天使の輪とナイフ
ザーーーッー!!!
雨が降り注ぐ。
それはまるで神様が泣いてるみたい。
私は彼を見下ろしていた。周りには赤い花が咲き誇る。すぐ側にはガラクタが1つ。それらを覆い囲むように有象無象がこちらを見ている。
彼が何かを言っている。
ノイズで阻まれる。
目を覚ます。
時計を見ると、まだ出勤をする時間より遥か前だ。
あんな夢忘れていたと思っていた。
想像以上に汗で服が濡れている。息も絶え絶えだ。
ザーーーッー!!!
そうだ。
あの日もこんな曇天の空だった。
私は今でも彼のことを愛してる。
それはどれだけの時が過ぎようとも変わらないたった一つの事実だ。
正直、私はもう疲れた。
私も彼の後を追うことにする。
天井にぶら下がった天使の輪に首を通す。
それは天国への断頭台のよう。
椅子を蹴り飛ばし、ぶら下がる。
あまりの苦しさで悶える。
でも、あのときの苦しみに比べたらこんなものは軽い。
息ができなくて辛い。
でも、あのときの辛さに比べたらこんなものないに等しい。
次第に体から力が抜ける。
そんなとき、記憶に蘇る。
ザーーーッー!!!
「●●!!●●!お願い!お願いだから私を一人にしないで!」
「ガハッ!!●●……俺のことは…もう忘れろ……きっと、もっと良いやつが…見つかる。今度のやつは…もう二度と●●を独りにしない……ゲホッゲホッ!!だから…泣くな。俺は…遠くで●●のことをいつまでも見届けるよ…。だから……。」
「●●!!!」
体中に力を込めて、暴れる。
そして、床へと落ちる。
縄をきっちり縛っていなかったせいだろう。
決意したつもりでいた。
つもりであった。
つもりにしかならなかった。
「●●………私もう無理だよ……。●●……●●…。●●ぉ……。」
椅子の下に彼が好きだったナイフが落ちていた。
彼の所持品は全て彼の部屋に置いてからは一度も持ってきていない。
何故、こんなところに…。
わかったわ。もう少しだけ生きようと思うの。
貴方が未だに私の側に居るなら、私は貴方と同じような寂しさと哀しみを背負って生きるわ。
私達はいつも一緒。
けれど、決して出会うことなく、壁に遮られてる。