探索および困惑
勇者として境、そしておまけで来てしまった、巳音 玖月 志楼 がそれぞれ客室に案内されたあと、アステロイド王城に一つの黒い魔術師の影がうごめいていた。
「まったく、呼べるのに帰せないなんてふざけた話だ。」
志楼であった。彼は隠密系の魔術を用いて現在城内を〝勝手〟に出歩いている。
「しかし、魔術・・いや魔法だっけかここだと、そんな物があると言うのに部屋に何の仕掛けもないのか?まったく他所から来たやつらに好き勝手されるぞ。」
そういう志楼の足取りは迷わず歩き続けていた。その行き着いた先は、
「あった。情報がなければ始まらない。」
おそらくあるだろうと予測し、探した物だ。その正体は書庫でだった。文字が読めるかどうか一瞬と惑ったがそんなこと憂鬱に終わったのであった。
「なぜか読める」
まったく知らない言語のはずが自分の知っている言語のように変換されて読めるのだ。
「なるほど、ほとんど意味はなかったが少し分かったぞ」
この世界の魔術・・・いや魔法は精霊などとは違うエレメンツなどというものを介在して非効率的に使っていることや、なぜ今このように本などを読んだりできるのかは、簡単に言ってしまえば金曜日に7時からやっている青狸のどこでもよろしく何でも翻訳できるこんにゃくを食べたような状態であると言うことだ。それにも限界はあるらしいが、・・・・肝心な召喚術に関しての本がまともにないということだった。
書いてあっても。異界からの勇者は女神からの強力な加護をもらっておりとてつもない力を持っているようなこと、淡々と書かれていただけだった。
「はぁ、仕方ない。直接調べるしかないかー」
志楼は本をさっさともとの位置に戻す。今度向かう先はこの世界で一番最初にいた場所にいった。
「さてと、城だからか?やけに広いな。」
その後に、どっかの協会みたいだなと付け加えられるだろうが・・・・・・・
召喚の間付近までやってきた。人の気配を察知した志楼は様子を見るように物陰に隠れた。
「さてと、今日のゴーレムの点検は完了です」
聞き覚えのある声だった。
(俺たちを召喚した、シルフィードだっけか?・・・監視用のゴーレムの整備でもしていたのか?)
コツコツコツコツコツ
どんどん音は遠ざかっていった。
「となると、この先にはゴーレムがあると言うことだな。後で使えそうだ。少しあえて見つかってやろう。そんなことよりあの陣の解析が先だ。」
「む、やっぱり封がしてある。が、何だこの程度の物では開けてくれよりも完全になめ腐ってるような感じだが、
analysis,Release(解析、解除)」
簡単に開いてしまう。この城の警備は大丈夫なのかと不安になってくる。
陣の中心に立つ
「information reference、analysis(情報参照、解析)」
情報が入ってくるが、帰還術などが作れそうな量の情報ではない。
「ッチ、すくない。だが、ここだけならの話だ。外に出て情報を集めれば・・・・やっぱりあの自動人形・・・・いやゴーレムを少し利用するか」
召喚の間を出て戸だけ元に戻した。あえてゴーレムに気付かせたその瞬間であった
ギ、ギギギギィィ!
動き出したのだった。
「ま、そうだろうな。だが面倒だ。
Magical expression Destruction(魔術式 破壊)」
簡単に鎧のゴーレムは崩れた。
「う、嘘だろ?!魔術破壊式に対して何の対策もしていないだと?」
「ま、別に関係ねぇけど、
Joining Reconstitution(接合、再構成)」
ただの復元魔術だがその術式の無駄のなさに心の中で少し自画自賛して部屋に戻っていた。