第33話 魔法武器研究
バフォメットなるバケモノの討伐の三時間後、ようやく意識を取り戻す。
バフォメットと激闘を繰り広げた場所の中央には、四方から伸びる階段のようなものが出現しており、その頂点には二つの宝箱が静置してあった。
一つ目の宝箱が【Sランクの魔石3個】であり、もう一つが【バフォメットの角笛】という笛だった。後で新たな魔導書作成にでも使用するとしよう。
今日は兎に角、疲れたし、この先の探索はあとにしようと思う。
あの機械的な女の声が、第二ステージの解放とか言っていたようだし、おいおい調べることにするさ。
50階層最終地点は、試練終了後、セーフティーポイントになっていたので、そこからサガミ商会へと転移した。
案の定、ベッドに横なった途端、私の意識はあっけなく消失する。
次の日の早朝、最近の日課となった魔法武器の研究を行う。
一応、コツコツとルロイの元へ通い習っていたから大分、魔法武器についてわかってきた。
そして、魔法武器製造についてのいくつかの致命的な欠陥が判明したのだ。
即ち、今までは魔鉱石の効力を十二分に発揮するように、武具を構成する金属の形や強度を調整していた。
要するに、魔鉱石の内容に、武具を合わせていたわけだ。だが鍛冶師は魔法師ではないことが多い。そんな魔法についての素人に過ぎない鍛冶師が、魔鉱石に合うように武具を調整するのは、土台無理な話だったのだ。
つまり、鍛冶師の作った武具に合うように魔法師が調整しなければならない。そのためには、魔鉱石という石を分析し直す必要があった。
魔鉱石とは、ある魔法の魔法語を刻み、魔力を加えると発動する石のこと。
分析の結果、この不可思議な石は、詠唱を文章化し、それを詠唱の代わりとして用いて発動するという性質を保有していることが判明する。
即ち、今までの魔法が【音声魔法】だとするなら、この魔法武器は【言語魔法】といえばよいだろうか。魔鉱石はこの【言語魔法】を成立させる材料ってわけだ。
もちろん、このような奇跡の塊のような石は、おいそれと得られるものではなく、鉱山からとれるものであり、この世界で最も貴重な石といわれていた。
故に研究素材として仕入れるのは結構骨だったが、結局、ライナの紹介で、研究するのに十分な数の魔鉱石を手に入れることができた。
私は常々、魔法の発展には魔石が寄与するのではないかと考えていた。何せ魔導書を作り出す材料であり、この世界では様々な魔法の触媒として用いられる石だ。この魔鉱石と一定の関係があると考えるのが自然だろう。
魔石に当たりをつけて研究を進めた結果、純度の高い魔鉱石ほど魔石とよく似た性質を有することを発見する。この事実を突き止めて以来、この魔鉱石についての研究が急激に進んだ。
そしてつい先日、複数の魔石を1500度~1600度の範囲で約一時間煮込むと、溶解し混ざり合い、超高純度の魔鉱石と同等の鉱物となることを発見したのだ。
要するに、魔石と鉄等の金属の混合鉱石が一般の魔鉱石であり、これから、魔石の割合が高くなるほど、高純度の魔鉱石となるわけだ。
ともあれ、これで魔鉱石の大量生産が事実上可能となった。
当面の課題は、この魔鉱石をいかに効率よく魔法武器として昇華するかだ。
この点、魔鉱石に魔法語を刻んでから鍛錬してみたが、そもそも魔法語の効力が無効化されてしまう。逆に既にできた武具に魔法語を刻むと、魔法武器としての性質は保有していたが、数段その威力が落ちてしまった。おまけに、発動には魔力を籠め続けるという操作が必要となる。
威力が落ちて、かつ自らの意思で魔力を籠めねばならないなら、魔法を使用した方が早い。それでは、意味がないのだ。
意識を集中し、魔鉱石で拵えた短剣に、詠唱を唱えつつ魔力を送り込むと、短剣は発光し、文字が刻まれる。一度魔法語を刻めば、それは固定され、以後の修正は不可能となる。これも最近発見した重要な性質の一つ。
出来上がりだ。
ストラヘイム郊外にある第二訓練室へ行き、さっそく実証実験を行うことにした。
私が造ったのは5つの武器。短剣、長剣、ナックル、槍、小剣。
短剣、槍には、威力を高める【風付与】、長剣、ナックルには当たると燃える【火柱】、小剣には炎を飛ばす【火球】を刻んでいる。
「やはりまだ駄目だな」
威力が通常の半分程度に落ち込んでしまっている。何より使用者が魔力を籠めねばならないのだ。コンマ数秒で生死を決める死闘では、全くといっていいほど使えまい。
「駄目って……お主、その武具がどれほど貴重なものかわかっているのか?」
後ろで実験を観察していたルロイが、そんな呆れかえった口調で尋ねてくる。
「こんなもの、ただの玩具ですよ」
これらを作ったのは、ルロイではなく私だ。武具自体、お世辞にも良い出来とは言えない。
「その玩具に、数千万Gの値が付くんじゃろうがな」
「御冗談を」
「本気でそれを冗談と思っているところが、お主の恐ろしいところじゃ。
まあいいさ。面白そうなのは間違いない。儂も一枚噛ませろ」
「それはありがたい。金属の鍛錬は素人の私ではどうにも限界のようなものでしてね」
肩を竦めると、大きなため息を吐き出し、ルロイは部屋を出て行ってしまう。
そうだな。そろそろ私も授業の時間だ。
出来上がった魔法武器をアイテムボックスへ仕舞うと、生徒達の待つ教室へ移動した。
お読みいただきありがとうございます。




