第四十二話 『封印』 OP
「お兄ちゃん……」
陵太郎の死を受け入れられず、雅は抵抗を続けていた。
すでに呼吸は停止していたものの、かすかなともし火を感じ取ることのできる心臓に手を重ねる。
まだ間に合うかもしれない、と。
だが、どれだけ祈っても、願っても、想いが伝わることはなかった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
ともし火が消え去り、がっくりうなだれる雅。
その背中越しに桔平の影が遠く浮かび上がる頃、強き想いが淡い光を帯び始めた。
*
『もういい。やめよう、夕季!』
光輔の叫び声で、ようやく雅が意識を取り戻す。
光輔と礼也が何かを言い合っているようだった。
『礼也、早く離脱するんだ。雅を起こして、ブレイクして夕季を助けよう!』
『駄目だ。ここでカタをつける。こいつだって、それくらい承知の上での決断だ』
懸命に訴えかける光輔と、それを否定する礼也の声を耳にしつつ、雅は乱れた呼吸を整えていった。
『どうしてだよ。どうして夕季一人が犠牲にならきゃいけないんだよ。なんでそこまでしなくちゃならないんだよ。夕季が死ななけりゃ勝てないのなら、俺は勝てなくてもいい。こんなんじゃ、勝ったってなんにもならない』
二人のそばには、呼吸すらままならぬ状態でただひたすら前だけを見据え挑み続ける、血まみれの夕季の姿があった。
『甘っちょろいこと言ってんじゃねえ。こいつの決意を無駄にするな。こいつはもう……』
押し殺された礼也の言葉に、いまだ朦朧とする意識の中、もう何も変えられないことを雅が悟る。
その時だった。
『何をしている、馬鹿者どもが! 早く離脱しろ!』
突如乱入してきた木場の怒声に、礼也達が活目する。
一片の迷いもない木場の叱責は、魂の叫びとなって三人の心を揺さぶった。
『おまえ達は今まで何をしてきた。何を見てきた。こんなやり方で勝って、それで嬉しいのか。本当の勝利と呼べるのか。傷ついた仲間を見殺しにしなければ救えないような世界なら、そんなくだらないもの全部奴らにくれてやれ!』
覚醒する三人の意識。
誰より早く反応したのは、懸命なまなざしを向ける雅だった。
「礼也君、早くブレイクを」
『雅か。大丈夫なのか』
「大事なことを思い出したの」過去の戒めを強く心に刻みつける。「大切な人の命を犠牲にしてまで生きたいとは思わない。誰かの悲しみを踏み台にしなければ築けない未来なんて、何の意味もない……」




