宿へ
1時間後。
もう既に夕刻に入ろうとしていた。
二人はガンガオに起こされる。
「・・・着いたのか・・・。」
「おはようマスター。」
「ああ。早速だが手続きを頼む。」
三人は馬車を降りる。
「何か書けばいいのか?。」
「ナサリーが持ってくる書類にサインを書いて貰いたい。ああ。別に血印でも構わんぞ。」
「じゃそれで。」
ギルドの中に入り更に奥へと案内されガンガオの部屋まで案内される。
「適当に座ってくれ。」
部屋の中は必要最低限の物しか置いてなかった。
整理されていて無駄がなく仕事ができそうだ。
ゼラはとりあえずソファーに座る。
横にシスが座り正面にガンガオが座ったと同時にナサリーが書類を持ってきた。
「すいませんがこれに。」
「はいはい。血印でいいよな。」
「はい。お願いします。」
書類には報酬金額と素材納品金額が書かれていて最終確認の物とドラゴンについて他言無用と言う内容だった。
「うい。これでいいよな。」
そして血印をしナサリーに渡す。
「はい。確かに。では報酬の方はカードに入れておきます。」
「ぐへへ・・・。」
いきなり不気味に笑い出すゼラ。
「なんだよ気持ち悪いな。」
ガンガオは少し引いている。
「いやー。これで贅沢出来ると思ってな。とりあえず今日は宿に泊まって家でも買おうかな。」
「ほう。なら紹介してやろうか?。」
「じゃお願いする。」
「まぁ金貨100程度出せばかなりいい家が買えるから。」
「ふむ。まぁ見てからのお楽しみでいいかな。じゃ失礼する。」
「ああ。ご苦労さん。」
立ち上がり部屋を出て行く二人にガンガオは手を振りゼラも軽く返す。
「しかしいい子達ですね。」
「素直だよな。それでいて悪い欲は無いみたいだ。普通はあのぐらいの年だと力に溺れ欲望のままに生きるのだけどな。」
「まぁ暫くは様子を見ます。隠しているかもしれませんし。」
「だな。頼むぞ。」
「ええ。」
ゼラはギルドを出るとオススメと言われてた宿を目指す事にした。
「確か真っ直ぐ行った先のポップルだったな。」
「ん。」
とシスと手を繋ぎ宿へと歩いていく。
途中バルバッファロー串焼きやバルバッファローのチーズで作ったカチョカバロをパンで挟んだ物とお茶を食べ飲みなら宿を目指す。
串はまんま牛肉。
チーズの方も癖がなく乳の味が濃く美味しくパンにマッチしていた。
紅茶はダージリンに近い香りがし美味しかったがシスは少し苦手のようだ。
支払いは全てカードで出来た。
「ここか。」
宿屋に着いた。
大きさはそれなりで綺麗で清潔感溢れる宿だ。
とりあえず中に入ることにした。
「いらっしゃいませ。お二人ですね。」
出迎えてくれたのは20歳ぐらいの女性だった。
割烹着を着ていて髪は薄緑色で長く後ろで止めてポニーテイルになっている。
「あえず大きめの部屋で一泊。」
「朝食と夕食の方はどうなさいますか?。」
「お願いします。」
「では三階の突き当たりの部屋で一泊銀貨2で朝食夕食食事付きなので銀貨4枚です。」
「これ使えますか?。」
「カードですね。分かりました。」
女性はカードを受け取ると何かにかざし直ぐに返してくれた。
「ではこちらが鍵と食券になります。」
渡されたのか小さな鍵と赤色の紙2枚と青色の紙が2枚。
「朝食の方は朝6時からこの一階の奥の食堂で出しています。夕食は夜6時からになります。朝食は赤、夕食は青の食券を渡してもらえれば食べれますので。」
「分かった。ありがとう。」
近くの階段を上がっていく。
三階に着いて突き当たりの部屋のドアを開け中に入るとかなり広くベットが4つあり4人泊まれる場所だった。
風呂場はないが洗面台とトイレはあった。
「いいね。」
「ん。すごいふかふか。」
シスはいきなりベットに飛び込み感触を楽しんでいる。
「あ。この世界に風呂ってなさそうだな。」
「お風呂ないの?。」
「まぁ仕方ないか。とりあえず体拭くか。布買いに行こうか。」
「ん。」
宿を出て体を拭く布を探すが質が悪い布ばかりで悩んでいた。
「困ったな。」
「硬いのばっかり。」
「せめて柔らかいのがいいよな。っとあったぞ。」
と目の前に柔らかそうな布を発見する。
「いらっしゃい。」
中年の男が興味を示したゼラに声をかける。
「どうだい?。いい布だろ?。」
50×50cmの柔らかい布を手に取る
「ええ。これいくら?。」
「銀貨2枚だ。」
「カードは?。」
「すまないがうちは加盟店じゃないんだ。」
「分かった。2枚くれ。」
といって銀貨4枚渡す。
「確かに。」
布2枚を手渡してくる。
「ありがとう。」
店から離れる。
「ふむ。ロックシルクってのか。普通のシルクと違って水に強く丈夫吸引性が良いのに安いのか。」
「でも触り心地いいよ?。」
「まぁとりあえずこれで体は拭けるな。戻って体拭くか。」
宿に戻る事にした。
戻ると宿の女性に、
「あ。すいません。水浴び場は宿一階の食堂の更に奥になっています。男女分かれていますので。」
「ああ。ありがとう。じゃ早速行こうか。」
二人で奥へと進んで行く。
「水浴び出来るね。」
「まぁこれは濡れないように拭き取り用だな。」
「ん。」
男女に別れている場所に着く。
「シスはあっちな。」
「いや。」
「いやいや。嫌じゃなくあっち。」
「どうしても駄目?。」
今にも泣きそうな目で見つめいる。
だがゼラは他人にシスの裸を見られるのを嫌い。
「俺以外の男にお前の裸は見られたくない。だからあっちな。」
「・・・わかった。」
女性用の方へ走って行く。入る前にちらっとゼラの方を見て入る。
「さてこれでよしっと。ちゃっちゃと浴びるか。」
ゼラも中に入る。
中は小さな銭湯の脱衣所の様になっており先客は誰もいないようだ。
とりあえず荷物をそのロッカーに入れ着ているもの全て中に入れ鍵を掛ける。
手持ちにはシルクの布と鍵だけで奥に進むと桶と水が出ている木の蛇口の下に樽が置いてあり水がたまるようになっていた。床は木材でところどころ下に流れるようになっていて更に下水ににつながっているようだ。
とりあえず気温は少し暖かいぐらいなので水浴びを始める。
特に何事もなく浴び終え買ったロックシルクで拭き取っていく。
服装も整え脱衣所から出る。
シスが心配なので暫く待つことにした。
シスの方はと言うとゼラと同じく先客はおらず脱衣所で鎧一式を自分の意思で外す事ができ亜空間に転移収納できる。
鎧の中は下はハーフパンツに白い下着で上はタンクトップに白いブラ。
流石服や下着を亜空間に転移収納は出来ない為自分で脱いでロッカーに入れ鍵を掛ける。
鍵を持って奥に進みすぐさま水浴びを始める。
全身を念入りに汗を流す。
ゼラより2倍近く時間がかかった。
出るとゼラが待っているのを見つけると走って向かう。
「遅くなりました。」
「気にするな。じゃ部屋に戻って明日の予定考えるぞ。」
「ん。」
そして部屋に戻りアウラとスィーナも呼び四人で話し合う。
「ではまず明日の予定だがまず皆の服を買いに行こうと思う。」
「私達もですか?。」
アウラは少し驚いている。
「ああそうだ。というかそこが重要だ。その服装じゃまず人前というか俺以外に見せたくない。」
「分かりました。」
スィーナはゼラの気持ちを理解しているのか微笑みながら承認した。
「んでだ。どうやってお前たちの体に合う物を買うかだがとりあえずローブを買ってくるからそれを装備して服を買いに行こうと思う。ローブのサイズは大体分かるし。後は下着なんかも10着ぐらい欲しいな。」
「ん!!。」
シスが手を挙げる。
「欲しいものあるのか?。」
「欲しいってより要望。」
「ほう。どんな?。」
「マスターに服を選んで欲しい。」
「ああ。それはいいですね。」
「僕も賛成。というか確定でお願いしたい。」
「あ・・・。はい・・・。」
と強制的に決まってしまった。
「後は今の俺達について。」
「喋れることになった事でしょうか?。」
スィーナが言ったがゼラは首を横に振り、
「いや。それはもう置いておこう。問題はスキルについてだ。」
「それはどうゆうことですか?。スキルは問題なく発動し威力は落ちていません。」
アウラはそう言う。
レッドドラゴンとの戦いで動作も威力も問題なく確認が終わっている。
「動作は問題ない。詠唱時間も前と変わらない。装備の能力も問題なく発動している。だけどね。この四人に新しいスキルが増えてんだよね。ドラゴンスレイヤーってのが。効果は龍種に特攻。1レベで1.5倍のダメージに状態異常効果時間が2秒上がる。」
「え?。あれを倒しただけでスキル習得してたんですか?。」
アウラはキョトンとする。
「新しいスキルがこの世界に一杯。」
「そうだ。だから他の特攻系もなにかあるはずなんだ。」
「マスターはそれを集めていきたいと?。」
「当たり前だろ?。俺みたいな廃人にこんな物見つけさせたら疼くに決まってる。まだまだ成長できるんだからな。」
「ん。私も強くなる。」
「いいぞシス。そう来なくっちゃ。」
二人はやる気が一杯になっている。
「それから他についてはここの人達は人の姿をしていれば人として認識しているようだ。神眼持ちはおらず魔眼持ちが現在ギルドのナサリー以外見当たらず精々鑑定眼だけだ。この事から魔人がこの世界に大量に居ないもしくは倒せないみたいだ。」
鑑定眼を10にし魔族を1000体と魔人を1体を撃破すると貰えるのが魔眼。
神眼と違い見えるのは名前、性別、ステータスと物の定価の値段のみ見える。
神眼はユニークスキルで神族のレイドボスを倒した時確立で習得可能。
「そこは歴史書なので情報を収集すればいいかと。」
「だな。そこは明後日辺りにでも本がある場所でも探すか。」
「まとめると、明日は服などの様々な買い物。明後日に情報収集でよろしいです?。」
「ああ。とりあえず明日は皆で買い物に食事と色々楽しもうか。」
「はい。ではまた。」
「楽しみだねアウラ。」
二人は消える。
「う~ん。」
「どうしたの?。」
「いや俺に対して不満ないのかなってさ。」
「無いと思う。私達はいつでも呼ばれるだけで嬉しい。」
(そう思うと仕方ないとは言え前の使い魔達には悪い事をしたなぁ~。)
ゼラは後輩に預けた使い魔達を思い浮かべる。
「大丈夫。」
シスが悟ったように、
「彼女に預けた使い魔達は居場所を作ってくれた事に感謝してた。」
「そうか。ならいいんだけど。」
「ただ。もっと強くなりたがってもいた。」
「あの世界じゃ叶わないな。」
「うん。」
「・・・。お腹減ったな。」
「食堂行く?。」
「ああ。行こうか。」
一緒に食堂に向かった。
食堂に着くと席を座る前に厨房のおばちゃんに青の食券を渡す人達が見えたので同じようにする。
すると焼きたてのパンとスープに鶏肉のソテーがトレイに乗せ渡される。
フォークとスプーンは木製だった。
席に着き食べてみるとスープはコンソメに近く具沢山で野菜の甘みが強く出ている。
鶏肉みたいなのは兎で癖は無くあっさりとした油で淡白な味わい。
パンの方はフランスパンのような硬さで塩気より甘味の方が強く外はカリカリで中はふわふわ。
「美味しいな。こりゃいい。」
「うん。私ばかりずるいけど。」
「まぁ明日からは全員で食べような。」
「楽しみ。」
その後はシスと一緒に寝ることになりシスを抱きしめながら眠った。