開を予想して当てた時と似た感覚ですね。まあ、1流のパロディストは気付けなくても笑える文章を書くのでしょうが……。

1つだけネタバレ。「ちゅ~とりある」は「いんふぇるの」が脳内にちらついた結果です。

ココで分かった方は最高です。一緒に赤い水を飲みましょう(嘘)

答えはSIREN。最高のゲームの1つです。プレイは厳しいかもですが、ぜひ実況動画を見て欲しいですね。もし物書きを目指している方が居れば、見て損は無い内容と思っています……ハッ!?

SIREN無印だぞ!SIREN2もOKだよ!ただし、NTは別枠だから!アレはアクションだから!

……かなりホラーな内容になっているので、苦手な方は見ない方が良いと思います(汗)


蛇足:

先程は私事で愚痴ってすみません……大分落ち着きました。

今から、過去の自分を消してきたいと思います(笑)

一緒に黒歴史も消せれば良いですねぇ~(精一杯のジョーク)

本当にすみませんでした。。。

では、今後も執筆頑張りたいと思います!


遊び:遅かったな!この無修正修正マンのこの手によって、以下の黒歴史は削除済みだぜ!保存してなかったことを悔やむんだな!バイバイチーン!

はい、すいません。ふざけました。色々と。すみません(戒め)

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