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冒険、それは危険で甘美的な物語   作者: 阿賀沢 隼尾
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第一章 第三話 冒険部へようこそ

桜はゆっくりと化学室の埃などで古びた扉をゆっくりと開ける。


その瞬間、

「ドゴーン!!」

という爆発音と共に、パリンと様々なガラスが割れる音が三階の廊下中に鳴り響いた。

桜は目をパチクリとさせて

「な、何今の音?爆発?」


当然だ。

学校で爆発するなんて馬鹿馬鹿しすぎる。

何のテロ組織の真似事だとツッコミたい気分だ。


扉からは黒い煙がモワモワ出て来ていた。

どうやらさっきの爆発は夢ではないようだ。

桜は、勇気を振り絞って化学室の扉を開けてみる。扉はギギギという耳をつく音を出しながらゆっくりと開いていく。


すると、鼻がひん曲がりそうなくらいに強烈な火薬の臭いと、薬品の奇妙な臭いがした。

目の前には、とんでもない光景が広がっていた。


化学室には、床や机にはメスシリンダーやフラスコなどの化学器材の破片が飛び散り、紫のような緑色のようなよく分からない薬品の液体も床に散っていた。

机の上には、急いで水をかけたのか、びしょ濡れで机の角からポタポタと水が滴り落ちていた。


化学室の中にはボロボロの白衣を着ている一人の男の姿があった。

身長は180cmはあるだろうという長身で頭が鳥の巣のようにボサボサな男が黒く汚れた右手でガリガリと引っ掻いていた。


男は咳き込みながら、

「ああ、また失敗か。今回のデータを残しておかないと」

その男は部屋に入って来た白神には全く気が付かない様子で、爆発の煙に咳き込みながら窓を開けた。


桜はその壮絶な光景に圧倒されて、ぷっつりと思考停止になってしまって呆然と立っていた。

男は、部屋の端に置いてあるパソコンに向かい、何やらカタカタとキーボードを打ち始めた。


何か、何か言わなくちゃ。

桜は混乱した頭でどうにかこの状況を把握しようと男にコンタクトを取ることを心掛けてみる。

「あ、あの・・・」

桜は男に話しかけようとした時、頭の中をパチリと電撃が走った。


あれ?

この人どこかで見たことがある!

それもかなり身近な人物だったような気が・・・。

桜は頭をフル稼働させて記憶を遡ってみる。


そうだ!

朝、陶子ちゃんと話した森下君だ。一体何をどうやったらこんなことになるんだろう。予想通りというか、予想外というか。なんか、話掛けづらくなってきたな。

それでも。


桜は両手の握り拳をギュッと握りしめさくらんぼ色の小さい唇を真っ直ぐ結んだ。


「あの、もしかしてクラスメートの森下君?」

男は桜の方を少しも見向きもせずにキーボードを叩いている。


「確か、同じクラスの白神さんだっけ?」

なんて無愛想な男なの?


桜は、少し上目遣いで見て、

「うん。私の事覚えていてくれたんだね」

上目遣いをすれば大抵の男はドキドキするはず。

だったのだが、この男は眉ひとつ動かさずに、

「そりゃあ、白神さんは有名人だから」

「そ、そうかなぁ」


私にはそんな自覚全く無いのだけれど。

「ああ、昼休みや放課後に同級生や上級生の男子から呼び出されているの時々見かけるから」

桜は少し悲しそうな顔をして、

「そ、そうなんだ。ところでさ、森下君。冒険部ってここで合ってるの?」


「ああ、冒険部はここだ。白神さん何か悩みでもあるの?」

と森下はニヤリと般若の様な薄笑いを浮かべて言った。

桜はその薄笑いを見て背筋が凍り、桜は思わず後ずさりをしてしまった。


桜は自分の胸を両手で覆い隠しな がら

「ま、まぁね。A館の階段の貼り紙を見て来たんだけど・・・」

「そうか。それなら部長の小笠原先輩に相談してみると良い」


桜はその名前を聞いて驚きを隠せなかった。

「 えっ!?小笠原って3年4組のあの小笠原先輩?」

森下は期待通りのリアクションを桜がしたので満足そうな笑みを浮かべながら

「そう。あの小笠原先輩」


小笠原 克則 3年4組で成績は学年トップ。

全国模試も常に上位をキープし、輝く様な金髪をしており、ライオンの様な髪型で身長も183cmと高く足も長く運動神経も抜群で学校の女子から絶大な人気を誇っており、どこぞの少女漫画に登場してきそうなイケメンであった。


ファンクラブもあるという噂がある程だった。

桜もそんな小笠原勇輝に憧れる女子の1人だった。(この後その学園の完全無欠の王子様のとんでもない趣味が明かされるわけなのだが)


そんなことを2人で話していると後ろの扉が開き人が入ってきた。


「ウィース!て、あれ?森下、誰だその子?」

彼が放つ爽やかオーラが火薬の匂いを吹き飛ばせた。


そう、彼こそが滝ノ下高校の王子様、小笠原克則おがさわら かつのりその人であった。

桜の心臓の鼓動が早くなる。

憧れの人にこんな所に会えるなんて。


桜は陶器で出来た精密な人形の手の様な綺麗な小さく白いぷにぷにとした手をもじもじと弄りながら

「え、えと、私、森下君のクラスメートの白神桜です。」

小笠原は、自分の肩より1cm程低い白神を見下ろした。


彼女の小さく精密に出来た人形のように整えられた顔、そして、子犬のようにくりくりとした大きく琥珀のような瞳、さらに彼女の長い睫毛が彼女の可憐な雰囲気を一層引き立てていた。


「そう。白神さんね。そんじゃ、そこの椅子に座って」

桜は小笠原の言う通りに椅子に座った。

そして、小笠原は椅子を白神の正面に持っていって座った。

桜の?が火が付いたかのようにポッと紅くなる。

「それじゃ、白神さんは何に困っているの?」

小笠原の爽やかな雰囲気が桜の周りの空気を和ませる。

「毎日同級生や年上の男子に告白されるわ、友達と一緒 にいてもいつも同じような毎日を送っているようでつまらないんですよ。もちろん友達は大切ですけど」

「つまり、白神さんは刺激が欲しいわけだ。変化のある毎日。色んなことが起こって欲しいって思っているということかい?」

桜はこくりと頷いて

「はい。そうなんです。私もっと刺激が欲しいんですよ。先輩どうすれば良いですか?」


小笠原は体を前のめりにして桜の顔に近づけた。桜は、顔を真っ赤にしていた。

「それじゃ、うちの部活に入ってくれないかな?」

白神は突然の事にきょとんとして

「え?」

「うちの冒険部に入ってくれ。部員も少ないし、幽霊部員が殆どだから白神さんが来てくれれば嬉しい。部員じゃない人も結構くるから」

「冒険部はどんな活動をするんですか?」

「まさに刺激を求める部活さ。みんな自分のやりたいことをやっている。読書、研究、話し合いを通して自分の人生や学問を追求する。どうだ?入ってみないか?」

桜はその言葉を聞いてこの部活に入ろうかなと思った。

あの小笠原先輩と同じ部活に入る事が出来るなんて。

桜の顔の筋肉が自然と緩む。

「それじゃ、入ります」

今から考えればこの時断っておけば良かったかなぁとか思うけどまあ、それはそれで良いかなあと思う。

「それじゃ、白神さん、これからよろしく。そして、冒険部へようこそ!!」


こうして2人は握手を交わし、白神桜の波乱万丈な学園生活の幕が開いたのである。

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