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冒険、それは危険で甘美的な物語   作者: 阿賀沢 隼尾
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第ニ章 第四話 桜とマリー

アニーは、自分の部屋に突進をして行った。

「あー!もう!何よあれ!」

バーンと別荘中に届きそうな大きな音を立てて扉が閉まった。

「ひぎゃ!?」

という可愛らしい声が部屋の奥から聞こえてきた。


すると、そこには白い縁にふわふわのフリルが付いたワンピースを着たアニーが本来、桜が寝るはずのベットで気持ちよさそうに寝っ転がっていた。


何でこの女と私が一緒の空間にいなくちゃ行けないわけ?

桜の脳内には、ビーチの時にアニーが小笠原に抱きつくシーンが悶々と浮かび上がってくる。

確かに、齋藤さんの所に行かせたらBLの事を吹き込まれて危険な感じは確かにするけど、たった流石に二日間じゃあんまり影響されないんじゃないの?

桜は心の中でブツブツとそんなことを呟いていたが、小笠原がそれだけ自分に期待しているんだと思うと、あまり邪険に扱うことは出来なかった。


20時まで後2時間以上ある。

それまで何をしようか?

正直、暇で暇で死にそうだ。


そういえば、小笠原先輩とアニーさんは幼なじみって言っていたな。

「ねぇ、アニーって小さい頃の小笠原先輩がどんなのだったか知ってるの?」

桜は若干不安げな声でアニーに尋ねてみた。


「んー、そうだね。私と翔ちゃんは4歳の時に初めてあった気がする。家がお隣さん同士でさ、時々、地域でバーベキューするんだけれど、そういう所って大人はビールを飲んで酔っ払っちゃうし大人同士で話しちゃって子供はほったらかしになっちゃうんだよね。だから、子供は子供同士で自然と集まっちゃうんだよね。それで、私が住んでいたところは子供が少なくって私と翔ちゃんくらいしかいなかったから自然となかよくなれたんだよね」

桜は、アニーに次々と質問をしていった。


そこで分かった事は、小笠原とアニーとの間にある強い友情だった。


アニーは、小笠原は昔からとても優しかったこと、大人の目を盗んで二人で森や川に入って行ったこと、そして、子供の約束によくある将来結婚する事を小笠原が日本に帰るときに約束したことなどを桜に話した。


桜は、アニーの話を聞いていくうちに心の中にモヤモヤと黒い霧が現われ的来るのを感じていた。

嫉妬だ。


自分にはアニーとは違って、小笠原先輩と小さい頃に、将来結婚するなんていうロマンチックな思い出があるわけではないし、一緒にいる時間だって幼馴染みのアニーの方が明らかに多いという事ぐらい分かってる。

小笠原先輩と一緒にいた時間も思い出の数も密度も何もかも自分の方が劣っているという事ぐらい分かってる。


それでも、それでも、小笠原先輩のことが好きっていう想いだけは絶対に誰にも負けたくない!!例え、それが結婚を誓った幼馴染みだとしても絶対に!


桜の心は燃え盛る炎のように熱く燃えていた。

この女にだけは絶対に負けない!


桜は、そんな闘志を心の内に秘めながらマリーの甘い思い出話を聞いていたが、

少し話題を変えたいなー。今何時かな?

と思い、チラリと部屋の壁のど真ん中に掛けてある時計を横目で見てみると、針が7時55分を指しているのが見えた。

やば、森下君に怒られるかも。(決して、先輩では無い)


桜は、小笠原と森で迷子になったときのことを自慢げに語っているマリーの言葉を遮って

「ちょっとマリー、時間無いからその話は後で。急がないとミーティングの時間に遅れちゃうよ!」

「え?ちょっと!まだ話途中・・」

と言うマリーの言葉を桜は、完全に無視してマリーの右手を掴んで別荘の廊下を走り抜けた。


「ふぅ、なんとか間に合った」

集合場所である部屋は、大きい長方形のテーブルと丸椅子が窓際に7脚ずつ、合計14脚が置かれていた。それらは壁も含めて全て杉で作られていた。

既に冒険部の人達は 全員集まっていた。


「またギリギリだな~。白神」

小笠原が冗談っぽく 言う。


桜は顔を赤くして扉に一番近い椅子に座り、その向かいにマリーは座った。


コホンとわざとらしい咳を立てて、小笠原が話し始めた。

「えー、では、全員集まったという事でミーティングを始めようと思います」

「堅いぞー!いつも通りにやれ~!」

という野次を面白そうに森下が飛ばす。


小笠原は一呼吸置いてから

「そんじゃ、ミーティングを始めるよー。今回の合宿の目的はズバリ!!『自分の事を知ってもらって今以上に自分を好きになろう!』だ。特にこの『今以上に自分を好きになる』っていうところが一番大切だ。自分の今まで気付かなかった自分を発見する事で自分の事を好きになってもらおうってことだ!そして、今回の合宿のプログラムがこれだ!!」


バーン!と小笠原は、大きい模造紙を長机いっぱいに広げた。


そこには、


(合宿)1日目 自由時間+ミーティング(小笠原)


2日目 サバゲー(松本、吉田、武田)


3日目 BL祭り(齋藤)


4日目 化学実験(森下)


5日目 ギャルゲー祭り(小笠原)


と書かれていた。


うわ、濃い合宿になりそうだな。それ以前に荒れそうだな。

アニーとの関係もあるし、あ~あ、なんか帰りたくなってきたかも。

でも、最終日の小笠原先輩のギャルゲー祭りは行きたいかも。


桜がそんな事を考えている傍ら、周りの部員たちの反応は、当然の事ながら、非難轟々、不満の嵐、それでも、小笠原はまあまあとみんなを宥めて演説を始めた。

「みんな、落ち着け。みんなは自分を理解してくれる仲間が欲しくないのか?俺は欲しい!一緒にギャルゲーについて語り合い、分かち合い、理解し合える仲間が!お前らなら分かるだろう?しょうもない偏見で自分の好きなものが侮辱される辛さ!悲しさ!切なさが!俺は今回のこの合宿がその大切な「仲間」を作ることが出来る貴重な期間だと考えている!みんなはどうだ?欲しいだろう?同じ趣味を分かち合える仲間が!!」

部員達はいつもなら野次を飛ばすのに珍しく小笠原の話を真剣に聞いていた。

中にはウンウンと頷いている者までいた。

恐らく、小笠原と同じ辛さを体験したのだろう。

オタクも大変なんだなと桜は思った。

「その通り!」

「流石部長!」


小笠原はフムと頷いて

「よし!今日は解散!」

その声と共に部員達は自分の部屋に散らばっていった。


桜は、部屋に戻ると、マリーと顔を合わせないようにすぐに寝巻きに着替えてベットの中で眠りに就いた。

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