修行の旅へ
夕刻。
「思った以上に早いな。」
「そうですね。」
「・・・。」
ゼラは情報を聞いたのでアリシアとシスと共にその方角へ向かっている。
アウラとスィーナは村でもしもの為に待機している。
森を抜けた直ぐ前に野宿の準備をしている軍が見えた。
神眼で人数を確認すると5000人、冒険者が300人合わせて5300人の部隊であった。
ガンガオが指揮を取っているのが見た。
ガンガオもすぐにゼラに気付きナサリーに後は任せてゼラの方へ向かってくる。
「おう。どうやら被害の方はあまり出てなさそうだ・・・ってアリシア・・・。その首輪・・・。」
アリシアに着いている首輪を見て青ざめる。
「大丈夫ですよ。主人はゼラ様ですし。」
ニコニコとアリシアは嬉しそうに言う。
「・・・。はい?。」
「まぁ何というか・・・。面倒だったから着けた。それ以上でもそれ以下でもない。むしろこれで子種せがまれないからいいかなって。」
「・・・。何となくだが帝国に渡るなら着けてくれとアリシアが頼んだ。ついでにしつこくお願いされた子種をそれで止めた感じか。」
「まぁ成り行きでそうなった。」
「まぁ・・・。本人が良いって言ったらなら咎めはしない。そもそもそれを着けると普通は感情が無くなり人形の様に動くのにお前がそれを望んでないってのは一目瞭然だ。」
「え・・・。これそんなんになるの・・・。」
「分からずにやったのかよ・・・。」
それからガンガオに案内され司令部のテントの中へ案内される。
シスを抱きしめながらテーブルの奥に立ち、その横にアリシアが並ぶ。
ガンガオは地図を広げゼラの前に向かい合わせの場所に立っている。
「何も無いけどすまないな。」
「気にしておりませんよ。」
「でさ。今後について話をしたいんだけど。」
「その為に来たんだよな。」
「・・・ふにゃ・・・。」
「気が抜けるような甘い声を出すなよ・・・。」
「無理・・・。」
「じゃ離れる「嫌・・・。」だそうだ。まぁ我慢してくれ。」
「はぁ・・・。とりあえず今軍の方の隊長三名とキャリーが情報収集の為に動いている。でだ結局どうなった?。」
「まぁ攻めてきた部隊は全部壊滅させてたよ。」
「規模は?。5000と3000だったかな?。んで二波には赤いフルアーマーがいたけど消滅したし。」
「今赤いフルアーマーって言ったか?。」
「間違いありませんよ。無敗将軍ダダリオ・ガレン・オールマニン。彼が指揮していたアサルト部隊で間違いありませんが正直跡形も無く吹き飛んでしまったので証拠が無く・・・。」
ガンガオが頭を抱え、
「ゼラ・・・。お前は一体何したんだよ・・・。」
「500人にエンチャントを施して魔力を俺と同じ値にして500本の業火の炎ってより爆撃で地形が溶けて溶岩溜りになったね。うん。エルフ達も驚いてた。んで俺もやりすぎたかなって思ってる。けど後悔はしてない。」
「・・・。想像しただけでも恐ろしいな。」
「ガンガオなら装備有りなら耐えれるだろ。」
「まぁレッドドラゴンのブレス程度は余裕だからな。しかし本当にお前は規格外過ぎるわ・・・。」
「ガンガオが認める規格外は初めてですね。」
「そりゃな。ゼラ単体だけの力は同レベルの俺ぐらいなら足止めはできるが止めをさせないこっちも倒せない非常に面倒くさいだけだ。けどな数が増えれば増える程こいつの戦力が増えるんだよ・・・。付与魔術に補助魔術に妨害魔術に回復魔術と戦争での絶対優勢が揺るがない。」
「あれ?。術師なのに属性魔術は扱えないのですか?。」
アリシアが疑問に思う。
「それが俺の弱点。攻撃魔術やスキルは一切使えない。」
「・・・それって弱点なのでしょうか?。」
「火力が一人じゃ全く出ない。正直ガンガオの職の同等レベルの最下位。それに防御は貧弱でガンガオの攻撃一発喰らえば致命傷になるかもってレベルだし。」
「でもお前俺の攻撃全部避けてるじゃないか。」
「そりゃな。当たると痛いし。」
「なる程。ガンガオすら凌駕する回避能力をお持ちで。」
「これはスキルとかじゃないけどな。」
「だよな・・・。お前は一体何と戦ってたんだよ・・・。」
「いっぱい。正直覚えてない。」
話をしていると、
「ガンガオ。あ。ゼラくん達も来てたんだ。いらっしゃい。」
キャリーが入ってきて軽く挨拶をする。
「どうだった?。」
「敵影無し。死体や装備の質から寄せ集めの部隊と跡形もなく吹き飛んだ場所があった。でもゼラくんってあんな規模の火の魔術なんて使えないと思うんだけど・・・。もしかして付与魔術?。」
「もしもじゃなく現にさっきエルフ500人を自分の魔力と同じにして業火の付与魔術を施し一斉射撃をしたそうだ。」
「ただの矢があんな威力になるのね・・・。絶対ゼラくんとは敵対したくないな~。」
「とりあえず今後についてだけど・・・。」
始めにエルフの鍛えるのとその為に一ヶ月防衛して欲しいと頼むと、
「構わんぞ。んでどこでやるんだ?。」
「南に行った先の魔大陸。」
「「「はぁ!?。」」」
ガンガオ、キャリー、アリシアは驚愕する。
魔大陸。
極めて危険な大陸で魔物が強化されると言う南の大陸。
エルフの森をずっと真っ直ぐ進めば1週間で到着する。
雑魚でもAランクの魔物でS級が10人いないと話にならないぐらい過酷で残酷な世界である。
「ちょっと待て。流石にそれは許可できない。」
「許可するしないじゃない。強くなりたいかなりたくないかだ。正直ここら辺の魔物じゃ鍛錬にすらならない。俺はこの事を今から連れて行く子達が強くなりたいなら連れて行く。嫌なら連れて行かない。ただそれだけ。」
「・・・。死なせるつもりか?。」
ゼラを睨む。
「死なせるつもりは一切無い。ただ命令を聞かずに死んだら責任は取らない。そもそもアリシアも連れて行くつもりだ。」
「・・・。」
「いいのかアリシア。こいつ今までとは比べ物にならないぐらい無茶な事を言ってるぞ。」
アリシアはゼラの瞳を見る。
「・・・。分かりました。」
「アリシア!!。」
「止めないでください。もう私は覚悟を決めました。それにゼラ様は出来ないことはさせない、しない人なのです。それに私達の英雄なんですから。」
「・・・。なんでそこまで信頼できるんだ?。首輪のせいか?。」
「いいえ。私の直感がそう告げているんです。」
「はぁ・・・。分かった。もう口出しせん。好きにしろ。」
「じゃ一旦後はよろしく。出るのは三日後だからね。」
「分かった。」
その後はゼラは一旦自宅へ戻り防具と武器の作成をしていた。
防具はアビスデスポークの皮を使った黒鉄以上の強度に魔術にも耐性がある軽防具出来上がった。
特殊能力はHPMP自動回復と物理耐性。
武器は複合弓を6本作った。
弓身にはアビスデスポークと木材と竹材を使用。
弦には鋼を使用してはいるのでそこそこ筋力が要求される。
弓の大きさは120cmで長弓に分類される物。
弓身の耐久性と柔軟性はかなり良い。
特殊効果に長射程威力減衰無力化を付与した為威力が一切落ない弓が完成。
鏃にも鋼を使い空気による影響を無力化を付与した矢も完成した。
弓の他に杖を3本作成する。
アビスデスポークの骨を杖状にし血や宝石を混ぜて完成した。
見た目はいたって普通の黒い杖。
特殊効果は魔術の威力20%上昇と詠唱時間を25%減少。
短剣も6本作成する。
使うのは鋼で大きさは普通の包丁程の大きさの18cm。
アビスデスポークの血と骨を混ぜた結果黒い短剣が出来上がる。
特殊能力は破損無効。
指輪も作成する。
豚の骨粉に鋼に血を混ぜる。
紅く輝く指輪が出来上がる。
特殊効果は状態異常耐性と状態異常時間半減。
全部最上位の装備が完成した。
装備の名前の欄は全部名無しと表記されている。
「これでまぁなんとかなるっしょ。」
と弓6本、短剣6本、杖3本、防具一式6セット、指輪6つ、矢1000本を袋の中に入れる。
時計を見ると時刻は夕方5時。
急いで村に戻る事にした。
「行ってくるよ。」
そして誰もいない自宅にそう言い鍵をかけ門を抜けて近くの草むらに隠れ青く輝く転移石を使う。
アリシアの自宅の前にいきなり現れたゼラ。
周囲には誰もおらず中に入るとアリシアを含めた6人のエルフが出迎えてくれた。
三人はソファーで仲良く寝ているようだ。
「お疲れ様です。」
アリシアが最初に声をかけてくれる。
「ああ。いいのが出来上がったぞ~。」
っと袋から弓を6人に渡す。
「・・・。凄い力を感じるのですが・・・。」
「そうですね。弦は鋼で弓身は竹と木に骨ですか?。」
ナルベアは手に取っただけで震え、アリシアは隅々まで観察している。
「硬い・・・。引く辛い・・・。」
「ですがいい弓です。」
ルビニアとチベルネは弓を引いて試していた。
「そうね。私の見立てだと射程が前使ってた物の二倍はあるかと。特殊能力もついていそうです。」
サリアは前の弓と比較をし予測をしていた。
「お。よく分かったな。」
「ふふ。エルフで一番の研究者ですから。ですが何をおつけになったんですか?。」
「距離による威力減衰の無効。」
「えーっと・・・。つまりどんな距離でも最大の威力が出るんですか?。」
リニが恐る恐る聞いてきたので、
「そう。凄いだろ。」
えっへんっと胸を張り言い返すゼラ。
「こんな装備を貰っても大丈夫なのですか?。」
驚きながらアリシアが聞く。
「大丈夫。だってこれ最上位の装備だし。ほれこれも着けて。こっちは短剣な。あと指輪とこれが矢。」
次々と机の上に装備を置いていく。
「・・・。最上位の装備って普通は簡単に作れないのですが・・・。」
ナルベアが驚愕しながら聞く。
「え?。俺ワールドアルケミストだぞ。これぐらいなら素材さえあれば作れる。」
「ワールドアルケミスト!?。」
サリアが物凄い声を上げ驚く。
「おおう・・・。」
「サリア・・・。うるさい・・・。隣叫ばない・・・。」
ルビニアは耳を塞ぎながら言う。
「あ・・・。すいません・・・。ですが私の最終目標を達してる人間が居るとは思いもしなくて・・・。」
「まぁ俺は特別な人間だからね。そもそも支援師やるとアルケミストは最大まで上げないと辛いのよ。攻撃的な意味で。」
「なる程。攻撃手段として習得し極めたと言う事ですか。」
「そうそう。さて。アリシアは村の方は大丈夫か?。」
「はい。既に伝え終えて体制も問題ありませんよ。」
「じゃ明日朝早くに出るから早く寝るように。それから挨拶も忘れずしてくるように。」
6人ははいっと言った後それぞれやることをやり寝ることにした。
ゼラも3人が寝ている反対のソファーで寝る事にした。
翌日。
日が昇る少し前にゼラは起きた。
シスは朝食を作りスィーナは掃除をしアウラは洗濯物をしていた。
「3人共おはよう。昨日の聞こえてたよな。」
「ん。だから朝食作ってる。もう出来る。」
「使ったから綺麗にしないとね。」
「洗濯ももうすぐ終わりますので。」
その後アウラの洗濯を終えた後はシスが作った朝食を食べる。
メニューはパンケーキだった。
バターにメイプルシロップがかかっている。
サイドにはホイップクリームと様々な果実が盛り付けてある。
大きさは手のひらサイズで厚さは5mm程度。
ゼラは5枚。
他の3人は20枚をタワーの様に積み上げてある。
「いただきます。」
ゼラがそう言って食べ始める。
3人も続いていただきますと言って食べ始める。
パンケーキはふわふわでもちもちと面白い感触をしていた。
味はバターとメイプルシロップと良く合うように甘さ控えめで美味しく、果実もみずみずしい物ばかりでリンゴやオレンジに似た果実は前いた世界より甘かった。
「ごちそうさま。」
「ん。満足してもらえて嬉しい。」
「日に日に腕上がってるな。」
「毎日やり続けてるから当たり前。」
「おいひいです・・・。主様には足を向けて寝れないです・・・。」
「本当に幸せ者だよ・・・。ありがとう・・・。」
もぐもぐと食べながら泣く。
「とりあえず食べたら出発するからアリシアを呼びに行ってくるよ。」
とアリシアが寝ているタリナの家へと向かう。
場所は出て左の家と直ぐである。
ついてノックをすると、
「ふぁい・・・。どなたですか・・・。」
薄い生地のパジャマを着たタリナが出てくれる。
「よう。すまんがアリシアを起こしてくれ。」
「・・・。分かりました。そろそろ出るのですね。」
ゼラの言葉で目を覚まし中へ入る。
30分後装備をしたアリシアが出てくる。
「お待たせしました。」
背中に弓を背負い、腰に短剣を着け指輪も装備しているが、
「あのなんで薬指に着けてるの・・・。」
「ふふ。私が嬉しいからに決まってるじゃないですか。」
少し照れてニコニコと笑いながら言う。
「はぁ・・・。まぁいい。とりあえず全員起こして準備終えたらアリシアの家に集合するように。」
「分かりました。では失礼します。」
アリシアは5人を起こしに行く。
ゼラはアリシアの家のソファーでお茶を飲み待つことにした。
揃ったのは20分後だった。
「よし。ちゃんと装備してるな・・・ってお前たちも薬指なのか・・・。」
「駄目だったでしょうか・・・。」
ナルベアがビクビクしながら聞いてくる。
「いや別にいいけどさ・・・。これ重婚に見えるよな・・・。」
「私達はそれでも構いませんけど。」
「いや。好きでもないのにそんな事言われてもな・・・。」
「いずれ全員お嫁さんにするって言ってもらえるよう頑張るつもりです。」
ゼラはもう好きにしてくれと丸投げた。
日は少し上り若干明るくなった時刻。
村を出て南へと足を進めるのであった。




