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異世界OL転移事件  作者: AuThor
8/10

大人

芽衣と得縷は事務所で依頼客の相談に乗り、問題を解決していった。

問題を解決するごとに宣伝が広まるので、日に日に依頼客は増えていった。


依頼内容の中には解決できない問題もあった。


「片思いしている人と付き合いたいんですけど、どうすればいいですか?」


さすがに相手の心を変えるわけにもいかず、自分たちができることは頑張れという応援のみだと伝えた。そのかわりにベストをつくせるように願った。


「死んだ犬を生き返らせたいです。どうにかできませんか?」


死んだ生物を生き返らせるのは願いで可能であったとしても、さすがに危険だと得縷が言ったので断ることになった。そのかわりに夢で会えるように願った。


「会社の派閥争いで疲れてます。そういったものがない職場にするにはどうすれば?」


複数人が関わっているものなので、願いを叶えることは無理であり、断った。

そのかわりに派閥争いでも疲れない精神をもてるように願った。


「働きたくないんです。でもお金が欲しいんです。何かいい方法はないですか?」


ないです! 働きなさい!

でも働く意欲が出るように願ってあげた。


その一方で、多くの依頼客の問題も解決していき、そのたびに人から感謝され、芽衣は充実感を覚えていた。


能力はいろいろな使い方をした。

人の頭の中で考えていることを読んで問題を解決に導いたり、誰かの記憶を読んで問題を解決したりした。



相談所を開業してから1ヵ月と2週間ほど経つ頃には、芽衣の信頼度のレベルは85になっていた。もうゲージのレベルを見ただけで不信感を表す人はほとんどいなく、相談もスムーズに進んでいった。


今日の営業が終わり、芽衣と得縷は事務所の戸締り始めていた。


「芽衣さん、これからは休日を設けない?」


「え?」


「もう期限までには絶対に信頼度が100になるでしょ。だから、これからは相談所の休日を入れていかない? 毎日営業しなくても余裕で信頼度は100になるよね」


「……何のために休日をつくるの?」


「外に行かないといけない相談内容も時々あるけど、せっかくこの世界に来たんだから、楽しむ目的でいろいろな場所に行ってみない?」


「……」


「あと少しでお別れなら、俺、芽衣さんと一緒にそういう思い出を作りたいな」


私も得縷くんとそういう思い出を作りたい。でも……地球へ帰りたい思いが揺らいじゃう。


得縷は悩んでいる様子の芽衣を見つめる。


「芽衣さんが両親に親孝行するために何として地球へ帰りたいことはわかってるよ。だから、この世界に未練を残さないように過ごしていることも」


芽衣は驚いて得縷の顔を見る。


「そんな芽衣さんなら、この世界で楽しい思い出を作っても絶対に地球へ帰ることを選択することができるよ」


……そうだよね、私はもう大人だ。子供じゃない。


「うん、私も得縷くんと一緒にいろんなとこに行きたい」


得縷は満面の笑みを浮かべる。


芽衣も得縷の笑顔を見て、微笑む。


その日以降、相談所には休日が設けられ、休日の日は事務所のドアに休日だと伝えるボードがかけられるようになった。


芽衣と得縷は休日に旅行に行ったり、様々な遊びをしたりして楽しんだ。


事務所の営業日、ビラ配りをしている最中、強い地震が大地を揺らした。


建物のガラスが何枚も割れ、芽衣の真上に降り注ぐ。芽衣は上を見上げて悲鳴をあげ、頭を手で覆いしゃがむ。


「きゃっ!」


しかし、ガラスが刺さった感触はない。一瞬で地震がおさまったので、おそるおそる芽衣は上を見上げると、得縷が芽衣を覆う形でガラスの破片から守っていた。


得縷はガラスの破片を後頭部からかぶる形となったので、顔から血が滴り落ちている。


「得縷くん! 血が!」


「大丈夫。幸い即死するほどの大きさの破片は刺さってないみたい」


得縷は少し笑って言う。


「待ってて! すぐに治すから」


芽衣は能力を使い、得縷の傷を完全に治癒させる。


「やっぱり、凄い力だ」


得縷は感心するように癒えた自分の体を見る。


芽衣は近くの破片を見て、ぎょっとする。当たったら即死を免れないであろう大きさのガラスの破片がいくつも地面に落ちていた。


「運がよかった」


得縷はあたりを見回しながら言う。周りで、ひどい怪我をしている人はいないようだった。

傷は治っていても、血は残っていたので、得縷は顔の血を服でぬぐう。


信頼度のゲージはずっと表示させ続けると体力を消費するので、相手から信用を得たり、感謝されたりしたいときや能力を使うときにしか、ゲージを具現化させないので、このような咄嗟の状況に芽衣は能力で対応することができなかった。得縷の能力は運動神経を向上させる能力であり、さらにゲージの具現化や能力発動に慣れており、芽衣とは違って瞬時にそれらができるので、離れた距離からぎりぎり芽衣を守ることができたのだった。


信頼度のゲージは一度相手に見せると、その見せた人については再度ゲージを見せることをしなくても、その人から感謝されるたびにレベルは上がっていく。なので、2度目の相談所利用者に芽衣は信頼度をわざわざ見せることをせず、感謝されるとレベルは上がっていった。


「この血だらけの顔じゃ、事務所に行けないからシャワー浴びにいったん家にもどるかな。余震があるかもしれないし、心配だから一緒にもどろう」


「うん」


芽衣は命懸けで自分を守ろうとしてくれた得縷に心の底からドキドキしていた。


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