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冒険、それは危険で甘美的な物語   作者: 阿賀沢 隼尾
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第一章 第五話 BL少女登場!

「あの、僕と付き合って下さい!」

「すいません。私、好きな人がいるのであなたとは付き合えません」

まただ。

今年に入ってから何回告白されただろうか。

人に好意を寄せられるのは悪い気分では無い。

だが、その行為を白神桜は何回も踏みにじって来た。

桜は、その度に後ろ髪を引かれる様な思いをしていた。

好きになってくれるのは嬉しいけど、仕方がないじゃない。

私の好みのタイプじゃ無いんだから。


それに、私には小笠原先輩という心に決めた人がいるんだから。

「う、う、う」

相手の男は、首をふりふりと力なく振って、あり得ない!!とでも言いたげに顔を引きつっていく。

「嘘だ!そんなの嫌だぁぁぁーーーー!!!!」

という捨て台詞と共に風のように走り去ってしまった。

「え?ちょっ、ちょっとあんた・・・」

桜は陶器のように白くすべすべとした細い右腕を伸ばして男の手を掴もうとするが、時既に遅し。


桜は、彼の後ろ姿が小さくなっていくのを見ていることしか出来なかった。

桜は憂鬱そうにトボトボ歩きながら教室に戻った。

そして、コトンと自分の席に腰掛ける。

「さくちゃんまた告白されたの?」

陶子がにやけながら桜に近づいてきた。

「陶子ちゃーん。助けて~」

桜は親友の牧野陶子に泣きついた。

「さくちゃんは学年のアイドルだからねー。私はあんたが羨ましいよ。」

桜は?を栗鼠のようにぷくぷくとふくらませ、

「陶子ちゃんそんなこと言って!断るの大変なんだからね!しつこい男はいるし、彼らの好意を私踏みにじっているわけだし。少しは傷つくんだからね」

「でも、それはさくちゃんだからこその悩みだよ」

「どういう事?」

桜は首を傾げる。

「普通の人は一ヶ月に三回も四回も告白されないもん。それに、人に嫌われるより好かれる方がいいじゃん」

「そりゃ、そうだけど・・・」

でも、好意は好意でも友達としての好きと恋愛としての好きとじゃ全然違うよ。陶子ちゃん。


そう思い、白神は僅かに眉を顰める。

「でも、陶子ちゃん。友達としての好きと恋愛としての好きじゃ同じ「好き」でも違うんじゃない?」

「確かに。言われてみればそうだよね。私もさくちゃんのことは好きだけど全然ドキドキしないし。それに対して赤城君と一緒にいる時は胸がキュンキュンするもんなー」

桜は今の牧野の言葉に目を丸くする。

「えっ??陶子ちゃん赤城君のことが好きなの?確かに中村君は見た目はイケメンだし運動神経もいいけど・・・」

意外も意外!!!

陶子ちゃん、あの赤城君の事が好きなんだ!

でも、赤城君ってチャラいよね。

と桜は心の中でぼそっと呟いた。


桜が 嫌そうな顔をしていたのか

「何?さくちゃん。『運動神経もいいけど・・・』の続きは?チャラいとか言いたいわけ?」

と桜が心の中で思っていることを言われてしまった。

バレてる!陶子ちゃん。あんたはエスパーか!

桜の目が思わず泳いでしまう。

「え?ま、まぁ。だってさ、陶子ちゃん。実際、赤城君チャラいじゃん。噂だけど、駅でナンパしてるっていう噂あるし、口を開けば下ネタばっかり言うし、確かにかっこいいところもあるとは思うけど私からしてみれば正直言ってキモいよ」

「あー!さくちゃん遂に言ってはいけない事を言ったね。でもまぁ、確かに下ネタは好きそうだけどさ、それも健全な男子高校生って感じがして良いというか、なんというか。でも、人を見た目で判断するのは良くないよ」


まあ、確かに。

それでも、赤城君を好きになるのはなんだかなぁ。

「それじゃ、さくちゃんの好きな人を教えてよ」

「え?」

そう来たか。

どんどん追い詰められてる。

ヤバい。

と、その時、3時間目の始まる予鈴が鳴った。

「えー、まださくちゃんの好きな人聞いてないのにー。この話は休みの時にでもしよ」

「う、うん」

桜はぎこちなく頷く。

ふう、と桜は、心の中で胸をなで下ろす。

助かった。まさに危機一髪。


帰りのHRが終わり、支度をしている所に牧野が来た。

「さくちゃん、今日一緒に帰ろ!」

「ごめん。陶子ちゃん。今日も部活なんだ」

牧野は残念そうな顔で

「そっか。それは仕方ないよね。今日、陸上部無いから帰りにパフェでも一緒に食べようと思ったんだけど・・・」

「有難う。陶子ちゃん。また今度一緒に食べに行こ!」

「そうだね。また今度だね」

牧野は桜に手を振って帰って行った。


桜は、支度を終えて部活に行こうとすると

「白神、一緒に部活に行かないか」

と後ろから声を掛けられた。

振り返る桜の琥珀色をした滑らかな髪がサラサラと揺れる。

そして、声がする方には森下が立っていた。


「きゃっ」

いきなり後ろから声を掛けられて桜はビクリと肩を震わして後ろを振り返った。

サラサラとした滑らかな藤黄色の髪がふわりと揺れる。

「驚かせたか。すまん。白神、今日の部活来るか?」


桜は白玉団子の様なプニプニした手をぷくりと膨らませて、

「もー!いきなり後ろから話しかけたらそりゃ、びっくりするよ!今日も部活はあるの?」

森下はコクリと頷いて

「うん。あるよ」

「今日もあの変な三人組とかいるの?」

「今日はあいつらは来ないよ。でも・・・」

桜はキョトンとした顔をして、

「でも?」

「でも、部長はあの三人組よりも変わってるぞ」

「小笠原先輩も?何で?あの人は普通の人だと思うけど」

「ああ、普通に学校で先輩を見ていると気付かないだろうがな、部室にいる時の先輩は全然違うぞ」

「例えば、どんな風に違うの?」

「それは実際に見てみるのが一番だな、まあ、部活に出ていたらそのうち分かる」

そう言っているうちに部室に着いてしまった。

部室には小笠原先輩の一人しかいなかった。


「おう、お疲れ。白神、森下」

小笠原は相変わらずの王子様スマイルで二人に微笑みかけた。

「お疲れ」

「お疲れ様です」

森下はいつも通り部室に入ると、ブツブツと独り言を言いながら早速実験の準備をし始めた。

桜は白い肌をほんのりと紅く染めて、恥ずかしそうに手を弄る。

私は、一体何をすれば良いんだろう?

森下がビーカーに透明の液体をコマゴメピペットで入れながら

「小笠原先輩、今日はあれをやらないんですか」

と小笠原に向かっていやらしく敬語を使った。

何か企んでいるのだろうか。


小笠原は目を泳がして

「森下、お、おま、お前!白神さんの前でそれを言うんじゃない!」

森下は小笠原を鼻で笑い、その反応を待っていましたと言わんばかりに息を大きく吸い上げて

「あー、何故ですか?彼女もせっかく部員に入ってくれた事だし本当の事をちゃーーーんと言わないとダメじゃないですか?例えば、小笠原先輩は・・ぶふっ」

小笠原は森下の口を両手で塞いだ。

相当な慌てっぷりだ。

一体、小笠原先輩にどんな秘密を隠しているというのだろう?


その時、森下の右手に握られていたコマゴメピペットがすぅと手からすり抜ける。

そして、そのまま床に落下してパリンという音を立てて粉々に砕け散っていった。

あーあ、言わんこっちゃない。


「おっ、お前、これ以上言ってみろ!た、た、た、ただじゃおかないぞ!!」

小笠原は部屋でエロ本を読んでいるところを親に見つかった子供みたいな慌てようで森下の胸ぐらをつかんた

それはまるで二人がキスをしているシーンのようだった。


「こんちはー!」

その時、大きな甲高い声で誰かが入って来た。

桜は、後ろを振り返るとそこには背中まであるストレートの黒髪に白神の身長より頭二個半分くらい高く(170センチくらい)、整った顔にスクエア型の眼鏡を掛けた美女が立っていた。黒髪ロングの美女は部室内の今の状況を見て

「ギャルゲ先輩、モーリー君、この人は一体誰なんや?」

その声はハキハキと透き通っており、まるで女優のようだった。


誰だろう?この綺麗な人?

桜はは心の中でそう思った。

森下と小笠原は顔をしかめてとても嫌そうな表情をしていた。


四人の間にしばらく沈黙が続いた。彼女は顔を赤らめて両手で覆い

「まさか、ギャルゲ先輩がが責めでモーリーくんが受けやったなんて!きゃあああああ!!うちは反対やと思うてたのにまさかのこの展開!?いや、これも良いやんな~♪いや、むしろうちはこっちの方が好きやで。先輩♪」

二人は突然の来客にしばらく固まっていたが、彼女のBLオタク全開の言葉を耳にした瞬間サササとお互いに距離を取った。


何?この雰囲気?なんだか気まずい感じの雰囲気になってるんだけど。

それに何?この人?何言ってんの?

「あの、もりし・・」

桜が森下に声を掛けようとすると

「ん?誰や?そこのべっぴんさんや。どこのどいつやねん」

なんだか棘のある言葉で言ってくるなぁ。

一言一言がザクザク胸に刺さってくるんだけど。

私、この人苦手かも。

「えと、私は一年一組の白神桜です。宜しくお願いします。」

何故だか黒髪美女はじっとりとした目で白神の顔を見つめて

「白神桜。あんた、どえらいくらいのべっぴんさんやなぁ。せや、あんたの名前は小野小町から取ってこまちゃんにしよ!せやね!それがええよ!ボーイズラブというもんには興味があらへんか?」

へ?ぼーいずらぶ?何それ?

「すいません。その、ぼーいずらぶって何ですか?」

黒髪美女はにんまりとした笑みを浮かべた。


「白神はん。ぼーいずらぶじゃあらへんで!ボーイズラブや!略してBL!!発音はちゃんとせなファンに失礼やないか!」

「すいません」

なんで私怒られてんの?

桜は、内心理不尽さに疑問を感じつつも

「そんな事も知らへんのか。なら仕方あらへん。うちが教えたるわ。ボーイズラブというもんはな、男の子と男の子とがいちゃいちゃするというもんや、まぁ、簡単に言えばホモ同士の恋愛やな。略してBLちゅうんやで。覚えときや!おもろいで~。今度白神はんに小説とゲームを貸したるわ」

「はあ、そうですか」

BLの事を話している彼女はとても楽しそうで本当にBLが好きなんだというのがばっしりと伝わって来た。

だが、同時にどこか別の世界にいるような距離感も感じた。


いや、そんなのいらないんだけれど。

この彼女の一言でかなり引いてしまい、ますます話しかけづらくなった。いわゆるオタクというやつか。

私この中で上手くやっていけるのかなぁ。

こんな人が部活にはまだまだたくさんいるんだもんなぁ。もう、辞めたくなってくるよ。


「えっと、あなたはなんていう名前なの?」

桜は黒髪美女のマシンガンのように出てくるBLマシンガンに堪えきれずに話をそらした。

「うちか。うちの名前は齋藤茜さいとう あかね言うねん。気軽に茜て呼んでくれや。ちなみにうちも同じ一年やねん。4組やけどな。ほない宜しゅうな!さくらはん!」

「茜さんね。分かった。こちらこそ宜しく」

そう言う桜の顔は引きつっていたが、悪い人ではなさそうだなと桜は思った。

かなり変わってはいるけれども。

「ちなみにさくらはんの好きなものはなんやねん。この部活に入ったゆうことはなんか好きな事があるんやないか?」

「いや、私は別に好きなことはなくて、あえて言うならカラオケとか、少女漫画とかプリクラとかかなぁ」

齋藤はふーんと目を細め、自分の髪を弄りながら

「はん!なんか、白神はんの趣味はつまらへんなぁ。なぁ、どうや、うちと一緒にBL道を歩まへんか?」

「あー、えっと・・・」

桜が返事に困っていると

「こらこら、齋藤。白神さんが困っているだろ?白神さんは自分が本気で好きになれる事を見つけるためにこの部活に入ったんだよ。無理矢理自分の趣味を押し付けてはいけないよ」

と小笠原が桜に助け舟をしてくれた。

「そうやねんか。それなら仕方あらへんな。でも、BLはほんまにオモロイから一度読んでみいや!」

「あ、うん。いつか、読むよ」

有り難う。小笠原先輩。

桜は苦笑いを浮かべて適当に齋藤の言うことを受け流した。

齋藤はそれを言うと颯爽と化学室を飛び出して行った。一体あの人はなにがしたかったんだろう?こんな事で本当に自分の好きな事が出来るのかなぁ。

「白神さん。ああいう人もいるけど時間かけて自分の好きな事を見つけていったらいいからね」

小笠原が優しく桜に語りかける。ああ、やっぱり先輩はかっこいいなぁ。

「はい。有難うございます。」


これからもっと変な人に私は会わないといけないのかぁ。

なんか、先が思いやられるなぁ。

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