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黒猫

 「う~ん、弁慶。大好き.... ムニャムニャ」

 暑!! あー!! 暑苦しい!

 俺は小さな体で必死に抵抗し鮎の布団から脱出すると、軽く伸びをする。 

 さてと.... この部屋からどうやって出ようか?

 鮎はこまめに鍵をかけて俺を外に出さないようにしている。

 はぁーしょうがね何時もの方法でいくとするか。

 俺は数メートル上のベランダの鍵に狙いを定めると、ひとっ飛びし前足を鍵にあて下に下げる。

 後は簡単だ。人間が襖を丁寧に両手で開けるように前足を二つ使い開ければいい。

 「う.... 弁慶」

 ガタガタと鳴る音に目を覚ましたのか鮎は俺の名前を呼ぶ。

 「行かないで.... 」

 

 どうやら起きた分けではなく寝ぼけて夢を見ているだけみたいだ。

 俺がいなくなる夢を見ているのだろうか? 瞑っている目元から涙がつぅーと流れている。

 俺は猫だ.... だから人間みたいに抱き締める事も優しく声をかける事も出来ない。

 俺に出来る事はこの涙をベットの布団に落ちないように拭ってやる事だけだ。

 鮎の顔へと近づく。

 涙はあれだけのようで今は安らかな顔をして眠っている。

 やっぱ可愛い顔してんだよな。俺が今人間だったら間違いなくその無防備な唇を奪ってるに違いない....  今の姿でもそう思ってるのだから。

 俺は不思議と鮎の唇へ引き寄せられるように近づきーー

 

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


外に出ると心地よい夜風が吹き月の光が俺を照らした。

 今夜は縄張りを出歩くのにぴったしだ。

 鮎の家を中心としそこから東西南北五百メートルが俺の縄張りである。

 別に誰かが決めたわけではない。強いて言うなら俺が勝手に決めた事だ。

 なので知らずに入ってくる猫もいる。その時は声で威嚇すると大抵が逃げていく。

 だが逃げずに逆に威嚇してくる奴もいる。その場合は勿論喧嘩となり酷い場合はどっちかが死ぬまで続ける。

 まぁ幸いとでもいうのか俺は今まで殺しあうまで喧嘩したことはない.... 大怪我した事はあるが。

 そう言えば、その時は鮎が顔を真っ青にしてたな.... あっちが死ぬんじゃないかと思うくらい。

 だから怪我とかはなるべくならしたくないのだが、今回はそう言うわけにもいかなさそうだ。

 

 出歩いて二百メートルくらいにそいつはいた。

 暗闇と同化するように真っ黒な毛に覆われ、長い尻尾はピーンと上に立っており、獲物を逃がさない目は蒼く光って俺を見据えている。


 「ここは俺の縄張りだ。悪いが消えてくれないか?」


 手始めに俺は軽く威嚇する。

 黒猫は俺の声に反応するように「にゃー」と鳴いた。

 .... こいつ俺をバカにしてんのか? 

 いや猫が「にゃー」と鳴くのは当たり前だ。少なくとも人間にはそう聞こえているのだから。

 だが「にゃー」は人間に通用する言葉であって俺に、猫に通用する言葉じゃない。

 つまり猫に「にゃー」と言うのは「にゃー」と言ってるだけだ。

 だから俺はバカにされていると答えを出したのだ。

 「もう一度言うぞ。ここから消えろ」

 今度は強めに言ってみる。もしこれで立ち去らないなら....

「もし、消えないって言ったら?」

 黒猫は挑発するように言うと前足を一歩近づける。

 後、先程の声で分かった事だがこいつは雌猫だ。匂いも雌独特の匂いをしている。


 「立ち去らないならやることは一つしかないだろ」

 俺は全身の毛を逆立て戦闘体制にはいる。

 「あーやだやだ。雄はどうしてこうも血気盛んなのかしら....  もしかして発情期?」

 また一歩近づく.... それが合図となった。

 「そんなわけねぇだろ!」


 俺は後ろ足で地面を蹴り飛ばすと黒猫に飛びかかった。


 黒猫はひらりと横にかわす

 「一発に全てをかけすぎよ。だから大きな隙が生まれる」

 そう言うと、黒猫は長い爪で俺の胴体を引っ掻いた。

 「ぐっ!」

 直ぐ様黒猫に向きを戻し睨み付ける。猫の喧嘩は大抵目を離した方が負けだ。

 「ふふ、威嚇になってないわよ?」

 今度は黒猫が飛びかかると右の前足でストレートを俺の顔に食らわせた。

 その攻撃に俺は顎を空に向け後ろに仰け反り倒れた。

 黒猫は俺に被さる様乗っかると鋭い歯で俺の体を噛みつく。

 「ぐっっっ!」

 これは流石にヤバイ! 

 俺は後ろ足で黒猫の腹に何度も蹴りを入れる。

 「いっっ.... 痛いわね!」

 黒猫は後ろに下がると俺は起き上がり体勢を立て直す。

 「雄の癖に雌猫に苦戦ってどうなの?」

 そんな安い挑発には乗らない。無言のまま黒猫を睨み付ける。

 「ふーん 無視ね。言っとくけど私.... 無視が一番嫌いだから」

 不機嫌に言うと黒猫は砂利の石を口にくわえる。

 何やってんだ? そう思っていた次の瞬間ヒュンと高速に飛んできた石が頬を掠めた。



 は?


 何が起きていたのか分からない。

 しかし呆然とする俺と反対に目の前の黒猫はニタァと笑っていた。

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