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人民解放軍


札幌駅に隣接する、首を上にあげれば街のどこからでも見える高層ホテルは、通常の十倍の割増料金を設定し営業を続けていた。


ホテルのロビーは体育館みたいに広く、天井は吹き抜けになっており、ずっと上の方までガラスの壁が続き、そこから陽光が燦々と降り注いでいる。


フロアには大きなサイズのいかにも高価そうなソファが並び、その間に観葉植物の鉢が気前よくたっぷりと配されていた。


フロント前にはチェックインを待つ客たちが七、八人いてそれなりに賑やかだが、高級な人々のつくり出す、品のある賑やかさだ。


誰もここが戦時下であるとは思えない光景である。


そこへ独裁者の実兄でありながら、自由気ままに海外でに暮らし日本通でも知られる、泳男氏が宿泊していた。


生粋のアニメ好きで、女好きでもある彼は、亜人それもエルフとなんとかならないかと考えていたのである。


最初は、金でなんとかなると思い、100万円で誘って見たが全く興味を持たないようであった。


甘い物に目が無い事を知ると、外国から来ていて困ってるのなんだの言って部屋まで誘い、ウエディングケーキのような大きなケーキを前で「俺と一戦交えたら全部食べていいぞ!」・・・


書かなくても解ると思うが、エルフにボコボコにされたようだ。


それでも泳男は滞在を続け、陽が暮れるまで街中のエルフの尻を追い回し、夜は趣味の合うオタクっぽい輩達と安居酒屋で飲んだり過ごしていた。


これに対し北朝鮮側は、軟禁されている! と強い抗議声明を繰り返し垂れ流していた。



-----


石狩港には、各地の避難所にいた観光で訪日していた中国人や在日中国人達がバスで集められていた。


人民解放軍は駆逐艦を石狩港へ接岸させ、避難民を乗船させると、沖合の空母へと運ぶピストン輸送を始めた。


日本政府の要請通り、人民解放軍の兵士が下船する事はなく、自衛隊員がパスポートなどで身分を確認し、順次駆逐艦への乗船手続きを行っていた。


深夜になっても続く在日中国人の避難の中、ピストン輸送で石狩港へと向かう駆逐艦から、泥のように黒々としている海中へ規則正しいリズムで次々と落ちて行く人影があった。


人民解放軍が誇る海軍水陸両用作戦部隊一個中隊が闇の中、石狩湾から石狩川河口へと海中を進んでいた。


人民解放軍の水陸両用作戦部隊は、海軍陸戦隊の強力な部隊で、隊員は海軍陸戦隊中の精鋭で『神兵』と讃えられる存在である。


部隊は石狩川に入り茨戸のゴルフ場から密かに上陸、中洲となっている周辺を制圧し外国人避難拠点と言う名目で、札幌に駐留する既成事実を作る事が任務であった。



------



石狩川の支流である豊平川にいるユリア=ウンディーネは嫌な感覚を感じた。


「何か異変が起きてますわ、確認が必要ですわ」


10人の同族を連れて、水の中を鳥のように進み石狩川へと向かう。


石狩川の水面は波もなく、まるで眠っているように静かであったが、ユリアの感覚は確信へと代る。


「怪しい人間がたくさん川に潜ってますわ」


「こっちの世界の人間は、水の中でも息ができるんですわね」


「族長さま、何かやら物騒な人達のようですわ。」


「何してるのか、聞いてみですわ。」


ユリア=ウンディーネは、水中の人間へ近づき大きな声で聞くことにした。


「皆さーん、何してるのですか?」



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小銃と酸素ボンベを背負いながら石狩川を進む、海軍水陸両用作戦部隊中隊長の郭大尉は、前方からの水の振動を感じ目を凝らすと、水中に水と同化したような半透明の人影を発見した。


直ぐに無線を使い全員へ知らせる


「リーダーワンより全員へ、前方に化け物を発見した、水中ライフル装備者は、前に出ろ」


「「「了解しました」」」


水中アサルトライフルを構えた6名の兵士が、中隊長の郭大尉を追い越し前へ出た。


「リーダーワンより、相手は化け物だ、射程に入ったら発砲して構わん!」



ライフルを構えながら前方へ泳ぐ兵士達は、射程距離に入ると一斉に引き金を弾いた。


水中専用の針のような無数の弾丸が、不意を突かれたウンディーネ族を襲い、水中が赤く染まり何体かゆっくりと川底へと沈んで行った。


「化け物の血も赤いのか・・・」


しかし、致命傷を負ってないウンディーネ族は、水中で信じられないスピードで泳ぎ回り小刀を振りぬくと、水中アサルトライフルを構えていた6名の兵士の首が胴体から離れ、別々に川下へ流れて行く。


精鋭である海軍水陸両用作戦部隊は、怯む事無くナイフを手に水中で応戦するが、ウンディーネ族を捉える事は出来ない。


部隊の後方が撤収を始めると


ウンディーネ族が水中で大声で叫び、指向性の強い超音波が発生、それにより内耳が完全にマヒした海軍水陸両用作戦部隊は、平衡感覚を喪失し中隊員らは、捨てられた人形のように、ただ川下に流されて行った。



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翌朝、のぼりはじめた太陽に醒まされるように、悲惨な状況が、しだいにくっきりと、明らかになった。


石狩川河口に100人ほどの人民解放軍兵士が打ち上げられていると、住民から通報が入った。


6名の生存者は、直ぐに石狩中央病院へ運ばれ治療されたが、他は全て遺体であった。


内訳は、首の無い遺体が3体、溺死体が64体


また、警察、消防、自衛隊らが共同で周辺を捜索すると、川底や海中でも遺体が次々と発見されていた。



打ち上げられた遺体は、道警が現場検証している。


「警部、これからどう処理するんですか?」


「下っ端には、わからんな~ 調べ終わったら装備を外し、遺体袋に入れて並べて置くしかないな」


「事件として処理はしないんですか?」


「お偉さんも立件は考えてないだろ、国際問題になるからな」



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