第35話 局面進展
サザーランドから北部側、滅びた街の宿の一室
「ふーん、そのガキンチョ君、そんなにやるのぉ?」
『かなり高等な術を展開させていた。しかも、予備動作なく一瞬でね』
「でも所詮、この劣等世界の技術に過ぎなかったんだよねぇ?」
『ああ、それは間違いない』
「ならば、プライドの高いあいつらがこんな三流世界の術を使うはずがないさ♬ あいつらの可能性は限りなく低い♪ 大丈夫だってぇ♫」
『しかし、あの子供、お前の存在を漠然とだが看破していたのだぞ? 甘く見るのは危険だ』
「ま~、少し頭を働かせれば、お猿さんでも気づく内容だしねぇ♩」
『それでも、あの歳であの才覚、明らかに危険分子。少なくとも今回のゲームから、排除しておくべきだろう?』
「あのね、僕の術がそんなませた子供ごときに破られると? グリムぅ、もしかして僕を舐めちゃったりしてる?」
ネロの陽気な声に初めて僅かな怒気が混じる。
『そうはいっていない。ただ、過信はするなといっているだけだ』
「だからさぁ、それが――」
『ネロ、あの人の教え、忘れたの?』
急に押し黙り、ギリッと奥歯を砕かんばかりに噛みしめるネロ。
「わかってるさ。君が今回のゲームのマスターだ。従うよ。ボクチンはどうすればいい?」
『そこから西に三〇キロの街――サームクスにアンデッド三万を送れ。あとはこちらで何とかしよう』
「了解♬ それじゃあ、楽しいゲームにしよう」
『ああ、大切で、愛しいあの人を私達から奪ったあのムシケラ共に、とびっきりの恐怖と絶望を与えよう!』
「慎重に、無慈悲に」
『狡猾に、残忍に』
「『私は(僕は)、奴らを殺すことを誓うっ!!』」
人っ子一人いなくなった宿屋の部屋内にその叫び声が響き渡り、ゲームの幕は新たな局面を迎える。
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