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第20話 決勝戦開幕宣言

魔導学院第一闘技場選手控室


「これが最後だな」

「うんなの!」


 プルートの言葉にミアたちも頷く。

 次に勝てば優勝。優勝すれば、ミアは退学にはならない……はずだ。絶対に負けるわけにはいかないんだ。


「ねぇねぇ、Sクラスの代表メンバーって誰だと思う?」

「間違いなく、ロナルドとアランは出ると思うの!」


 あの二人を省くなどあり得ない。多分今までの予選リーグは、二人の意思で代表メンバーから外れていただけのはず。そして、それは他の三人も同じだと思う。


「他はまったく読めない。ただ、僕だったらあの赤髪の子は絶対に代表に入れるけどね」


 エイトが顎に手を当てながら、この場の誰もが考えていた危惧を口にする。

あの赤髪の少女は全てが異常だった。ロナルドたちの接し方からいって、相当な実力者なのはまず間違いはあるまい。


「サテラか……」


 クリフが複雑な表情でその名を口にする。


「あの子、お前んとこのメイドなんだろ? 本当にすげぇ偶然だよなぁ」

「ああ、まったくだ」


あの赤髪の子がクリフの実家であるミラード家のメイドだった。しかも、妹も同じSクラスにいるらしい。偶然というにしてはあまりにも出来過ぎている。

それにあの赤髪の少女は確か試験場でシラベ先生と一緒にいたような気がする。とすると、シラベ先生もミラード家と関わりを持っているのだろうか。


「ねぇクリフ、シラベ先生ってミラード家と――」

「そういえば、知ってる? シラベ先生の実家って南部方面にある子爵家なんだってさ。この前の休みに半年ぶりに実家に帰郷したって言ってたよ」


エイトが、まるでミアの疑問に被せるように丁度、ミアが最も知りたかったことの解を口にする。

子爵家出身か。だとすると、ミラード家と関わりがあるというのは少々強引すぎたか。まあ、あれほど顔が広い人だし、あの赤髪の少女も先生がその才能を見出したのだろう。変に勘繰り過ぎたかもしれない。


 キーンコーンキーンコーン♫


 チャイムが鳴り響く。

 そろそろ入場の時間だ。


「じゃあ、そろそろ行こう!」


 エイトが席を立ち上がり、ミア達も椅子から腰を上げて控室を後にした。


 

 いつものような威勢の良い司会者の紹介の中、決勝戦の会場に入ると、今までのような怒号や罵声は恐ろしいほど無くなっていた。代わりにあるのは、第一闘技場を震わせんばかりの大歓声。

 

(す、すごいの)


 ただただ、圧倒されつつも既に待機していたシラベ先生の元へ行く。

 先生はSクラスの代表選手を凝視しており、ミア達が到着したことにも気づいていない様子だった。こんな先生は数度しか見たことがない。

 先生の視線の先にはロナルド、アラン、クリフの妹に、金髪ツインテールの少女、そしてあの赤髪の少女――サテラ。ある意味ミアたちが予想通した通りの面子だ。


「シーザー、シルフィ、一体、何を考えている!」


 先生は押し殺した声を上げて、Sクラスの代表メンバーの傍にいる美しい長身青髪の女性とその隣の赤髪の男性にマスク越しにもわかるほど鋭い視線を送っていた。

そんな先生にエイトが傍まで行くと、


「先生!」


 声をかける。


「お、おお。悪いな」


 誤魔化すように、ミア達に顔を向けた先生はいつもの冷静沈着な姿に戻っていた。


「御指示を!」

「そうだな……」

 

 先生らしくもなく顎を引いて暫し考え込んでいたが、直に顔を上げると、


「精一杯、頑張りなさい」


 ただ、それだけを口にする。

 らしくないもって回った言い方をする先生に若干の違和感を覚えながらも、


「「「「「はい!!」」」」」


 試合場である円武台へと向かって歩を進める。


 

『さーて、お前らもうお待ちかねだよなぁ!! 至上最高の神童の集まりSクラスと、学院史上最底辺のお荷物クラスGクラスの優勝決定戦だぜぇ!! まさかこんなカードが実現すると本気でお前ら思ってたかぁ!!?』


やけにテンションが高い司会者の女性が、身体をのけぞらせながらも大音声を上げていた。


『特別に選手の紹介だ。まずは、学院成立史上最高にして史上のSクラスのエリートどもからだ!

 まずはこいつからぁ!! 銀髪の美少年――第一皇子ロナルド・ローズ・アーカイブ!』


一際大きな歓声が上がる。司会者は次々に紹介を続けていく。


『ホルス軍務卿の子息、神童アラン・クリューガー!

 魔導騎士学院学院長の愛娘――アリア・ベルンシュタイン!

 攻撃魔法なら学院でも随一天才少女――アクア・ミラード。

 メイド姿の不思議少女――サテラ!!』


 万雷の拍手と口笛に答えるように、ロナルドやアラン、アリア、アクアは両手を上げてそれに答える。

ただ一人、メイド姿の少女サテラだけは無表情で佇むのみ。


『対するは、Gクラスの落ちこぼれ、今大会最大のヒールどもだぁっ!!

 帝国の大将軍ランペルツ・ブラウザーの遺児――プルート・ブラウザー!

 帝国でも最高峰の武力を有するハルトヴィヒ家の令嬢――テレサ・ハルトヴィヒ!

 幼い容姿だが、こいつはこれでも13歳だぁ!! 金色の妖精――ミア・キュロス!

落ちたホープ――クリフ・ミラード。なんとミラード家からの二人目の決勝進出だ。マジスゲーな、ミラード家!!

最後が、突然学院に現れ学院補生となった現役冒険者少年――エイト!』


 Sクラスのような黄色な声援ではなかったが、結構な数がミア達Gクラスを鼓舞せんと声を張り上げていた。


『帝国中の期待を背負った超絶エリートが無難に勝利するのか、それとも大穴狙いのブッキー共を喜ばせるかっ! 勝利の女神が微笑むのはいずれか一つ!』


 司会者は言葉を切り、右手を上げて目一杯息を吸い込む。

 そして――。


『では開戦っ!!』


 右手を勢いよく振り下ろし、咆哮を上げた。

 ミア達のGクラス最後の戦いの火蓋はこうして切られた。

 


お読みいただきありがとうございます。

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