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身体は児童、中身はおっさんの成り上がり冒険記  作者: 力水
第二章 受験とラドル解放戦編
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第17話 問題検討


 校門前で、サテラ、アリアと落ち合う。

偶然(ぐうぜん)、二人とも試験が早かったせいで、私達よりも一〇分先に終わったそうだ。

 こうして、大して待つこともなく帰路(きろ)に着いたのである。

 その日の打ち上げ(飲み会)で、シルフィにあの場にいた意図を尋ねるが、ある人物に頼まれたの一点張りで取り付く島もない。まあいいさ。どうせジークか皇帝かに頼まれたんだろうしな。


 好き放題やった私はともかく、サテラとアリアの合格はほぼ確定だろう。アリアは、父に会いたがっていたが、学院長は不運にもその日、帝都へ出張中だったそうだ。

 出張という点は真実なのだろうが、わざわざ娘の受験日にする必要性はない。多分、逃げたんだろうな。

 今まで放っておいた娘に、どの面下げて会っていいのかわからないってところか。餓鬼かよ。

 おかげで、父と会えると思っていたアリアのテンションが低いのなんの。もう、いっそのことあの手紙を、本人に見せてやろうかとも一瞬、頭をよぎったが、短絡的(たんらくてき)な選択は良い結果を生まない。思いとどまるべきだろう。



 一週間後の結果発表の後、私達は新領地である北方領地――旧ダビデ領へと向かう。

 その間にいくつかの問題につき、検討しておきたかったのだ。

 第一、サガミ商会本来の商業活動について。

 私達は、軍人でもなければ、職人でも、農民でもない、商人だ。商人は金を(かせ)いでなんぼだし、私も独り立ちしたところだ。そろそろ、本格的に活動を商業方面へシフトしてもいい時期かもしれない。

 具体的には、やはり、新商品の開発と販売網の構築だ。

だが、新商品の開発については、この帝国には門閥貴族という致命的な(がん)がいる。無制限で世界に技術は流せない。そして、私には新領地がある。そこを拠点に、原則無制限に科学技術を開発し、新領地から持ち出しを禁止してみてはどうか。

 もっとも、新領地での私の統治にあまりにも反発が強いならば、この方法がとりえないが……ともあれ、行ってみないことにはわからないな。

 販売網については、サザーランド、帝都レムリアの二か所に商館と、料亭――《銀のナイフ》を始めとする商店を設立。

 ただし、極めて重要な問題が一つ。人材不足だ。

この数年、幾度も職員を募集したが、数回、門閥貴族や闇ギルドの息の掛かった職員が潜り込み、技術の流出の危険性や、特許の侵害につき争いが起きた。今までは、商業ギルドの協力により、事なきを得てはいるが、同様に募集をすれば、今後はどうなるかわからない。どこかに門閥貴族や闇ギルドと関わりのない労働力がないものだろうか。ともかく、この件について、今は保留とすべきだろう。

ちなみにこの度、赤鳳旅団(せきほうりょだん)をサガミ商会の職員として正式採用した。当面は主に商会を警護(けいご)する警備員として活動してもらう。

 もっとも、私がこの度独立した以上、もはや自重をする意義もない。商会の規模拡大は必須だろう。とすると、とてもじゃないが、アクイド達だけでは、圧倒的に数が不足している。今後は、戦闘職の人材発掘も行うべきかもしれない。


第二、新領地たる旧ダビデ領の経営。一定の情報は収集している。

最北端の地、ダビデは山の民こと、ラドルの民の住まう地。今回のアンデッド事件では、最初に被害を(こうむ)った地でもある。

当時の領主であるダビデ子爵は、ラドルの民の首都――キャメロットからラドル人を追い出し、自らの家臣と領民を()まわせた。

ラドル人にとって、聖地に等しいキャメロット奪還を理由に、数度、反乱が起きるが、ダビデが全て鎮圧(ちんあつ)し、以後徹底的な弾圧を開始する。

反乱を起こした首謀者のみならず、一族郎党全て処刑し、さらにラドル民から武器となりえるものを取り上げた上、監視、密告システムを作り出し、次々に処罰を繰り返す。こうして、ラドル人の力は徹底的にそぎ落とされていく。

しかし、皮肉にもこの行為が、アンデッド事件における生死の明暗(めいあん)を分けた。

北部のルドア大森林から出現したアンデッドが、直近にある城塞都市キャメロットに大挙して押し寄せたのである。大型の魔物や、竜等の大型のアンデッドにより、城壁が崩され、ダビデ子爵の家臣や領民は全てアンデッドへとなり、帝都へ大行進することとなった。

 対して当時ラドル人の各部族の集落は、アムルゼス王国との国境の一部を形成しているラドア山脈の(ふもと)に点在しており、アンデッドの襲撃から逃れ九死に一生を得たのだった。

 領民ゼロという最悪の結果はどうにか防ぐことができたが、ダビデ子爵なる愚物(ぐぶつ)の行いのせいで、ラドルの民の不信感は最高潮に達しているのは目に見えている。此度(こたび)、迷惑にも帝国の領主になった私は、彼らからすれば怨敵(おんてき)そのものだろうさ。信頼を獲得するのは、至難(しなん)(わざ)なのは子供でもわかる。

 あの変態皇帝め! 帝国でも、一番の面倒ごとを私に押し付けやがって!

 …………いかんいかん。どうもあの変態皇帝が絡むと調子が狂う。落ち着かねば。

契約した以上、少なくともあの変態皇帝が失脚でもするまでは、私の領地が没収されることはない。精々(せいぜい)、発展させて帝国の門閥貴族共に目にもの見せてやる。


 第三が、帝都での生活についてだ。帝立魔導騎士学院の合否に関わらず、当面の私の拠点は、この帝都――帝都レムリアとサザーランド。

 帝都での私の目的は、商業活動の拡大と、人材発掘、己と仲間達の戦力の増強。おまけで、【ラグーナ】(いじ)め。

特に人材発掘(じんざいはっくつ)は、この帝国で将来を(にな)える若者を見出(みいだ)した上、自然な流れで帝国改革へ誘導(ゆうどう)していく必要がある。

先日の魔導学院の入試だけでも、ロナルドやアラン、金髪幼女のような有望株(ゆうぼうかぶ)(めぐ)り会えた。彼らは、ある意味、ダイヤの原石だ。原石は研磨(けんま)しなければ、ただの石ころにすぎぬ。仮に研磨の仕方を誤れば、使い物にならない愚物と化す。つまり、この帝国のクソッタレな慣習に染まらぬ純真無垢(じゅんしんむく)な状態で、己で考えて実行する力をつけさせなければならない。教育さえ間違えなければ、あとは私の関与にかかわらず、勝手に歴史(物語)の筋書きは(つむ)がれる。

もっとも、適切な教育をできる人材がいれば、この帝国はここまで(くさ)りきってはおるまい。まいったな、結局人材不足にぶちあたるわけか。

ともあれ、まだ時間がある。おいおい解決していけばいい。

次が、己と仲間の戦力増強だが、あの赤髪の怪物に目を付けられている以上、今のところ私の最優先の事項だ。これは帝都にある最大の遺跡(いせき)である【グランドラビリンス】で(きた)えればよいと考えている。

むろん、【グランドラビリンス】は冒険者ギルドの管轄だから、冒険者の登録は必須(ひっす)となる。時間があるときにでも登録をしてみることにしよう。

最後の【ラグーナ】虐めについては、都合よく奴らと帝国の門閥貴族共も関わりがあるらしいし、徹底的にやってやる。帝国内の(うみ)の吐き出しにもなるし、一石二鳥というやつかもしれぬ。ともかく、奴らの関係者は、雑草一本すらも残さず、駆逐(くちく)する。



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