第21話 初のクエスト受理
「彼はエイト、諸君らの仲間だ。仲良くするように」
「ど、どうもよろしく……」
おどおどしながらも、ペコリと頭を下げるエイトに、
「ちょっと待ってくれ。彼は?」
案の定、クリフが噛みついてきた。
「だから、エイトといったろう」
「名前じゃないっ! 彼は誇りある魔導騎士学院の生徒なのかっ!?」
クリフの疑問は無理もない。今のエイトは、いわゆる冒険者の服装であり、そもそも魔導騎士学院の制服を着ていないから。
「学院補生とかいう制度を利用させてもらった。彼はお前達ともに、臨時のGクラスのメンバーとして、試験を受けることになる」
学院補生とは、学園が仮の入学を認め、定期試験において一定の成績を収めた場合に正式な入学を許す途中編入制度である。もちろん、定期試験で上位20%以内に入らねば入学を認められないことからも相当難関だ。この学院補生制度は、そんな難解極まりない条件からか、担当教授の推薦と学院長の許可さえあれば利用できる。
もっとも合格の可能性が極めて低いことと教育の労力や経費は全てその担当教授の負担となることも相まって、実際にこの制度が利用されたことは学院の長い歴史上数えるくらいしかないそうだ。
「そんな簡単に――」
批難の言葉を吐き出そうとするクリフを右手で制し、
「これは教授たる私が、帝国と学院の制度にのっとり決定したことだ。不満があるなら、出世して、君が制度を変えたまえ」
そう突き放す。
「……」
ギリッと奥歯を噛みしめていたが、そっぽを向く。論破されると現実逃避か。子供らしい反応だ。
そんなクリフなど歯牙にもかけず、テレサが好奇心に満ち溢れた顔でエイトに迫っていた。
「ねぇねぇ、君、その恰好、もしかして冒険者?」
「う、うん……」
躊躇いがちに頷くエイトに、
「わたくしも魔物、良く倒すんだよぉ!」
(ああ、素手でな)
ハルトヴィヒ伯爵殿の言葉が真実ならば、テレサは幼い頃から近隣の森で、魔物を対象に狩猟活動に勤しんでいたらしい。しかも、素手で。流石の私も伯爵殿からそれを聞いたときは、絶句したものだ。
「あの……その……僕は――」
消え入りそうな声を上げるエイトに、
「俺は別に誰が増えようと構わねぇよ。それより、授業を始めてくれ」
「そうなの」
エイトに興味すらも示さないプルートとミア。まったくこいつらときたら……。
「では、これを各自受け取るように」
名前と番号だけが書いてある木製のプレートを、エイト以外の全員に渡す。
「これは?」
「みてわからんか。冒険者のメンバーズカードだ」
「ざけんなっ! 俺達は、冒険者なんかに――」
強い否定の言葉を口にするプルートに、有無を言わさず、もう一枚のカードを放り投げる。
「それが、お前達の現状だ。各自検討するように」
そのカードは、天然のドロップアイテムを素材に永久工房で開発した魔具の一つであり、一般ステータスを表記化するカード。一応、平均ステータスをレベルという概念で表示するという親切機能付き。おおよそのレベルがあった方がやる気もでるだろうかならな。
具体的には、プルートのカードは次のように表記されている。
――――――――――――――――
〇プルート・ブラウザー
ステータス
レベル4
・HP:G(15%) ・MP:G(28%)
・筋力:G-(33%) ・耐久力:G(43%)
・魔力:G(2%) ・魔力耐久力:G-(88%) ・俊敏力:G(76%)
・運:G(45%) ・ドロップ:G-(1%) ・知力:G+(19%)
・成長率:E-(89%)
――――――――――――――
レベルは平均ステータスにより、私が独自に換算したもの。
レベル1~10がG、レベル11~20がF、レベル21~30がE。
レベル31~40がD、レベル41~50がC、レベル51~70までがB。
レベル71~80までがA。S領域はレベル80以上とした。
まあ、あくまで私個人で換算したものだから、結構適当だが、まあ、一応の目安にはなるだろう。
プルートとクリフ、エイトの成長率はE-。ミアとテレサの成長率がEだ。全員この世界の住人としてはトップクラスの成長率だろう。これ以上を望むのは聊か欲張りというものだ。
ちなみに、昨晩私は既に保有する素材を用いて、生徒達の教育に使える魔法を探した。なぜか、収納されていた【鬼神の左腕】なる素材により、『伝説の教師』という称号付与魔導書を作成することができたのだ。
この称号の契約後の効果を解析してみると、
――――――――――――――――
〇称号:伝説の教師
説明:師父が生徒達に一定の課題を与え、それをクリアすると、クリア報酬が得られる。
――――――――――――――
クリア報酬の意味は不明だが、ぼちぼち調査していけばいいだろう。
「レベル? 筋力? 何だこりゃ?」
カードを眺め素っ頓狂な声を上げるプルートに、じっと精査しているミア。
クリフは胡散臭そうにカードに欺瞞の視線を向け、テレサに至っては案の定、新たしい玩具に目を輝かせていた。
対してエイトは――。
「レベル、ステータス……」
神妙な顔でカードを凝視していたのだ。
「どうした?」
「い、いえ」
尋ねると慌ててポケットに、カードをしまうエイト。
怪訝に思いながらも、皆をグルリと見渡し、
「今から、冒険者ギルドでクエストを受けるぞ」
そういい放ち、全員をストラヘイムのサガミ商会の裏の空き地まで転移した。
生徒達を連れて、ストラヘイムの冒険者ギルド支部館へ向かう。
建物に入ると、昨日確認したクエストが張り付いているボードの傍まで行く。
「ふむ、Gランクのクエストは――」
Gランクのクエストを記載した羊皮紙は最も左端のボードにピンで張り付けられていた。
迷宮にもいきたいし、最初は素材の採取などがプルート達には手ごろなのだがな。
「これなんかいいかもな」
一枚の羊皮紙をピンから外す。
――――――――――――――――
〇クエスト:急遽アルミラージの肉八匹分を求む。
・依頼人:ストラヘイム食肉店協会
・依頼料:800G
・ランク:G
――――――――――――――
アルミラージは、G-ランクであり、初心者用の魔物だ。魔法を使用可能となった生徒達ならばこの任務も楽々、クリア可能だろう。
昨日の受付嬢の元まで行くと、依頼書をカウンターに出す。
「我らGクラスが、この依頼を受けよう。構わんかね?」
「は、はい。もちろんです」
昨日ウィリーを交えくれぐれも私をシラベ・サガミと呼ぶように伝えている。どこかぎこちないのは私が退出した後にウィリーの奴が散々私についてあることないこと吹き込んだせいだろうな。
逃げるように奥の扉に姿を消す受付嬢。
「先生、あの姉ちゃんに一体何したんだよ」
ジト目で私を見ながらも、そんな人聞きの悪いことを尋ねてくるプルートに、
「さぁてな。私の華麗なる活躍を同僚から聞き、感動で震えてでもいるんだろう」
そんな実に説得力のある返答をしてやる。我ながら嘘のない適切な言葉だと思うぞ。
「いや、俺には先生に恐怖して震えてるようにしか見えなかったんだがな」
「彼女なりのテレ隠しなのだろうさ。所謂、ツンデレ、いや、少し違うか」
「これっぽちも、合致してる気がしねぇよ」
「う、うーむ。そうか……」
少々、分が悪いな。話題を変えるとしよう。
「で? あのお転婆女子ーズの二人は?」
隣のエイトに尋ねると右の人差し指を武具のショップに向けて、
「あそこです」
返答してくれた。
テレサとミアは、右端の武具店で赤子のように顔を輝かせつつも、武器を眺めていた。
そういや、テレサもミアも少なくとも今までは、接近戦を得意とする戦闘スタイルだったな。
冒険者になったことだし、丁度良い機会だ。武器の開発でもするか。唯一開発した武器がこれでは、私の沽券に関わるしな。
さっきから、通り過ぎる女性冒険者について鬱陶しくもブツブツと品評しているムラに視線を落とし、
(ムラ、お前からみてあの売られている武器はどうだ?)
そんな素朴な疑問を投げかけてみた。
『剣やねん』
億劫そうに即答するムラ。ほんと同じ剣に対しては恐ろしいほど淡泊だな。まあ、剣のラインの魅力とか熱く語られても困るのも確かではあるのだが。
(それは見ればわかる。どんな性能かと聞いているんだ)
『うーん。駄作やね』
そっけなくそう答えると、再度、女性冒険者について妄想を垂れ流し始めた。
やはり、ムラからみても駄作か。私の解析でも店頭に並べられているのは、全てG-ランク。よくてG+が僅かにあるくらい。
あれでは武器作成の参考にならんな。もちろん、【永久工房】を使えば、簡単に作成可能なのだろうが、私がいなければ作れぬ力や技術など下の下だ。
一度、武器について調査する必要はあるな。まずは現物をみなければ話にならん。ルロイは、私と出会う前まで冒険者の武器をメインで作成したらしいし、尋ねてみるとしようか
「お待たせいたしました。たった今、クエスト――『アルミラージ8匹の採取』を受理いたしました。Gクラスの皆様、どうぞお気を付けて」
仰々しく頭を下げる受付嬢からギルドの印章が押された羊皮紙を受け取り、
「エイト、二人を呼んで来い。直ちに、迷宮へ出発する」
「は、はい!」
エイトを促し私達は、このストラヘイムが迷宮都市と言われる所以であるダンジョンへと向かうのだった。
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